貧血用薬、循環器用薬

2026年7月29日

1. 貧血と貧血用薬

1-1. 貧血

貧血は、その原因によりビタミン欠乏性貧血、鉄欠乏性貧血等に分類されますが、一般的な症状として以下のようなものが現れます。

  • 疲労
  • 動悸
  • 息切れ
  • 血色不良
  • 頭痛
  • 耳鳴り
  • めまい
  • 微熱
  • 皮膚や粘膜の蒼白(青白くなること)
  • 下半身のむくみ 等

【ビタミン欠乏性貧血】 特に、ビタミンB12が不足して生じる巨赤芽球貧血は悪性貧血と呼ばれています。

ビタミンB12は、胃腺から出る粘液に含まれる、内因子と呼ばれるタンパク質と結合することで、小腸から吸収されやすくなりますので、胃粘膜の異常によりビタミンB12が不足します。

① 鉄欠乏性貧血

鉄欠乏性貧血とは、赤血球に含まれる色素、ヘモグロビンの生合成に必要な鉄分が不足して生じる貧血です。

鉄分は、赤血球が酸素を運搬する上で重要なヘモグロビンの産生に不可欠なミネラルですが、鉄分の摂取不足を生じても、初期には以下が減少するのみでヘモグロビン量自体は変化せず、直ちに貧血の症状は現れません。

  • 貯蔵鉄:フェリチンという鉄を含有するタンパク質として、肝臓などに蓄えられている鉄
  • 血清鉄:ヘモグロビンを産生するために、貯蔵鉄が赤血球へと運ばれている状態

しかし、持続的に鉄が欠乏すると、ヘモグロビンが減少して貧血症状が現れます。

鉄欠乏状態を生じる要因

  • 日常の食事からの鉄分の摂取不足
  • 鉄の消化管からの吸収障害による鉄の供給量の不足
  • 消化管出血 等

また、以下のような人では鉄欠乏状態を生じやすいとされています。

  • 体の成長が著しい年長乳児や幼児
  • 月経血損失のある女性
  • 鉄要求量の増加する妊婦、母乳を与える女性

② 貧血用薬

貧血用薬(鉄製剤)は、鉄欠乏性貧血に対して不足している鉄分を補充することにより、造血機能の回復を図る医薬品です。


1-2. 貧血用薬の配合成分と副作用等

配合成分

① 鉄分

不足した鉄分を補充することを目的として配合されているものであり、主な成分としては以下が用いられます。

  • フマル酸第一鉄
  • 溶性ピロリン酸第二鉄
  • 可溶性含糖酸化鉄
  • クエン酸鉄アンモニウム など

なお、鉄製剤を服用すると便が黒くなることがあります。これは使用の中止を要する副作用等の異常ではありませんが、鉄製剤の服用前から便が黒い場合は貧血の原因として消化管内で出血している場合もあるため、服用前の便の状況との対比が必要です。

② 銅

銅は、ヘモグロビンの産生過程で、鉄の代謝や輸送に重要な役割を持ちます。

補充した鉄分を利用してヘモグロビンが産生されるのを助ける目的で、硫酸銅が配合されている場合があります。

③ コバルト

コバルトは、赤血球ができる過程で必要不可欠なビタミンB12の構成成分で、骨髄での造血機能を高める目的で、硫酸コバルトが配合されている場合があります。

④ マンガン

マンガンは、糖質・脂質・タンパク質の代謝をする際に働く酵素の構成物質で、エネルギー合成を促進する目的で、硫酸マンガンが配合されている場合があります。

⑤ ビタミン成分

貧血を改善するため、以下のようなビタミン成分が配合されている場合があります。

  • ビタミンB6:ヘモグロビン産生に必要
  • ビタミンB12・葉酸(ビタミンB群の一種):正常な赤血球の形成に働く
  • ビタミンC(アスコルビン酸等):消化管内で鉄が吸収されやすい状態に保つことを目的として用いられる

