皮膚に用いる薬3

2026年7月29日

1. 肌の角質化、かさつき等を改善する配合成分

1-1. 角質軟化成分

うおのめ(鶏眼)・たこ(胼胝) 皮膚の一部に機械的刺激や圧迫が繰り返し加わったことにより、角質層が部分的に厚くなったもの。

  • うおのめ:角質の芯が真皮にくい込んでいるため、圧迫されると痛みを感じる
  • たこ:角質層の一部が単純に肥厚したもので芯がなく、通常、痛みは伴わない

いぼ(疣贅) 表皮が隆起した小型の良性の腫瘍で、ウイルス性のいぼと老人性のいぼに大別される。足の裏にできた場合、たこと間違えられやすいので注意が必要。なお、ウイルス性のいぼは、1〜2年で自然寛解することが多いとされる。

① サリチル酸

  • 角質成分を溶解することにより角質軟化作用を示す
  • 抗菌、抗真菌、抗炎症作用も期待され、にきび用薬等に配合されている場合もある
  • 頭皮の落屑(ふけ)を抑える効果を期待して、毛髪用薬に配合されている場合もある

② イオウ

  • 皮膚の角質層を構成するケラチンを変質させることにより、角質軟化作用を示す
  • 抗菌、抗真菌作用も期待され、にきび用薬等に配合されている場合もある

③ 医薬部外品

角質軟化薬のうち、配合成分やその濃度等があらかじめ定められた範囲内である製品については、医薬部外品(うおのめ・たこ用剤)として製造販売されているが、いぼに用いる製品については医薬品としてのみ認められている

ただし、いぼの原因となるウイルスに対する抑制作用はなく、いぼが広範囲にわたって生じたり、外陰部や肛門周囲に生じたような場合には、医師の診療を受けるなどの対応が必要。

1-2. 保湿成分

皮膚の乾燥は、以下の原因により角質層の水分保持量が低下することで生じる。

  • 角質層の細胞間脂質や、角質層中に元来存在するアミノ酸、尿素、乳酸等の保湿因子の減少
  • 皮脂の分泌低下

角質層の水分保持量を高め、皮膚の乾燥を改善することを目的として、以下の成分が用いられる。

  • グリセリン
  • 尿素
  • 白色ワセリン
  • オリブ油
  • ヘパリン類似物質 等

オリブ油:モクセイ科の Olea europaea Linné の果実を圧搾して得た脂肪油。


2. 抗菌作用を有する配合成分

2-1. にきび、吹き出物等の要因

にきび、吹き出物は、最も一般的に生じる化膿性皮膚疾患(皮膚に細菌が感染して化膿する皮膚疾患)。

発生要因

  1. ストレス、食生活の乱れ、睡眠不足など、様々な要因によって肌の新陳代謝機能が低下し、毛穴の皮脂や古い角質が溜まる
  2. 老廃物がつまった毛穴の中で皮膚常在菌であるにきび桿菌(アクネ菌)が繁殖する
  3. にきび桿菌が皮脂を分解して生じる遊離脂肪酸によって周囲に炎症を生じ、さらに他の細菌の感染を誘発して膿疱や膿腫ができる
  4. 膿疱や膿腫がひどくなると色素沈着を起こして赤くしみが残ったり、クレーター状の瘢痕が残ったりする

2-2. にきび、吹き出物等の基礎的ケア

  • 洗顔等により皮膚を清浄に保つことが基本
  • 吹き出物を潰したり無理に膿を出そうとすると、炎症を悪化させて皮膚の傷を深くし、跡が残りやすくなる
  • ストレス等を取り除き、バランスの取れた食習慣、十分な睡眠等、規則正しい生活習慣を心がけることも、体質改善につながる
  • 油分の多い化粧品はにきびを悪化させることがあり、水性成分主体のものが望ましい

2-3. 毛嚢炎、とびひ

① 毛嚢炎

皮膚常在菌であるにきび桿菌(アクネ菌)でなく、黄色ブドウ球菌などの化膿菌が毛穴から侵入し、皮脂腺・汗腺で増殖して生じた吹き出物。にきびに比べて痛みや腫れが顕著。 → 顔面に生じたものを面疔という。

② とびひ(伝染性膿痂疹)

