腸の薬2

2026年7月29日

刺激性瀉下成分

腸管を刺激して反射的な腸の運動を引き起こすことによる瀉下作用を目的として配合される成分です。

刺激性瀉下成分が配合された瀉下薬については、大量に使用することは避けることとされています(腸管粘膜への刺激が大きくなり、激しい腹痛や腸管粘膜に炎症を引き起こすおそれがある)。


1. 小腸刺激性瀉下成分

小腸刺激性瀉下成分として、ヒマシ油があります。

① 作用

ヒマシ油は、ヒマシ(トウダイグサ科のトウゴマの種子)を圧搾して得られた脂肪油で、小腸でリパーゼの働きによって生じる分解物が、小腸を刺激することで瀉下作用をもたらすと考えられています。

日本薬局方収載のヒマシ油および加香ヒマシ油は、腸内容物の急速な排除を目的として用いられます。

② 留意事項

  • 急激で強い瀉下作用(峻下作用)を示すため、以下の人では使用を避けることとされています。
    • 激しい腹痛または悪心・嘔吐の症状がある人
    • 妊婦または妊娠していると思われる女性
    • 3歳未満の乳幼児
  • 主に誤食誤飲等による中毒の場合など、腸管内の物質を速やかに体外に排除させなければならない場合に用いられます。
    • ただし、防虫剤や殺鼠剤を誤って飲み込んだ場合のような脂溶性の物質による中毒には使用を避ける必要があります(ナフタレンやリン等がヒマシ油に溶け出して、中毒症状を増悪させるおそれがある)。
  • 吸収された成分の一部が乳汁中に移行して、乳児に下痢を引き起こすおそれがあるため、母乳を与える女性では使用を避けるか、または使用期間中の授乳を避ける必要があります。

2. 大腸刺激性瀉下成分

① 作用

大腸を刺激して排便を促すことを目的として、以下の成分が用いられます。

  • センナ
  • センノシド(センナから抽出された成分)
  • ダイオウ
  • ビサコジル
  • ピコスルファートナトリウム 等

このほか、大腸刺激による瀉下作用を期待して、アロエや、ジュウヤクケンゴシ等の生薬成分が配合されている場合もあります。

センノシドは、胃や小腸で消化されないが、大腸に生息する腸内細菌によって分解され、分解生成物が大腸を刺激して瀉下作用をもたらすと考えられています。センノシドカルシウム等として配合されている場合もあります。

ビサコジルは、大腸のうち特に結腸や直腸の粘膜を刺激して、排便を促すと考えられています。また、結腸での水分の吸収を抑えて糞便のかさを増大させる働きもあるとされ、内服薬のほか、浣腸薬(坐剤)としても用いられます。

ピコスルファートナトリウムは、胃や小腸では分解されないが、大腸に生息する腸内細菌によって分解されて、大腸への刺激作用を示すようになります。

生薬成分の種類と概要

生薬名基原備考
センナマメ科の Cassia angustifolia Vahl または Cassia acutifolia Delile の小葉を基原とする生薬センノシドを含む
ダイオウタデ科の Rheum palmatum Linné、Rheum tanguticum Maximowicz、Rheum officinale Baillon、Rheum coreanum Nakai またはそれらの種間雑種の、通例、根茎を基原とする生薬センノシドを含む
アロエユリ科の Aloe ferox Miller またはこれと Aloe africana Miller または Aloe spicata Baker との種間雑種の葉から得た液汁を乾燥したものを基原とする生薬センノシドに類似の物質を含む。観葉植物として栽培されるキダチアロエや食用に用いられるアロエベラは、生薬であるアロエの基原植物とは別種である
ジュウヤクドクダミ科のドクダミの花期の地上部を基原とする生薬センノシドに類似の物質を含む
ケンゴシヒルガオ科のアサガオの種子を基原とする生薬センノシドに類似の物質を含む

② 留意事項

(a) 流産・早産に関するもの

刺激性瀉下成分が配合された瀉下薬は一般に、腸の急激な動きに刺激されて流産・早産を誘発するおそれがあります。

特に、センナおよびセンノシドが配合された瀉下薬については、妊婦または妊娠していると思われる女性では、使用を避けるべきです。

(b) 乳児の下痢に関するもの

センナ、センノシド、ダイオウについては、吸収された成分の一部が乳汁中に移行することが知られています。

乳児に下痢を生じるおそれがあり、母乳を与える女性では使用を避けるか、または使用期間中の授乳を避ける必要があります。構成生薬にダイオウを含む漢方処方製剤においても、同様に、母乳を与える女性では使用を避けるか、または使用期間中の授乳を避けることとされています。

