眠気を防ぐ薬

2026年8月28日

1. 眠気を防ぐ薬

睡眠は健康維持に欠かせないものです。しかし、ある程度の睡眠を取っていても、食事の後や単調な作業が続くときなど、脳の緊張が低下して眠気や倦怠感(だるさ)を生じることがあります。

眠気防止薬は、眠気や倦怠感を除去することを目的とした医薬品で、主な有効成分としてカフェイン(無水カフェイン、安息香酸ナトリウムカフェイン等)が配合されています。


2. カフェインの働き、主な副作用

(1) 作用

カフェインは、脳に軽い興奮状態を引き起こし、一時的に眠気や倦怠感を抑える効果があります。

脳が過剰に興奮すると、副作用として振戦(震え)、めまい、不安、不眠、頭痛等を生じることがあります。

眠気防止薬の薬効に関連しない作用として、カフェインは、腎臓におけるナトリウムイオン(同時に水分)の再吸収を抑制するとともに、尿量の増加(利尿)をもたらします。

(2) 留意すべき作用

作用内容
胃液分泌の亢進作用副作用として胃腸障害(食欲不振、悪心・嘔吐)が現れることがある。胃酸過多の人や胃潰瘍のある人は、服用を避けることとされている。
心筋を興奮させる作用副作用として動悸が現れることがあるため、心臓病のある人は、服用を避けることとされている。
依存形成作用は弱いながら反復摂取により依存を形成するという性質があるため、「短期間の服用にとどめ、連用しないこと」という注意喚起がなされている。

(3) 胎児への影響

妊娠中の眠気防止薬の使用が胎児に影響を及ぼすか否かは明らかになっていませんが、吸収されて循環血液中に移行したカフェインの一部は、血液胎盤関門を通過して胎児に到達することが知られており、胎児の発達に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 乳児への影響

摂取されたカフェインの一部は、乳汁中に移行します。

乳児は肝臓が未発達なため、カフェインの代謝により多くの時間を要することから、授乳中の女性がカフェインを大量に摂取したり、カフェインを使用したりした場合には、乳児の体内にカフェインが蓄積して、頻脈や不眠等を引き起こす可能性があります。

そのため、授乳期間中はカフェインの総摂取量が継続して多くならないよう留意します。

【カフェインの代謝時間】

カフェインの血中濃度が最高血中濃度の半分に低減するのに要する時間は、通常の成人が約3.5時間であるのに対して、乳児では約80時間と非常に長くなっています。


3. 倦怠感を和らげる補助成分

眠気を抑える成分ではありませんが、眠気による倦怠感を和らげる補助成分として、以下の成分が配合されている場合があります。

成分主な例
ビタミンB1チアミン硝化物、チアミン塩化物塩酸塩等
ビタミンB2リボフラビンリン酸エステルナトリウム等
ビタミンB6ピリドキシン塩酸塩等
ビタミンB12シアノコバラミン等
ニコチン酸アミド
パントテン酸カルシウム等
アミノエチルスルホン酸タウリン

4. 相互作用、休養の勧奨等

(1) 相互作用

① カフェインの摂取量の上限

眠気防止薬におけるカフェインの摂取量の上限は次のとおりです。

  • 1回摂取量:カフェインとして200mg
  • 1日摂取量:カフェインとして500mg

カフェインは、他の医薬品(かぜ薬、解熱鎮痛薬、乗物酔い防止薬、滋養強壮保健薬等)や医薬部外品(ビタミン含有保健剤等)、食品(お茶、コーヒー等)にも含まれています。

それらを眠気防止薬と同時に摂取するとカフェインが過量となり、中枢神経系や循環器系等への作用が強く現れるおそれがあります。

補足【100g中に含まれるカフェイン量の目安】

飲料カフェイン量(100g中)
玉露160mg
煎茶20mg
ウーロン茶20mg
紅茶30mg
コーヒー60mg

② 副作用による眠気

かぜ薬やアレルギー用薬などを使用したことによる眠気を抑えるために、眠気防止薬を使用するのは適切ではありません。眠気が生じると不都合なときには、眠気を催す成分を含まない医薬品が選択されるべきです。

また、それらの医薬品には配合成分としてカフェインが含まれている場合が多いため、重複摂取を避ける観点からも併用を避ける必要があります。

(2) 休養の勧奨等

① 睡眠不足による疲労

眠気防止薬は、一時的に精神的な集中を要するときに、眠気や倦怠感を除去する目的で使用されるものであり、疲労を解消したり、睡眠が不要になるというものではありません。

睡眠不足による疲労には、早めに十分な睡眠を取ることが望ましいとされています。

② 薬物乱用

眠気防止薬が特に内服液剤である場合、その製剤上の特徴(有効成分の血中濃度が上昇しやすい)から、本来の目的以外の意図に基づく不適正な使用(乱用)がなされることがあります。

③ 感染による眠気

睡眠により免疫機能が高まります。

細菌やウイルスなどに感染したときに生じる眠気は、発熱と同様、生体防御の重要な一端を担っている病態生理的反応であり、そのようなときに眠気防止薬で睡眠を妨げると、病気の治癒を遅らせるおそれがあります。

④ 病気による眠気

十分な睡眠を取っていても、眠気防止薬の使用では抑えられない眠気や倦怠感(だるさ)が続くような場合には、神経、心臓、肺、肝臓等の重大な病気が原因となっている可能性があります。

また、以下のような症状としての眠気も考えられるため、医療機関を受診するなどの対応が必要です。

  • 睡眠時無呼吸症候群(睡眠中に一時的な呼吸停止または低呼吸を生じる病気)
  • 重度の不安症やうつ病
  • ナルコレプシー(十分な睡眠をとっていてもなお、突然に耐え難い眠気の発作が起こる病気)

⑤ 成長期の睡眠の必要性

成長ホルモンは生体を構築したり修復したりするのに重要な働きをしているホルモンですが、成長ホルモンの分泌を促す脳ホルモンは、ある種の睡眠物質と同時に分泌され、それにより睡眠が促されることが知られています。定期的な睡眠によって、生体は正常な状態に維持され、また、成長することができます。

特に、成長期の小児の発育には睡眠が重要であることから、小児用の眠気防止薬はありません

眠気防止薬が「小・中学生の試験勉強に効果がある」と誤解されて誤用事故を起こした事例も知られており、15歳未満の小児に使用されることのないよう注意が必要です。

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