毛穴を介さずに、虫さされやあせも、掻き傷などから化膿菌が侵入したもの。水疱やかさぶた(痂皮)、ただれ(糜爛)を生じる。

  • 小児に発症することが多い
  • 水疱が破れて分泌液が付着すると、皮膚の他の部分や他人の皮膚に拡がることがある

2-4. 抗菌成分

成分の種類作用
サルファ剤(スルファジアジン、ホモスルファミン、スルフィソキサゾール等)細菌のDNA合成を阻害することにより抗菌作用を示す
バシトラシン細菌の細胞壁合成を阻害することにより抗菌作用を示す
フラジオマイシン硫酸塩 / クロラムフェニコールいずれも細菌のタンパク質合成を阻害することにより抗菌作用を示す

2-5. 受診勧奨

  • 患部が広範囲である場合、患部の湿潤やただれがひどい場合には、一般用医薬品での対処よりも医療機関の受診が必要
  • 化膿性皮膚疾患用薬を漫然と使用していると、皮膚常在菌が静菌化される一方で、連鎖球菌・黄色ブドウ球菌などの化膿菌は耐性を獲得するおそれがある
  • 通常は生体に備わる免疫機能により化膿菌は自然に排除される。5〜6日間使用しても症状の改善がみられない場合は、免疫機能の低下等の重大な疾患の可能性も考えられ、使用を中止して医師の診療を受ける等の対応が必要

3. 抗真菌作用を有する配合成分

3-1. みずむし・たむし等の要因

みずむし、たむし等は、皮膚糸状菌(白癬菌)という真菌類の一種が皮膚に寄生することによって起こる疾患(表在性真菌感染症)。スリッパやタオルなどを介して、他の保菌者やペットから感染することも多く、発生する部位によって呼び名が変わる。

皮膚糸状菌による病変の種類と概要

みずむし ほとんどの場合は足に生じるが、まれに手に生じることもある。病型により3つに分類される。

病型症状
趾間型指の間の鱗屑(皮が剥ける)、浸軟(ふやけて白くなる)、亀裂、ただれ(糜爛)を主症状とする
小水疱型足底に小さな水疱や鱗屑を生じ、ときに膿疱、ただれ(糜爛)が混じることもある
角質増殖型足底全体に瀰漫性紅斑と角質の増殖を生じる。感染巣は硬く、亀裂ができることがある。強い痒みはなく、みずむしとして自覚されていない場合もある

その他の皮膚糸状菌感染症

名称概要
ぜにたむし(体部白癬)輪状の小さな丸い病巣が胴や四肢に発生し、発赤と鱗屑、痒みを伴う
いんきんたむし(頑癬〈内股・尻・陰嚢付近の白癬〉)ぜにたむしと同様の病巣が内股にでき、尻や陰嚢付近に広がっていくもの
しらくも(頭部白癬)小児に多い。清浄に保てば自然治癒することが多いが、炎症が著しい場合には医師の診療が必要
爪白癬(爪に発生する白癬)爪内部に薬剤が浸透しにくいため難治性で、医療機関(皮膚科)における全身的な治療(内服抗真菌薬の処方)を必要とする場合が少なくない

3-2. みずむし等の基礎的なケア

  • 足(特に指の間)を毎日石けんで洗う等して清潔に保ち、通気性をよくしておくことが重要
  • 靴下は毎日履き替え、洗濯後は日光に当てて干す
  • 靴も通気性の良いものを選び、連日同じものを履くことは避ける
  • 様々な民間療法が存在するが、科学的根拠が見出されないものも多く、かえって症状を悪化させる場合がある

3-3. 剤形の選択と留意事項

① 剤形の選択

  • じゅくじゅくと湿潤している患部には、軟膏が適する
  • 液剤は有効成分の浸透性が高く、患部への刺激が強い。皮膚が厚く角質化している部分に適している

② 留意事項

  • 湿疹とみずむし等の初期症状は類似していることが多く、湿疹に抗真菌作用を有する成分を使用すると、かえって湿疹の悪化を招くことがある
  • 陰嚢に痒み・ただれ等の症状がある場合は、湿疹等の他の原因による場合が多い
  • 湿疹か皮膚糸状菌による皮膚感染かはっきりしない場合に、抗真菌成分が配合された医薬品を使用することは適当ではない

3-4. 抗真菌成分

強い刺激を生じたり症状が悪化する可能性があるため、膣、陰嚢、外陰部等、湿疹、湿潤、ただれ、亀裂や外傷のひどい患部、化膿している患部には使用を避ける必要がある。

患部が化膿している場合には、抗菌成分を含んだ外用剤を使用する等、化膿が治まってから使用することが望ましい。

抗真菌成分の種類と主な作用・副作用

イミダゾール系抗真菌成分 オキシコナゾール硝酸塩、ネチコナゾール塩酸塩、ビホナゾール、スルコナゾール硝酸塩、エコナゾール硝酸塩、クロトリマゾール、ミコナゾール硝酸塩、チオコナゾール等