(c) ダイオウを含む漢方処方製剤に関するもの

ダイオウは各種の漢方処方の構成生薬としても重要ですが、その漢方処方が瀉下を目的としない場合には、ダイオウの瀉下作用は副作用となります。

構成生薬にダイオウを含む漢方処方製剤では、瀉下作用の増強を生じて、腹痛、激しい腹痛を伴う下痢等の副作用が現れやすくなるため、瀉下薬との併用に注意する必要があります。

(d) ビサコジルに関するもの

内服薬では、胃内で分解されて効果が低下したり、胃粘膜に無用な刺激をもたらすのを避けるため、腸内で溶けるように錠剤がコーティング等されている製品(腸溶性製剤)が多くあります。

腸溶性製剤の場合、胃内でビサコジルが溶け出すおそれがあるため、服用前後1時間以内は制酸成分を含む胃腸薬の服用や牛乳の摂取を避けることとされています。

③ 服用方法

大腸刺激性瀉下成分の配合された瀉下薬は、服用してから数時間後に効果のあるものが多いので、就寝前に服用して起床時に効果を求めるようにすると、排便のリズムも付きやすくなります。

とはいえ、毎日漫然と同じ瀉下薬を連続して服用していると、腸の運動が緩慢になり、服用する薬の量を増やさないと効果が出なくなることが多くあります。

そのため、大腸刺激性瀉下成分の配合された瀉下薬は、便秘時の頓服として使用すべきであり、毎日の排便が滞るような時は、大腸刺激性瀉下成分のみに依存しない、以下のような方法を指導することが必要です。

  • 無機塩類や膨潤性瀉下成分の製剤を使用する
  • ビフィズス菌や乳酸菌などの整腸成分の製剤を並行して使用する
  • 食物繊維を積極的に摂る

3. 無機塩類

① 作用

腸内容物の浸透圧を高めることで糞便中の水分量を増し、また、大腸を刺激して排便を促すことを目的として、以下のマグネシウムを含む成分が配合されている場合があります。

  • 酸化マグネシウム
  • 水酸化マグネシウム
  • 硫酸マグネシウム 等

また、同様な目的で硫酸ナトリウムも用いられます。

【浸透圧】 腸管における腸内容物からの水分の吸収は浸透圧の差を利用しているため、腸内容物の塩分濃度を高めることで、水分の吸収が妨げられます。 水分の移動は濃度の低い方から濃度の高い方に動き、この水分の移動に伴う圧力差を浸透圧といいます。

② 留意事項

マグネシウムを含む成分は、一般に消化管からの吸収は少ないとされていますが、一部は腸で吸収されて尿中に排泄されることが知られています。

腎臓病の診断を受けた人では、高マグネシウム血症(血液中のマグネシウム濃度が異常に高くなり、脱力感、低血圧、呼吸障害などが現れる。重症の場合には、心停止が起こることもある)を生じるおそれがあり、使用する前にその適否につき、治療を行っている医師または処方薬の調剤を行った薬剤師に相談がなされるべきです。

硫酸ナトリウムについては、血液中の電解質のバランスが損なわれ、心臓の負担が増加し、心臓病を悪化させるおそれがあります。心臓病の診断を受けた人では、使用する前にその適否につき、治療を行っている医師または処方薬の調剤を行った薬剤師に相談がなされるべきです。


4. 膨潤性瀉下成分

① 作用

腸管内で水分を吸収して腸内容物に浸透し、糞便のかさを増やすとともに糞便を柔らかくすることによる瀉下作用を目的として、以下の成分が配合されている場合があります。

  • カルメロースナトリウム(別名:カルボキシメチルセルロースナトリウム)
  • カルメロースカルシウム(別名:カルボキシメチルセルロースカルシウム)

同様な作用を期待して、プランタゴオバタ(オオバコ科)の種子または種皮のような生薬成分も用いられます。

② 留意事項

膨潤性瀉下成分が配合された瀉下薬については、その効果を高めるため、使用と併せて十分な水分摂取がなされることが重要です。


5. ジオクチルソジウムスルホサクシネート(DSS)