主な副作用

貧血用薬(鉄製剤)の主な副作用として、以下のような胃腸障害が知られています。

  • 悪心(吐きけ)・嘔吐
  • 食欲不振
  • 胃部不快感
  • 腹痛
  • 便秘、下痢 等

鉄分の吸収は空腹時のほうが高いとされていますが、消化器系への副作用を軽減するには、食後に服用することが望ましいとされています。

胃への負担を軽減するため、腸溶性(胃と腸のpHの違いを利用して、胃ではなく腸で溶けるようにコーティングされた製剤)とした製品もあります。

相互作用

  • 複数の貧血用薬(鉄製剤)を併用すると、鉄分の過剰摂取となり、胃腸障害や便秘等の副作用が起こりやすくなります。
  • 服用の前後30分にタンニン酸を含む飲食物(緑茶、紅茶、コーヒー、ワイン、柿等)を摂取すると、タンニン酸と反応して鉄の吸収が悪くなることがあるので、服用前後はそれらの摂取を控えることとされています。
  • 医師の治療を受けている人では、鉄分の吸収に影響を及ぼす薬剤が処方されている場合があるので、使用する前にその適否につき、治療を行っている医師または処方薬の調剤を行った薬剤師に相談がなされるべきです。

受診勧奨等

① 食生活の改善

貧血のうち鉄製剤で改善できるのは、鉄欠乏性貧血のみです。

特段の基礎疾患等がなく鉄分の欠乏を生じる主な要因としては、食事の偏り(鉄分の摂取不足)が考えられ、貧血用薬(鉄製剤)の使用による対処と併せて、食生活の改善が図られることが重要です。

なお、貧血の症状がみられる以前から予防的に貧血用薬(鉄製剤)を使用することは適当ではありません。

② 受診勧奨をすべき症状

食生活を改善し、かつ鉄製剤の使用を2週間程度続けても症状の改善がみられない場合には、以下のような出血性の疾患による慢性的な血液の損失が原因で貧血症状が起きている可能性があります。

  • 月経過多
  • 消化管出血
  • 子宮筋腫 等

これらの場合、基礎疾患の治療が優先されるべきであり、一般用医薬品による対処を漫然と継続することは適当ではありません。

また、鉄欠乏性貧血以外の貧血により症状が現れていることも疑われ、鉄製剤によって対処すること自体が適当でない可能性もあります。

鉄欠乏性貧血以外の貧血の例

種類内容
ビタミン欠乏性貧血赤血球が生成される上で必要な鉄以外の要素が欠損しているもの
腎性貧血腎不全等の腎障害により赤血球が生成される上で必要なタンパク質の産生が低下するもの

いずれの場合も、医薬品の販売等に従事する専門家においては、購入者等に対して、貧血用薬(鉄製剤)の使用を漫然と継続せずに医療機関を受診するよう促すべきです。


2. その他の循環器用薬

2-1. 生薬成分

循環器用薬には、コウカ等が配合されている場合があります。

● 生薬成分の概要

コウカ

  • キク科のベニバナの管状花をそのまま、または黄色色素の大部分を除いたもので、ときに圧搾して板状としたものを基原とする生薬である。
  • 末梢の血行を促してうっ血を除く作用があるとされる。
  • 日本薬局方収載のコウカを煎じて服用する製品は、冷え症および血色不良に用いられる。

2-2. 生薬成分以外の成分

循環器用薬に配合される主な生薬成分以外の成分の作用、副作用等は次のとおりです。

ユビデカレノン(別名:コエンザイムQ10)

  • 肝臓や心臓などの臓器に多く存在し、エネルギー代謝に関与する酵素の働きを助ける成分で、摂取された栄養素からエネルギーが産生される際にビタミンB群とともに働く。
  • 心筋の酸素利用効率を高めて収縮力を高めることによって血液循環の改善効果を示すとされ、軽度な心疾患により日常生活の身体活動を少し超えたときに起こる動悸、息切れ、むくみの症状に用いられる。
  • 2週間位使用して症状の改善がみられない場合には、心臓以外の病気が原因である可能性も考えられ、漫然と使用を継続することは適当でない。
  • 副作用として、胃部不快感、食欲減退、吐きけ、下痢、発疹・痒みが現れることがある。
  • 小児において心疾患による動悸、息切れ、むくみの症状があるような場合には、医師の診療を受けることが優先されるべきであり、15歳未満の小児向けの製品はない
  • 心臓の病気で医師の治療または指示を受けている人では、その処置が優先されるべきであり、使用する前にその適否につき、治療を行っている医師または処方薬の調剤を行った薬剤師に相談するべきである。
  • 動悸、息切れ、むくみの症状は、高血圧症、呼吸器疾患、腎臓病、甲状腺機能の異常、貧血などが原因となって起こることもある。