  • 皮膚糸状菌の細胞膜を構成する成分の産生を妨げたり、細胞膜の透過性を変化させることにより、その増殖を抑える
  • 副作用としてかぶれ、腫れ、刺激感等が現れることがある
  • あるイミダゾール系成分が配合されたみずむし薬でかぶれたことがある人は、他のイミダゾール系成分が配合された製品も避けるべき

アモロルフィン塩酸塩、ブテナフィン塩酸塩、テルビナフィン塩酸塩

  • 皮膚糸状菌の細胞膜を構成する成分の産生を妨げることにより、その増殖を抑える

シクロピロクスオラミン

  • 皮膚糸状菌の細胞膜に作用して、その増殖・生存に必要な物質の輸送機能を妨げ、その増殖を抑える

ウンデシレン酸、ウンデシレン酸亜鉛

  • 患部を酸性にすることで、皮膚糸状菌の発育を抑える

ピロールニトリン

  • 菌の呼吸や代謝を妨げることにより、皮膚糸状菌の増殖を抑える
  • 単独での抗真菌作用は弱いため、他の抗真菌成分と組み合わせて配合される

その他

  • 抗真菌成分としてトルナフタート、エキサラミドが配合されている場合がある
  • 生薬成分として、モクキンピ(アオイ科のムクゲの幹皮を基原とする生薬)のエキスも皮膚糸状菌の増殖を抑える作用を期待して用いられる

3-5. 受診勧奨

  1. ぜにたむしやいんきんたむしで患部が広範囲に及ぶ場合は、自己治療の範囲を超えており、内服抗真菌薬の処方による全身的な治療が必要な場合もあるため、医療機関(皮膚科)を受診するなどの対応が必要
  2. みずむし・たむし用薬を2週間位使用しても症状が良くならない場合には、抗菌成分に耐性を生じている可能性や、皮膚糸状菌による皮膚感染でない可能性がある
  3. 配合成分によっては、痒み、落屑、ただれ、水疱など、みずむし・たむしの症状と判別しにくい副作用が現れるものもある。症状が改善しない場合には、他の薬に切り換えず、いったん使用を中止して医療機関(皮膚科)を受診するなどの対応が必要

4. 頭皮・毛根に作用する配合成分

4-1. 毛髪用薬とは

毛髪用薬は、脱毛の防止、育毛、ふけや痒みを抑えること等を目的として、頭皮に適用する医薬品。

  • 配合成分やその分量等にかんがみて人体に対する作用が緩和なものについては、**医薬部外品(育毛剤、養毛剤)**として製造販売されている
  • 「壮年性脱毛症」「円形脱毛症」「粃糠性脱毛症」「瀰漫性脱毛症」等の疾患名を掲げた効能・効果は、医薬品においてのみ認められている

4-2. カルプロニウム塩化物

① 作用

  • 末梢組織(適用局所)においてアセチルコリンに類似した作用(コリン作用)を示し、頭皮の血管を拡張させ、毛根への血行を促すことによる発毛効果を期待して用いられる
  • アセチルコリンと異なり、コリンエステラーゼによる分解を受けにくく、作用が持続するとされる

② 留意事項

  • 副作用として、コリン作用による局所または全身性の発汗、それに伴う寒気、震え、吐きけが現れることがある

4-3. エストラジオール安息香酸エステル

① 作用

  • 脱毛は男性ホルモンの働きが過剰であることも一因とされているため、女性ホルモンによる脱毛抑制効果を期待して配合される場合がある

② 留意事項

  • 毛髪用薬は頭皮における局所的な作用を目的とする医薬品だが、女性ホルモン成分については頭皮から吸収されて循環血流中に入る可能性を考慮し、妊婦または妊娠していると思われる女性では使用を避けるべき

4-4. 生薬成分

生薬名基原期待される作用
カシュウタデ科のツルドクダミの塊根頭皮における脂質代謝を高めて、余分な皮脂を取り除く
チクセツニンジンウコギ科のトチバニンジンの根茎(通例、湯通ししたもの)血行促進、抗炎症など
ヒノキチオールヒノキ科のタイワンヒノキ、ヒバ等から得られた精油成分抗菌、抗炎症など

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