腸内容物に水分が浸透しやすくする作用があり、糞便中の水分量を増して柔らかくすることによる瀉下作用を期待して用いられます。


6. マルツエキス

① 作用

主成分である麦芽糖が腸内細菌によって分解(発酵)して生じるガスによって便通を促すとされています。

瀉下薬としては比較的作用が穏やかなため、主に乳幼児の便秘に用いられます。

② 留意事項

乳児の便秘は母乳不足または調整乳の希釈方法の誤りによって起こることもありますが、水分不足に起因する便秘にはマルツエキスの効果は期待できません。

マルツエキスは麦芽糖を60%以上含んでおり水飴状で甘く、乳幼児の発育不良時の栄養補給にも用いられます。


7. 漢方処方製剤

腸の不調を改善する目的で用いられる漢方処方製剤としては、桂枝加芍薬湯、大黄甘草湯、大黄牡丹皮湯、麻子仁丸等があります。

漢方処方製剤の種類と概要

桂枝加芍薬湯

  • 体力中等度以下で、腹部膨満感のあるもののしぶり腹(残便感があり、繰り返し腹痛を伴い便意を催すもの)、腹痛、下痢、便秘に適すとされる。
  • 短期間の使用に限られるものでないが、1週間位服用して症状の改善がみられない場合には、いったん使用を中止して専門家に相談がなされるなどの対応が必要である。
  • 構成生薬としてカンゾウを含む。

大黄甘草湯

  • 体力にかかわらず使用できる。便秘、便秘に伴う頭重、のぼせ、湿疹・皮膚炎、吹き出物(にきび)、食欲不振(食欲減退)、腹部膨満、腸内異常発酵、痔などの症状の緩和に適すとされる。
  • 体の虚弱な人(体力の衰えている人、体の弱い人)、胃腸が弱く下痢しやすい人では、激しい腹痛を伴う下痢等の副作用が現れやすい等、不向きとされる。
  • 本剤を使用している間は、他の瀉下薬の使用を避ける必要がある。
  • 短期間の使用に限られるものでないが、5〜6日間服用しても症状の改善がみられない場合には、いったん使用を中止して専門家に相談がなされるべきである。

大黄牡丹皮湯

  • 構成生薬としてカンゾウ、ダイオウを含む。
  • 体力中等度以上で、下腹部痛があって、便秘しがちなものの月経不順、月経困難、月経痛、便秘、痔疾に適すとされる。
  • 体の虚弱な人(体力の衰えている人、体の弱い人)、胃腸が弱く下痢しやすい人では、激しい腹痛を伴う下痢等の副作用が現れやすい等、不向きとされる。
  • 本剤を使用している間は、他の瀉下薬の使用を避ける必要がある。
  • 便秘、痔疾に対して用いる場合には、1週間位服用しても症状の改善がみられないときは、いったん使用を中止して専門家に相談がなされるべきである。
  • 月経不順、月経困難に対して用いる場合には、比較的長期間(1ヶ月位)服用されることがある。

麻子仁丸

  • 体力中等度以下で、ときに便が硬く塊状なものの便秘、便秘に伴う頭重、のぼせ、湿疹・皮膚炎、吹き出物(にきび)、食欲不振(食欲減退)、腹部膨満、腸内異常発酵、痔などの症状の緩和に適すとされる。
  • 胃腸が弱く下痢しやすい人では、激しい腹痛を伴う下痢等の副作用が現れやすい等、不向きとされる。
  • 本剤を使用している間は、他の瀉下薬の使用を避ける必要がある。
  • 短期間の使用に限られるものでないが、5〜6日間服用しても症状の改善がみられない場合には、いったん使用を中止して専門家に相談がなされるべきである。
  • 構成生薬としてダイオウを含む。

8. 相互作用

医薬品の成分の中には副作用として便秘や下痢を生じるものがあり、止瀉薬や瀉下薬と一緒にそうした成分を含有する医薬品が併用された場合、作用が強く現れたり、副作用を生じやすくなるおそれがあります。

逆に、整腸薬や止瀉薬、瀉下薬が、他の医薬品の有効性や安全性に影響を及ぼすこともあります。

① ヒマシ油と駆虫薬の併用

駆虫薬は駆除した寄生虫の排出を促すため瀉下薬が併用されることがありますが、ヒマシ油を使用した場合には、駆虫成分が腸管内にとどまらず吸収されやすくなり、全身性の副作用を生じる危険性が高まるため、ヒマシ油と駆虫薬の併用は避けることとされています。

