鎮咳去痰薬1

2026年7月29日

咳や痰が生じる仕組み、鎮咳去痰薬の働き

1. 咳が出る仕組み

気道に吸い込まれた埃や塵などの異物が気道粘膜の線毛運動によって排出されないとき、飲食物等が誤って気管に入ってしまったとき、または、冷たい空気や刺激性のある蒸気などを吸い込んだときなど、それらを排除しようとして反射的に咳が出ます。

このように咳は、気管や気管支に何らかの異変が起こったときに、その刺激が中枢神経系に伝わり、延髄にある咳嗽中枢の働きによって引き起こされる反応です。

したがって、咳はむやみに抑え込むべきではありませんが、長く続く咳は体力の消耗や睡眠不足を招くなどの悪影響もあります。

2. 痰が出る仕組み

呼吸器官に感染を起こしたときや、空気が汚れた環境で過ごしたり、タバコを吸いすぎたときなどには、気道粘膜からの粘液分泌が増えますが、その粘液に気道に入り込んだ異物や粘膜上皮細胞の残骸などが混じってとなります。

痰が気道粘膜上に滞留すると呼吸の妨げとなるため、反射的に咳が生じて痰を排除しようとします。

気道粘膜に炎症を生じたときにも咳が誘発され、また、炎症に伴って気管や気管支が収縮して喘息(息が切れて、喉がゼーゼーと鳴る状態)を生じることもあります。

3. 鎮咳去痰薬の働き

鎮咳去痰薬は、咳を鎮める、痰の切れを良くする、また、喘息症状を和らげることを目的とする医薬品の総称です。

錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、内用液剤、シロップ剤等のほか、口腔咽喉薬の目的を兼ねたトローチ剤やドロップ剤があります。


4. 配合成分

鎮咳去痰薬には、咳を鎮める成分、気管支を拡げる成分、痰の切れを良くする成分、気道の炎症を和らげる成分等を組み合わせて配合されています。


5. 鎮咳成分

中枢神経系(延髄の咳嗽中枢)に作用して咳を抑える成分を鎮咳成分といいます。

① 麻薬性鎮咳成分

概要

鎮咳成分のうち、コデインリン酸塩水和物、ジヒドロコデインリン酸塩については、その作用本体であるコデイン、ジヒドロコデインがモルヒネと同じ基本構造を持ち、依存性がある成分であり、麻薬性鎮咳成分とも呼ばれます。

留意事項

(a) 薬物乱用

長期連用や大量摂取によって倦怠感や虚脱感、多幸感等が現れることがあり、薬物依存につながるおそれがあります。

特に内服液剤である場合、その製剤的な特徴から、本来の目的以外の意図で服用する不適正な使用(乱用)がなされることがあります。

(b) 胎児への影響

妊娠中に摂取された場合、吸収された成分の一部が血液胎盤関門を通過して胎児へ移行することが知られています。コデインリン酸塩水和物については、動物実験(マウス)で催奇形作用が報告されています。

また、分娩時服用により新生児に呼吸抑制が現れたとの報告があります。

(c) 乳児への影響

母乳への移行により乳児でモルヒネ中毒が生じたとの報告があり、授乳中の人は服用しないか、授乳を避ける必要があります。

(d) 便秘

胃腸の運動を低下させる作用を示し、副作用として便秘が現れることがあります。

(e) 小児等における呼吸抑制

コデインリン酸塩水和物、ジヒドロコデインリン酸塩(コデイン類)を含む医薬品は、呼吸抑制を生じるおそれがあることから、米国等では12歳未満の小児等への使用を禁忌とする措置がとられています。

日本では、呼吸抑制が起こるリスクは欧米と比較して遺伝学的に低いと推定されるものの、小児の呼吸抑制発生リスクを可能な限り低減する観点から、一般用医薬品、医療用医薬品ともに、次の予防的な措置が行われています。

  • 速やかに添付文書を改訂し、原則、本剤を12歳未満の小児等に使用しないよう注意喚起を行うこと。
  • 1年6ヶ月程度の経過措置期間を設け、コデイン類を含まない代替製品や、12歳未満の小児を適応外とする製品への切換えを行うこと。
  • 12歳未満の小児を適応外とする製品への切換え後は、12歳未満の小児への使用を禁忌とする使用上の注意の改訂を再度実施すること(一般用医薬品においては「してはいけないこと」に「12歳未満の小児」を追記する使用上の注意の改訂を再度実施すること)。

