その他消化器官用薬

2026年8月28日

浣腸薬

1. 概要

浣腸薬は、便秘の場合に排便を促すことを目的として、直腸内に適用される医薬品です。剤形には注入剤(肛門から薬液を注入するもの)のほか、坐剤となっているものもあります。なお、一般に「浣腸薬」というときは、多くの場合、注入剤として用いられるものを指します。

2. 留意事項

浣腸薬には、次のような留意事項があります。

  • 繰り返し使用すると直腸の感受性の低下(いわゆる慣れ)が生じて効果が弱くなり、医薬品の使用に頼りがちになるため、連用しないこととされている。
  • 便秘以外のときに直腸内容物の排除を目的として用いることは適当ではない。
  • 便秘については、瀉下薬と同様、便秘になりやすい食生活等の生活習慣の改善が図られることが重要であり、浣腸薬の使用は一時的なものにとどめるべきである。特に乳幼児では、安易な使用を避けることとされている。
  • 浣腸薬は一般に、直腸の急激な動きに刺激されて流産・早産を誘発するおそれがあるため、妊婦または妊娠していると思われる女性では使用を避けるべきである。
  • 腹痛が著しい場合や便秘に伴って吐きけや嘔吐が現れた場合には、急性腹症(腸管の狭窄、閉塞、腹腔内器官の炎症等)の可能性があり、浣腸薬の配合成分の刺激によってその症状を悪化させるおそれがある。
  • 排便時に出血を生じる場合は、痔出血のほか、直腸ポリープや直腸がん等に伴う出血であることもあり、医師の診療を受けるなどの対応が必要である。

3. 注入剤(浣腸薬)

① 作用

浸透圧の差によって腸管壁から水分を取り込んで直腸粘膜を刺激し、排便を促す効果を期待して、グリセリンやソルビトールが用いられます。

② 用法

注入剤の用法に関連した注意事項は次のとおりです。

  1. 薬液の放出部を肛門に差し込み、薬液だまりの部分を絞って薬液を押し込むように注入する。
  2. 注入するときはゆっくりと押し込み、注入が終わったら放出部をゆっくりと抜き取る。また、注入する薬液は人肌程度に温めておくと、不快感を生じることが少ない。
  3. 薬液を注入した後すぐに排便を試みると、薬液のみが排出されて効果が十分得られないことから、便意が強まるまでしばらく我慢する。薬液が漏れ出しそうな場合は肛門を脱脂綿等で押さえておくとよい。
  4. 半量等を使用する用法がある場合、残量を再利用すると感染のおそれがあるので使用後は廃棄する。

③ 留意事項

(a) 不快感

直腸内の浸透圧変化に伴って、使用時の体調によっては肛門部に熱感を生じることがあります。また、肛門から異物を注入する用法であることから、人によっては肛門部の不快感を生じることがあります。

(b) 立ちくらみ

グリセリンが配合された浣腸薬では、排便時に血圧低下を生じて、立ちくらみの症状が現れるとの報告があります。

そうした症状は体力の衰えている高齢者心臓に基礎疾患がある人で特に現れやすいため、高齢者または心臓病の診断を受けた人では、使用する前にその適否につき、治療を行っている医師等に相談がなされるべきです。

(c) 溶血・腎不全

グリセリンが配合された浣腸薬が、肛門や直腸の粘膜に損傷があり出血しているときに使用されると、グリセリンが傷口から血管内に入って、**赤血球の破壊(溶血)**を引き起こす、また、腎不全を起こすおそれがあります。

痔出血の症状がある人では、使用する前にその適否につき、治療を行っている医師等に相談がなされるべきです。


4. 坐剤(浣腸薬)

① 作用

ビサコジルのほか、炭酸水素ナトリウム等も用いられます。炭酸水素ナトリウムは、直腸内で徐々に分解して炭酸ガスの微細な気泡を発生することで直腸を刺激する作用を期待して用いられます。

② 用法

坐剤の用法に関連した注意事項は次のとおりです。

  1. 柔らかい場合には、しばらく冷やした後に使用する。また、硬すぎる場合には、柔らかくなった後に使用する。無理に挿入すると直腸粘膜を傷つけるおそれがある。
  2. 坐剤を挿入した後すぐに排便を試みると、坐剤が排出されて効果が十分得られないことから、便意が強まるまでしばらく我慢する。

③ 留意事項

ビサコジルは瀉下薬の有効成分として内服でも用いられますが、その坐剤を誤って服用することのないよう留意される必要があります。

炭酸水素ナトリウムを主薬とする坐剤では、まれに重篤な副作用としてショックを生じることがあります。



駆虫薬

1. 概要

駆虫薬は、腸管内の寄生虫に対して、これを駆除するために用いられる医薬品です。

一般用医薬品の駆虫薬が対象とする寄生虫は、回虫と蟯虫です。いずれも手指や食物に付着した虫卵が口から入ることで感染します。

なお、条虫(いわゆるサナダ虫など)や吸虫、鉤虫、旋毛虫、鞭虫等の駆除を目的とする一般用医薬品はありません。これらについては、医療機関を受診して診療を受けるなどの対応が必要です。

