婦人薬

2026年7月29日

月経と女性に現れる特有な諸症状

1. 月経

① 月経の仕組み

女性の月経は、子宮の内壁を覆っている膜(子宮内膜)が剥がれ落ち、血液(経血)とともに排出される生理現象で、一生のうち妊娠可能な期間に、妊娠期間中などを除き、ほぼ毎月、周期的に起こります。

② 月経の周期

月経周期は、個人差があり、約21〜40日と幅があります。

種々のホルモンの複雑な相互作用によって調節されており、視床下部や下垂体で産生されるホルモンと、卵巣で産生される女性ホルモンが月経周期に関与します。

③ 閉経

加齢とともに卵巣からの女性ホルモンの分泌が減少していき、やがて月経が停止して、妊娠可能な期間が終了することを閉経といいます。


2. 女性に現れる特有な諸症状

① 更年期障害

閉経の前後には、**更年期(閉経周辺期)**と呼ばれる移行的な時期があり、体内の女性ホルモンの量が大きく変動することがあります。

そのため更年期においては、月経周期が不規則になるほか、不定愁訴として血の道症の症状に加え、冷え症、腰痛、頭痛、頭重、ほてり、のぼせ、立ちくらみ等の症状が起こることがあり、こうした症候群を更年期障害といいます。

【不定愁訴】 体のどの部位が悪いのかはっきりしない訴えで、全身の倦怠感や疲労感、微熱感などを特徴とする。更年期障害のほか、自律神経失調症等の心身症の症状として現れることが多い。

【血の道症】 臓器・組織の形態的異常がなく、抑うつや寝つきが悪くなる、神経質、集中力の低下等の精神神経症状が現れる病態。

② 血の道症

血の道症は、月経、妊娠、分娩、産褥(分娩後、母体が通常の身体状態に回復するまでの期間)、更年期等の生理現象や、流産、人工妊娠中絶、避妊手術などを原因とする異常生理によって起こるとされ、範囲が更年期障害よりも広く、年齢的に必ずしも更年期に限りません。

特に、月経の約10〜3日前に現れ、月経開始とともに消失する、腹部膨満感、頭痛、乳房痛などの身体症状や感情の不安定、抑うつなどの精神症状を主体とするものを、月経前症候群といいます。


3. 婦人薬

婦人薬は、月経および月経周期に伴って起こる症状を中心として、女性に現れる特有な諸症状の緩和と、保健を主たる目的とする医薬品です。

その効能・効果として、血の道症、更年期障害、月経異常およびそれらに随伴する冷え症、月経痛、腰痛、頭痛、のぼせ、肩こり、めまい、動悸、息切れ、手足のしびれ、こしけ(おりもの)、血色不良、便秘、むくみ等に用いられます。

【女性に現れる特有な諸症状】 女性に現れる特有な諸症状には、血行不順、自律神経系の働きの乱れ、生理機能障害等の全身的な不快症状などがある。


4. 配合成分

① 女性ホルモン成分

概要

人工的に合成された女性ホルモンの一種であるエチニルエストラジオールは、エストラジオールを補充するもので、膣粘膜または外陰部に適用されるものがあります。

これらの成分は適用部位から吸収されて循環血液中に移行します。

留意事項

  • 妊娠中の女性ホルモン成分の摂取によって胎児の先天性異常の発生が報告されており、妊婦または妊娠していると思われる女性では使用を避ける必要があります。
  • 吸収された成分の一部が乳汁中に移行することが考えられ、母乳を与える女性では使用を避けるべきです。
  • 長期連用により血栓症を生じるおそれがあり、また、乳がんや脳卒中などの発生確率が高まる可能性もあるため、継続して使用する場合には、医療機関を受診するよう促すべきです。

② 生薬成分

次のような生薬成分が配合されている場合があります。

生薬成分の種類と概要

生薬名基原作用
サフランアヤメ科のサフランの柱頭を基原とする。鎮静、鎮痛のほか、女性の滞っている月経を促す作用を期待して用いられる。日本薬局方収載のサフランを煎じて服用する製品は、冷え症および血色不良に用いられる。
コウブシカヤツリグサ科のハマスゲの根茎を基原とする。サフランと同様に鎮静、鎮痛、月経を促す作用を期待して用いられる。
センキュウセリ科のセンキュウの根茎を、通例、湯通ししたものを基原とする。血行を改善し、血色不良や冷えの症状を緩和するほか、強壮、鎮静、鎮痛等の作用を期待して用いられる。
トウキセリ科のトウキまたはホッカイトウキの根を、通例、湯通ししたものを基原とする。センキュウと同様の作用を期待して用いられる。
ジオウゴマノハグサ科のアカヤジオウ等の根またはそれを蒸したものを基原とする。センキュウ、トウキと同様の作用を期待して用いられる。