② 非麻薬性鎮咳成分

鎮咳成分のうち、以下の成分は非麻薬性鎮咳成分とも呼ばれています。

デキストロメトルファンフェノールフタリン塩は、主にトローチ剤、ドロップ剤に配合される鎮咳成分です。

成分の種類

  • ノスカピン、ノスカピン塩酸塩水和物
  • クロペラスチン塩酸塩、クロペラスチンフェンジゾ酸塩
  • チペピジンクエン酸塩、チペピジンヒベンズ酸塩
  • ジメモルファンリン酸塩
  • デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物、デキストロメトルファンフェノールフタリン塩

③ 鎮咳作用を示す生薬成分

中枢性の鎮咳作用を示す生薬成分として、ハンゲが配合されている場合もあります。

生薬成分の概要

生薬名基原
ハンゲサトイモ科のカラスビシャクのコルク層を除いた塊茎を基原とする生薬である。

6. 気管支拡張成分

① アドレナリン作動成分

作用

メチルエフェドリン塩酸塩、メチルエフェドリンサッカリン塩、トリメトキノール塩酸塩水和物、メトキシフェナミン塩酸塩等のアドレナリン作動成分は、交感神経系を刺激して気管支を拡張させる作用を示し、呼吸を楽にして咳や喘息の症状を鎮めることを目的として用いられます。

また、アドレナリン作動成分と同様の作用を示す生薬成分として、マオウが配合されている場合もあります。

生薬成分の概要

生薬名基原・作用
マオウマオウ科の Ephedra sinica Stapf、Ephedra intermedia Schrenk et C.A. Meyer または Ephedra equisetina Bunge の地上茎を基原とする生薬である。気管支拡張のほか、発汗促進、利尿等の作用も期待される。

留意事項

(a) 交感神経系への刺激作用による影響

アドレナリン作動成分およびマオウ(構成生薬としてマオウを含む漢方処方製剤も同様)については、気管支に対する作用のほか、交感神経系への刺激作用によって、心臓血管系や、肝臓でのエネルギー代謝等にも影響を生じることが考えられます。

心臓病、高血圧、糖尿病または甲状腺機能亢進症の診断を受けた人では、症状を悪化させるおそれがあり、使用する前にその適否につき、治療を行っている医師または処方薬の調剤を行った薬剤師に相談がなされるべきです。

高齢者では、心臓病や高血圧、糖尿病の基礎疾患がある場合が多く、また、一般的に心悸亢進や血圧上昇、血糖値上昇を招きやすいので、使用する前にその適否を十分考慮し、使用する場合にはそれらの初期症状等に常に留意する等、慎重な使用がなされることが重要です。

(b) 依存性

メチルエフェドリン塩酸塩、メチルエフェドリンサッカリン塩、マオウについては、中枢神経系に対する作用が他の成分に比べ強いとされ、依存性があることに留意する必要があります。

(c) 乳児への影響

メチルエフェドリン塩酸塩、メチルエフェドリンサッカリン塩については、定められた用法用量の範囲内で乳児への影響は不明ですが、吸収された成分の一部が乳汁中に移行することが知られています。

② キサンチン系成分

作用

ジプロフィリン等のキサンチン系成分は、自律神経系を介さずに気管支の平滑筋に直接作用して弛緩させ、気管支を拡張させる成分です。

留意事項

キサンチン系成分も中枢神経系を興奮させる作用を示し、甲状腺機能障害またはてんかんの診断を受けた人では、症状の悪化を招くおそれがあり、使用する前にその適否につき、治療を行っている医師または処方薬の調剤を行った薬剤師に相談がなされるべきです。

また、キサンチン系成分は心臓刺激作用を示し、副作用として動悸が現れることがあります。


7. 去痰成分

痰の切れを良くする成分を去痰成分といいます。去痰成分には、以下のような成分があります。

作用成分
気道粘膜からの粘液の分泌を促進する作用を示すグアイフェネシン、グアヤコールスルホン酸カリウム、クレゾールスルホン酸カリウム等
痰の中の粘性タンパク質を溶解・低分子化して粘性を減少させるエチルシステイン塩酸塩、メチルシステイン塩酸塩、カルボシステイン等
粘液成分の含量比を調整し痰の切れを良くするカルボシステイン
分泌促進作用・溶解低分子化作用・線毛運動促進作用を示すブロムヘキシン塩酸塩

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