① 回虫

回虫は、孵化した幼虫が腸管壁から体組織に入り込んで体内を巡り、肺に達した後に気道から再び消化管内に入って成虫となります。

そのため、腹痛や下痢、栄養障害等の消化器症状のほか、呼吸器等にも障害を引き起こすことがあります。

② 蟯虫

蟯虫は、肛門から這い出してその周囲に産卵するため、肛門部の痒みやそれに伴う不眠、神経症を引き起こすことがあります。


2. 用法

駆虫薬は腸管内に生息する虫体にのみ作用します。

虫卵や腸管内以外に潜伏した幼虫(回虫の場合)には駆虫作用が及ばないため、それらが成虫となった頃に改めて使用しないと完全に駆除できません

再度、駆虫を必要とする場合には、1ヶ月以上間隔を置いてから使用することとされています。

なお、回虫や蟯虫の感染は、その感染経路から、通常、衣食を共にする家族全員にその可能性があり、保健所等において虫卵検査を受けて感染が確認された場合には、家族一緒に駆虫を図ることが基本となります。


3. 留意事項

① 駆虫薬の過量使用

一度に多く服用しても駆虫効果が高まることはなく、かえって副作用が現れやすくなるため、定められた1日の服用回数や服用期間を守って適正に使用されることが重要です。

② 複数の駆虫薬の使用

複数の駆虫薬を併用しても駆虫効果が高まることはなく、副作用が現れやすくなり、また、組合せによってはかえって駆虫作用が減弱することもあります。

③ 空腹時の使用

駆虫薬は、その有効成分(駆虫成分)が腸管内において薬効をもたらす局所作用を目的とする医薬品です。消化管からの駆虫成分の吸収は好ましくない全身作用(頭痛、めまい等の副作用)を生じる原因となるため、極力少ないことが望ましいとされています。

食事を摂って消化管内に内容物があるときに使用すると、消化管内容物の消化吸収に伴って駆虫成分の吸収が高まることから、多くは、空腹時に使用することとされています。

④ ヒマシ油との併用

駆除した虫体や腸管内に残留する駆虫成分の排出を促すため瀉下薬が併用されることがあります。

しかし、ヒマシ油を使用すると腸管内で駆虫成分が吸収されやすくなり、副作用を生じる危険性が高まるため、ヒマシ油との併用は避ける必要があります。


4. 駆虫成分

① サントニン

概要

回虫の自発運動を抑える作用を示し、虫体を排便とともに排出させることを目的として用いられます。

留意事項

消化管から吸収されたサントニンは主に肝臓で代謝されますが、肝臓病の診断を受けた人では、肝機能障害を悪化させるおそれがあるため、使用する前にその適否につき、治療を行っている医師または処方薬の調剤を行った薬剤師に相談がなされるべきです。

服用後、一時的に物が黄色く見えたり、耳鳴り、口渇が現れることがあります。

② カイニン酸

回虫に痙攣を起こさせる作用を示し、虫体を排便とともに排出させることを目的として用いられます。

カイニン酸を含む生薬成分として、マクリが配合されている場合もあります。

日本薬局方収載のマクリは、煎薬として回虫の駆除に用いられます。

生薬成分の概要

生薬名基原
マクリフジマツモ科のマクリの全藻を基原とする生薬である。

③ ピペラジンリン酸塩

概要

アセチルコリン伝達を妨げて、回虫および蟯虫の運動筋を麻痺させる作用を示し、虫体を排便とともに排出させることを目的として用いられます。

留意事項

副作用として痙攣、倦怠感、眠気、食欲不振、下痢、便秘等が現れることがあります。

痙攣の症状のある人、貧血、著しい栄養障害の診断を受けた人では、それらの症状の悪化を招くおそれがあるため、使用する前にその適否につき、治療を行っている医師または処方薬の調剤を行った薬剤師に相談がなされるべきです。

また、肝臓病、腎臓病の診断を受けた人では、吸収されて循環血液中に移行したピペラジンが滞留して副作用を生じやすくなるおそれがあるため、使用する前にその適否につき、治療を行っている医師または処方薬の調剤を行った薬剤師に相談がなされるべきです。

④ パモ酸ピルビニウム

概要

蟯虫の呼吸や栄養分の代謝を抑えて殺虫作用を示すとされます。

留意事項

赤〜赤褐色の成分で、尿や糞便が赤く着色することがあります。

水に溶けにくいため消化管からの吸収は少ないとされていますが、ヒマシ油との併用は避ける必要があります。

また、空腹時に服用することとなっていませんが、同様の理由から、脂質分の多い食事やアルコール摂取は避けるべきです。

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