消化器系1

2026年8月28日

1. 人体の構造と働き

ヒトの体は、細胞が集まって構成されています。関連する働きを持つ細胞が集まって組織を作り、複数の組織が組み合わさって一定の形態を持ち、特定の働きをする器官が形成されます。器官が互いに連絡して協働し、全体として一つの機能を持つ場合、それらを器官系といいます。


2. 内臓器官

内臓器官は、下表のように消化器系、呼吸器系、循環器系、泌尿器系に分かれます。

器官系構成する器官
消化器系口腔、咽頭、食道、胃、小腸、膵臓、胆嚢、肝臓、大腸、肛門
呼吸器系鼻腔、咽頭(消化管と気道の両方に属する)、喉頭、気管、気管支、肺
循環器系心臓、血管系(動脈/静脈/毛細血管)、血液、脾臓、リンパ系(リンパ液/リンパ管/リンパ節)
泌尿器系腎臓、副腎、膀胱・尿道

3. 消化器系

(1) 概要

消化器系は、飲食物を消化して生命を維持していくために必要な栄養分として吸収し、その残滓(残りかす)を体外に排出する器官系です。

消化器系に関わる器官

分類器官
消化管口腔、咽頭、食道、胃、小腸、大腸、肛門
消化腺唾液腺、肝臓、胆嚢、膵臓 など
  • 消化管は、口腔から肛門まで続く管で、平均的な成人で全長約9mです。
  • 飲食物はそのままの形で栄養分として利用できず、消化管で吸収される形に分解する必要があり、これを消化といいます。

(2) 消化

消化には、消化腺から分泌される消化液による化学的消化と、咀嚼(食物を噛み、口腔内で粉砕すること)や消化管の運動による機械的消化とがあります。

種類内容
化学的消化消化液に含まれる消化酵素の作用によって飲食物を分解する
機械的消化口腔における咀嚼や、消化管の運動などによって消化管の内容物を細かくして消化液と混和し、化学的消化を容易にする

●舌のイメージ


4. 口腔

① 概要

歯、歯周組織(歯肉、歯根膜、歯槽骨、セメント質)によって上下の顎の骨に固定されています。

② 仕組みと働き

  • 歯槽骨の中に埋没している歯の部分を歯根、歯頸(歯肉線のあたり)を境に口腔に露出する部分を歯冠といいます。
  • 歯冠の表面はエナメル質で覆われ、体で最も硬い部分です。
  • エナメル質の下には象牙質と呼ばれる硬い骨状の組織があり、神経や血管が通る歯髄を取り囲んでいます。
  • 歯の齲蝕が象牙質に達すると、神経が刺激されて、歯がしみたり痛みを感じるようになります。

【齲蝕】 口腔内の常在細菌が糖質から産生する酸で歯が脱灰されることによって起こる歯の欠損(むし歯)のこと。


5. 舌

① 概要

舌の表面には、舌乳頭という無数の小さな突起があり、味覚を感知する部位である味蕾が分布しています。

② 仕組みと働き

舌は味覚を感知するほか、咀嚼された飲食物を撹拌して唾液と混和させる働きがあります。


6. 唾液腺

① 概要

唾液腺は、唾液を分泌し、食物を湿潤させて噛み砕きやすくし、また、咀嚼物を滑らかにして嚥下を容易にします。

② 仕組みと働き

  • 唾液には、デンプンをデキストリンや麦芽糖に分解する消化酵素の**プチアリン(唾液アミラーゼ)**が含まれ、また、味覚の形成にも重要な役割を持ちます。
  • 唾液は、リゾチーム等の殺菌・抗菌物質を含んでおり、口腔粘膜の保護・洗浄、殺菌等の作用もあります。
  • また、唾液によって口腔内はpHがほぼ中性(pHの値7が中性)に保たれ、酸による歯の齲蝕を防ぎます。

【リゾチームの作用等】 リゾチームには細菌の細胞壁を分解する酵素作用のほか、消炎作用などもあり、生体防御因子として働きます。唾液以外に、鼻汁や涙液にも含まれています。


7. 咽頭・食道

(1) 咽頭

① 概要

咽頭は、口腔から食道に通じる食物路と、呼吸器の気道とが交わるところです。

② 仕組みと働き

飲食物を飲み込む運動(嚥下)が起きるときには、喉頭の入り口にある弁(喉頭蓋)が反射的に閉じることにより、飲食物が喉頭や気管に流入せずに食道へと送られます。

(2) 食道

① 概要

食道は喉もとから上腹部のみぞおち近くまで続く、直径1~2cmの管状の器官で、消化液の分泌腺はありません

② 仕組みと働き

  • 嚥下された飲食物は、重力によって胃に落ち込むのではなく、食道の運動によって胃に送られます。
  • 食道の上端と下端には括約筋があり、胃の内容物が食道や咽頭に逆流しないように防いでいます。胃液が食道に逆流すると、胸やけが起きます。

括約筋とは、管状器官を取り巻く輪状の筋肉のことです。

●咽頭食道のイメージ


8. 胃

(1) 概要

胃は、上腹部にある中空の臓器で、中身が空の状態では扁平に縮んでいますが、食道から内容物が送られてくると、その刺激に反応して胃壁の平滑筋が弛緩し、容積が拡がります。これを胃適応弛緩といいます。

(2) 仕組みと働き

① 胃酸と消化酵素

  • 胃の内壁は粘膜で覆われて多くのひだをなしています。
  • 粘膜の表面には無数の微細な孔があり、胃腺につながって**塩酸(胃酸)**のほか、ペプシノーゲン等を分泌しています。
  • ペプシノーゲンは胃酸によって、タンパク質を消化する酵素であるペプシンとなり、胃酸とともに胃液として働きます。タンパク質がペプシンによって半消化された状態をペプトンといいます。
  • また、胃酸は、胃内を強酸性に保って内容物が腐敗や発酵を起こさないようにする役目も果たしています。

② 胃粘液の働き

  • 胃液による消化作用から胃自体を保護するため、胃の粘膜表皮を覆う細胞から粘液が分泌されています。
  • 胃液分泌と粘液分泌のバランスが崩れると、胃液により胃の内壁が損傷を受けて胃痛等の症状を生じることがあります。
  • また、胃粘液に含まれる成分(内因子のこと)は、小腸におけるビタミンB12の吸収にも重要な役割を果たしています。

③ 胃内の滞留時間

  • 食道から送られてきた内容物は、胃の運動によって胃液と混和され、かゆ状となって小腸に送り出されるまで数時間、胃内に滞留します。
  • 滞留時間は、炭水化物主体の食品の場合には比較的短く、脂質分の多い食品の場合には比較的長くなります。

●胃のイメージ

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