その他の生薬成分

  • 鎮痛・鎮痙の作用を期待して、シャクヤク、ボタンピ等が配合されている場合がある。
  • 鎮静作用を期待して、サンソウニン、カノコソウ等が配合されている場合がある。
  • 抗炎症作用を期待して、カンゾウが配合されている場合がある。
  • 胃腸症状に対する効果を期待して、オウレン、ソウジュツ、ビャクジュツ、ダイオウ等が配合されている場合がある。
  • このほか、利尿作用を期待して、モクツウ、ブクリョウ等が配合されている場合がある。

③ ビタミン成分

以下の成分が配合されている場合があります。

ビタミン主な成分名作用
ビタミンB1チアミン硝化物、チアミン塩化物塩酸塩等疲労時に消耗しがちなビタミンの補給
ビタミンB2リボフラビン、リボフラビンリン酸エステルナトリウム等同上
ビタミンB6ピリドキシン塩酸塩等同上
ビタミンB12シアノコバラミン同上
ビタミンCアスコルビン酸等同上
ビタミンEトコフェロールコハク酸エステル等血行を促進する

④ その他

滋養強壮作用を目的として、アミノエチルスルホン酸(タウリン)、グルクロノラクトン、ニンジン等が配合されている場合があります。


5. 漢方処方製剤

女性の月経や更年期障害に伴う諸症状の緩和に用いられる主な漢方処方製剤として、温経湯、温清飲、加味逍遙散、桂枝茯苓丸、五積散、柴胡桂枝乾姜湯、四物湯、桃核承気湯、当帰芍薬散等があります。

これらのうち、温経湯、加味逍遙散、五積散、柴胡桂枝乾姜湯、桃核承気湯は構成生薬としてカンゾウを含みます。(感冒に用いられる場合の五積散、便秘に用いられる場合の桃核承気湯を除き、)いずれも比較的長期間(1ヶ月位)服用されることがあります。

漢方処方製剤の種類と概要

温経湯

  • 体力中等度以下で、手足がほてり、唇が乾くものの月経不順、月経困難、こしけ(おりもの)、更年期障害、不眠、神経症、湿疹・皮膚炎、足腰の冷え、しもやけ、手あれ(手の湿疹・皮膚炎)に適すとされる。
  • 胃腸の弱い人では、不向きとされる。
  • 構成生薬としてカンゾウを含む。

温清飲

  • 体力中等度で、皮膚はかさかさして色つやが悪く、のぼせるものの月経不順、月経困難、血の道症、更年期障害、神経症、湿疹・皮膚炎に適すとされる。
  • 胃腸が弱く下痢しやすい人では胃部不快感、下痢等の副作用が現れやすい等、不向きとされる。
  • まれに重篤な副作用として、肝機能障害を生じることが知られている。

加味逍遙散

  • 体力中等度以下で、のぼせ感があり、肩がこり、疲れやすく、精神不安やいらだち等の精神神経症状、ときに便秘の傾向のあるものの冷え症、虚弱体質、月経不順、月経困難、更年期障害、血の道症、不眠症に適すとされる。
  • 胃腸の弱い人では悪心(吐きけ)、嘔吐、胃部不快感、下痢等の副作用が現れやすい等、不向きとされる。
  • まれに重篤な副作用として、肝機能障害、腸間膜静脈硬化症を生じることが知られている。
  • 構成生薬としてカンゾウを含む。

桂枝茯苓丸

  • 比較的体力があり、ときに下腹部痛、肩こり、頭重、めまい、のぼせて足冷えなどを訴えるものの、月経不順、月経異常、月経痛、更年期障害、血の道症、肩こり、めまい、頭重、打ち身(打撲症)、しもやけ、しみ、湿疹・皮膚炎、にきびに適すとされる。
  • 体の虚弱な人(体力の衰えている人、体の弱い人)では不向きとされる。
  • まれに重篤な副作用として、肝機能障害を生じることが知られている。

五積散

  • 体力中等度またはやや虚弱で、冷えがあるものの胃腸炎、腰痛、神経痛、関節痛、月経痛、頭痛、更年期障害、感冒に適すとされる。
  • 体の虚弱な人(体力の衰えている人、体の弱い人)、胃腸の弱い人、発汗傾向の著しい人では、不向きとされる。
  • 構成生薬としてカンゾウ、マオウを含む。

柴胡桂枝乾姜湯

  • 体力中等度以下で、冷え症、貧血気味、神経過敏で、動悸、息切れ、ときにねあせ、頭部の発汗、口の渇きがあるものの更年期障害、血の道症、不眠症、神経症、動悸、息切れ、かぜの後期の症状、気管支炎に適すとされる。
  • まれに重篤な副作用として、間質性肺炎、肝機能障害を生じることが知られている。
  • 構成生薬としてカンゾウを含む。