ヘプロニカート、イノシトールヘキサニコチネート

  • いずれもニコチン酸が遊離し、そのニコチン酸の働きによって末梢の血液循環を改善する作用を示すとされる。
  • ビタミンEと組み合わせて用いられる場合が多い。

ルチン

  • ビタミン様物質の一種で、高血圧等における毛細血管の補強、強化の効果を期待して用いられる。

2-3. 漢方処方製剤

その他の循環器用薬に配合される漢方処方製剤の適応と留意事項は次のとおりです。

三黄瀉心湯

<適応>

  • 体力中等度以上で、のぼせ気味で顔面紅潮し、精神不安、みぞおちのつかえ、便秘傾向などのあるものの高血圧の随伴症状(のぼせ、肩こり、耳鳴り、頭重、不眠、不安)、鼻血、痔出血、便秘、更年期障害、血の道症に適すとされている。
  • 体の虚弱な人(体力の衰えている人、体の弱い人)、胃腸が弱く下痢しやすい人、だらだら出血が長引いている人では、激しい腹痛を伴う下痢等の副作用が現れやすい等、不向きとされている。
  • 構成生薬としてダイオウを含む。

<留意事項>

  • 本剤を使用している間は、瀉下薬の使用を避ける必要がある。

<鼻血、痔出血、便秘に用いる場合>

  • 鼻血に用いる場合には、漫然と長期の使用は避け、5~6回使用しても症状の改善がみられないときは、いったん使用を中止して専門家に相談がなされるなどの対応が必要である。
  • 痔出血、便秘に用いる場合も同様に、漫然と長期の使用は避け、1週間位使用しても症状の改善がみられないときは、いったん使用を中止して専門家に相談がなされるなどの対応が必要である。

<その他>

  • その他の適応に対して用いる場合には、比較的長期間(1ヶ月位)服用されることがある。

七物降下湯

<適応>

  • 体力中等度以下で、顔色が悪くて疲れやすく、胃腸障害のないものの高血圧に伴う随伴症状(のぼせ、肩こり、耳鳴り、頭重)に適すとされている。
  • 胃腸が弱く下痢しやすい人では、胃部不快感等の副作用が現れやすい等、不向きとされている。

<留意事項>

  • 小児向けの漢方処方ではなく、15歳未満の小児への使用は避ける必要がある。

<その他>

  • 比較的長期間(1ヶ月位)服用されることがある。

2-4. 相互作用

コエンザイムQ10については、医薬品的な効能効果が標榜または暗示されていなければ、食品(いわゆる健康食品)の素材として流通することが可能となっており、そうした食品が合わせて摂取された場合、胃部不快感や吐きけ、下痢等の副作用が現れやすくなるおそれがあります。

また、作用が増強されて心臓に負担を生じたり、副作用が現れやすくなるおそれがあることから、強心薬等の併用は避ける必要があります。

2-5. 受診勧奨等

高血圧や心疾患に伴う諸症状を改善する医薬品は、体質の改善または症状の緩和を主眼としており、いずれも高血圧や心疾患そのものの治療を目的とするものではありません

これらの医薬品の使用は補助的なものであり、高血圧や心疾患そのものへの対処については、医療機関の受診がなされるなどの対応が必要です。

医薬品の販売等に従事する専門家においては、購入者等が、それら疾患について、一般用医薬品によって自己治療が可能であるかの誤解を生じることのないよう、適切な情報提供に努めるべきです。

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