② 整腸薬と止瀉薬の併用

整腸薬と止瀉薬は、いずれも効能・効果に軟便が含まれていることがありますが、生菌成分が配合された整腸薬に、腸内殺菌成分が配合された止瀉薬が併用された場合、生菌成分の働きが腸内殺菌成分によって弱められます。

③ 複数の瀉下薬の併用

複数の瀉下薬を併用すると、激しい腹痛を伴う下痢や下痢に伴う脱水症状等を生じるおそれがあり、どのような種類の瀉下成分を含有するものであっても、瀉下薬を使用している間は、他の瀉下薬の使用を避けることとされています。

④ 瀉下薬と食品との併用

食品にも緩下作用(緩和な瀉下作用)を示すものがあり、そうした食品との相互作用についても留意されるべきです。

例えば、センナの茎を用いた製品は、医薬品的な効能効果が標榜または暗示されていなければ食品として流通することが可能となっていますが、ときに微量のセンノシドが含まれる場合があることが知られており、「医薬品でないから大丈夫」と安易に考えて瀉下薬と同時期に摂取された場合、複数の瀉下薬を併用した場合と同様の健康被害につながるおそれがあります。


9. 受診勧奨

① 概要

一般用医薬品の使用はあくまで対症療法であり、下痢や便秘を引き起こした原因の特定やその解消が図られることが、一般用医薬品の適正な使用を確保する上で重要です。

医薬品の副作用として下痢や便秘が現れることもあり、医薬品の使用中に原因が明確でない下痢や便秘を生じた場合は、安易に止瀉薬や瀉下薬によって症状を抑えようとせず、その医薬品の使用を中止して、医師や薬剤師などの専門家に相談するよう説明がなされるべきです。

下痢、便秘のいずれに関しても、一般用医薬品により対処を図ることが適当であるか、適切な判断がなされることが重要です。

過敏性腸症候群(腸管の組織自体に形態的な異常はないにもかかわらず、腸が正常に機能せず、腹痛や下痢・便秘などを生じる病気)の便通障害のように下痢と便秘が繰り返し現れるものもあり、症状が長引くような場合には、医師の診療を受けるなどの対応が必要です。

② 下痢の場合

下痢は、腸管内の有害な物質を排出するために起こる防御反応でもあり、止瀉薬によって下痢を止めることでかえって症状の悪化を招くことがあります。また、下痢に伴って脱水症状を招きやすいため、下痢への対処では水分・電解質の補給も重要です。

次のような場合は、安易に止瀉薬を用いて症状を一時的に鎮めようとするのではなく、早期に医療機関を受診して原因の特定、治療がなされるべきです。

主な症状考えられる原因
下痢に発熱を伴う場合食中毒菌等による腸内感染症の可能性があり、また、虫垂炎や虚血性大腸炎(大腸への動脈血流が突然あるいは長期にわたって妨げられたため起こる大腸粘膜やその内側の粘膜層の損傷で、損傷した大腸粘膜に潰瘍〈糜爛〉を生じる)のような重大な疾患に起因する場合もある
便に血が混じる場合赤痢や腸管出血性大腸菌(O-157等)、潰瘍性大腸炎、大腸がんなどによる腸管出血の可能性がある
粘液便が続く場合腸の炎症性疾患の可能性もある

③ 便秘の場合

便秘については、便秘になりやすい食生活等の生活習慣の改善が図られることが重要であり、瀉下薬の使用は一時的なものにとどめることが望ましいとされています。

特に、刺激性瀉下成分を主体とする瀉下薬は、繰り返し使用されると腸管の感受性が低下して効果が弱くなるため、常用を避ける必要があります。瀉下薬が手放せなくなっているような慢性の便秘については、漫然と継続使用するよりも、医師の診療を受けるなどの対応が必要です。

腹痛は便秘の時にしばしば起こる症状ですが、腹痛が著しい場合や便秘に伴って吐きけや嘔吐が現れた場合には、急性腹症(腸管の狭窄、閉塞、腹腔内器官の炎症等)の可能性があります。瀉下薬の配合成分の刺激によってその症状を悪化させるおそれがあり、安易に瀉下薬を使用せずに医師の診療を受けるなどの対応が必要です。

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