四物湯

  • 体力虚弱で、冷え症で皮膚が乾燥、色つやの悪い体質で胃腸障害のないものの月経不順、月経異常、更年期障害、血の道症、冷え症、しもやけ、しみ、貧血、産後あるいは流産後の疲労回復に適すとされる。
  • 体の虚弱な人(体力の衰えている人、体の弱い人)、胃腸の弱い人、下痢しやすい人では、胃部不快感、腹痛、下痢等の副作用が現れやすい等、不向きとされる。

桃核承気湯

  • 体力中等度以上で、のぼせて便秘しがちなものの月経不順、月経困難症、月経痛、月経時や産後の精神不安、腰痛、便秘、高血圧の随伴症状(頭痛、めまい、肩こり)、痔疾、打撲症に適すとされる。
  • 構成生薬としてカンゾウ、ダイオウを含む。ダイオウを含有する医薬品については、妊婦または妊娠していると思われる女性、授乳婦における使用に関して留意する。

当帰芍薬散

  • 体力虚弱で、冷え症で貧血の傾向があり疲労しやすく、ときに下腹部痛、頭重、めまい、肩こり、耳鳴り、動悸などを訴えるものの月経不順、月経異常、月経痛、更年期障害、産前産後あるいは流産による障害(貧血、疲労倦怠、めまい、むくみ)、めまい・立ちくらみ、頭重、肩こり、腰痛、足腰の冷え症、しもやけ、むくみ、しみ、耳鳴りに適すとされる。
  • 胃腸の弱い人では、胃部不快感等の副作用が現れやすい等、不向きとされる。
  • 体の虚弱な人(体力の衰えている人、体の弱い人)、胃腸が弱く下痢しやすい人では、激しい腹痛を伴う下痢等の副作用が現れやすい等、不向きとされる。

6. 相互作用、受診勧奨

① 相互作用

注意すべき医薬品

内服で用いられる婦人薬では、通常、複数の生薬成分が配合されている場合が多く、他の婦人薬、生薬成分を含有する医薬品(鎮静薬、胃腸薬、内用痔疾用薬、滋養強壮保健薬、漢方処方製剤等)が併用された場合、同じ生薬成分または同種の作用を示す生薬成分が重複摂取となり、効き目が強すぎたり、副作用が起こりやすくなるおそれがあります。

一般の生活者においては、「痔の薬と更年期障害の薬等は影響し合わない」との誤った認識がなされることも考えられるので、医薬品の販売等に従事する専門家において適宜注意を促していくことが重要です。

医師の治療を受けている人

何らかの疾患(婦人病に限らない。)のため医師の治療を受けている場合には、婦人薬の使用が治療中の疾患に悪影響を及ぼすことがあり、また、動悸や息切れ、めまい、のぼせ等の症状が、治療中の疾患に起因する可能性や、処方された薬剤の副作用である可能性も考えられます。

医師の治療を受けている人では、婦人薬を使用する前に、その適否につき、治療を行っている医師または処方薬の調剤を行った薬剤師に相談がなされるべきです。

② 受診勧奨

内服で用いられる婦人薬は、比較的作用が穏やかで、ある程度長期間使用することによって効果が得られるとされます。

効果の現れ方は、症状や使用する人の体質、体の状態等により異なりますが、効果がみられないのに漫然と使用を継続することは適当ではありません。1ヶ月位使用して症状の改善がみられず、日常生活に支障を来すようであれば、医療機関を受診するなどの対応が必要です。

更年期は様々な病気が起こりやすい年齢でもあり、そのような原因が見出された場合には、その治療が優先される必要があります。医薬品の販売等に従事する専門家においては、購入者等に対して、一般用医薬品の使用による対処は一時的なものに止め、症状が継続するようであれば医療機関を受診するよう促していくことが重要です。

(a) 月経に関するもの

月経痛について、年月の経過に伴って次第に増悪していくような場合や大量の出血を伴う場合には、子宮内膜症などの病気の可能性があります。

月経不順については、卵巣機能の不全による場合もありますが、過度のストレスや、不適切なダイエット等による栄養摂取の偏りによって起こることもあり、月経前症候群を悪化させる要因ともなります。

(b) おりものに関するもの

おりものは女性の生殖器からの分泌物で、卵巣が働いている間は、程度の差はあるものの、ほとんどの女性にみられます。おりものの量が急に増えたり、膿のようなおりもの、血液が混じったおりものが生じたような場合には、膣や子宮に炎症や感染症を起こしている可能性があります。

特に、月経以外の不規則な出血(不正出血)がある場合には、速やかに医療機関を受診して専門医の診療を受けるなどの対応が必要です。

(c) 不定愁訴に関するもの

頭痛やうつ状態、動悸・息切れ等の更年期障害の不定愁訴とされる症状の背景に、原因となる病気が存在する可能性もあります。

  • うつ状態については、うつ病等が背景に隠れている場合もあります。
  • 動悸・息切れが心疾患による症状のおそれもあります。
  • のぼせやほてり等の症状については、高血圧や心臓、甲状腺の病気でも起こることがあります。

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