消化器系2
小腸
1. 概要
小腸は、全長6〜7mの管状の臓器で、十二指腸、空腸、回腸の3部分に分かれます。
2. 仕組みと働き
① 十二指腸
(a) 仕組み
十二指腸は、胃から連なる約25cmのC字型に彎曲した部分で、彎曲部には膵臓からの膵管と胆嚢からの胆管の開口部があって、それぞれ膵液と胆汁を腸管内へ送り込んでいます。
(b) 働き
腸の内壁からは腸液が分泌されます。
十二指腸で分泌される腸液に含まれる成分(エンテロキナーゼのこと)の働きによって、膵液中のトリプシノーゲンがトリプシンになります。トリプシンは、胃で半消化されたタンパク質(ペプトン)をさらに細かく消化する酵素です。
トリプシノーゲンは、消化酵素の前駆体タンパクで、消化管内で活性体であるトリプシンに変換されます。
② 空腸・回腸
(a) 仕組み
小腸のうち十二指腸に続く部分の、概ね上部40%が空腸、残り約60%が回腸ですが、明確な境目はありません。
(b) 働き
空腸で分泌される腸液(粘液)に、腸管粘膜上の消化酵素エレプシン(半消化されたタンパク質をアミノ酸まで分解)、マルターゼやラクターゼ等(炭水化物をブドウ糖、ガラクトース、果糖といった単糖類まで分解)が加わり、消化液として働きます。
小腸の運動によって、内容物がそれらの消化液(膵液、胆汁、腸液)と混和されながら大腸へと送られ、その間に消化と栄養分の吸収が行われます。
小腸は栄養分の吸収に重要な器官であるため、内壁の表面積を大きくする構造を持ちます。
十二指腸の上部を除く小腸の内壁には輪状のひだがあり、その粘膜表面は絨毛(柔突起)に覆われてビロード状になっています。絨毛を構成する細胞の表面には、さらに微絨毛が密生して吸収効率を高めています。
(c) 小腸の消化酵素の作用
| 栄養素 | 分解の仕組み |
|---|---|
| 炭水化物 | 消化酵素の作用によって単糖類に分解されて吸収される。 |
| タンパク質 | 消化酵素の作用によってアミノ酸に分解されて吸収される。 |
| 脂質(トリグリセリド) | 消化酵素(リパーゼ)の作用によって分解を受けるが、小腸粘膜の上皮細胞で吸収されると脂質に再形成され、乳状脂粒となる。乳状脂粒は、リポタンパク質(脂質がタンパク質などの物質と結合した微粒子)の一種でカイロミクロンとも呼ばれる。なお、小腸粘膜の上皮細胞において脂質が吸収される際には、脂溶性ビタミンも一緒に取り込まれる。 |
●小腸・大腸のイメージ
膵臓
1. 概要
膵臓は、胃の後下部に位置する細長い臓器で、膵液を十二指腸へ分泌します。
膵液は弱アルカリ性で、胃で酸性となった内容物を中和するのに重要です。
2. 仕組みと働き
膵液は、タンパク質を分解する消化酵素(トリプシン)の前駆体であるトリプシノーゲンのほか、デンプンを分解するアミラーゼ(膵液アミラーゼ)、脂質を分解するリパーゼなど、多くの消化酵素を含んでいます。
すなわち、膵臓は、炭水化物、タンパク質、脂質のそれぞれを消化するすべての酵素の供給を担っています。
また、膵臓は、消化腺であるとともに、血糖値を調節するホルモン(インスリンおよびグルカゴン)等を血液中に分泌する内分泌腺でもあります。
●膵臓のイメージ
【消化酵素による物質の変化】イメージ
それぞれの物質は、消化酵素によって次のような物質へ変化します。
胆嚢・肝臓
1. 胆嚢
① 概要
胆嚢は、肝臓で産生された胆汁を濃縮して蓄える器官で、十二指腸に内容物が入ってくると収縮して腸管内に胆汁を送り込みます。
② 仕組みと働き
胆汁に含まれる胆汁酸塩(コール酸、デオキシコール酸等の塩類)は、脂質の消化を容易にし、また、脂溶性ビタミンの吸収を助けます。
腸内に放出された胆汁酸塩の大部分は、小腸で再吸収されて肝臓に戻されます。これを腸肝循環といいます。
胆汁には、古くなった赤血球や過剰のコレステロール等を排出する役割もあります。
胆汁に含まれるビリルビン(胆汁色素)は、赤血球中のヘモグロビンが分解されて生じた老廃物です。腸管内に排出されたビリルビンは、腸管内に生息する常在細菌(腸内細菌)によって代謝されて糞便を茶褐色にする色素となります。
2. 肝臓
① 概要
肝臓は、大きい臓器であり、横隔膜の直下に位置します。
② 仕組みと働き
胆汁を産生するほかに、主な働きとして次のようなものがあります。
(a) 栄養分の代謝・貯蔵
小腸で吸収されたブドウ糖は、血液によって肝臓に運ばれてグリコーゲンとして蓄えられます。
グリコーゲンは、ブドウ糖が重合してできた高分子多糖で、血糖値が下がったときなど、必要に応じてブドウ糖に分解されて血液中に放出されます。皮下組織等に蓄えられた脂質も、一度肝臓に運ばれてからエネルギー源として利用可能な形(ケトン体のこと)に代謝されます。
また、肝臓は、脂溶性ビタミンであるビタミンA、D等のほか、ビタミンB6やB12等の水溶性ビタミンの貯蔵臓器でもあります。
【グリコーゲンの生成と役割】
ブドウ糖からのグリコーゲン生成は、骨格筋の組織でも行われ、骨格筋もその収縮のエネルギー源としてグリコーゲンを蓄えています。グリコーゲンはエネルギー源としての貯蔵効率が脂質に比べて低いため、グリコーゲンとして蓄えられたのち、消費されない余剰分は徐々に脂質へと転換されます。
(b) 生体に有害な物質の無毒化・代謝
消化管等から吸収された、または体内で生成した、滞留すると生体に有害な物質を、肝細胞内の酵素系の働きで代謝して無毒化し、または体外に排出されやすい形にします。ただし、まれに物質によっては、代謝を受けて生体に有害な(発がん性等)物質となるものもあります。
医薬品として摂取された物質の多くも、肝臓において代謝されます。
アルコールの場合、胃や小腸で吸収されますが、肝臓へと運ばれて一度アセトアルデヒドに代謝されたのち、さらに代謝されて酢酸となります。なお、二日酔いの症状は、体内での中間代謝物であるアセトアルデヒドの毒性によるものと考えられています。
アミノ酸が分解された場合等に生成するアンモニアは、体内に滞留すると有害な物質であり、肝臓において尿素へと代謝されます。
ヘモグロビンが分解して生じたビリルビンも肝臓で代謝されますが、肝機能障害や胆管閉塞などを起こすとビリルビンが循環血液中に滞留して、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる症状)を生じます。
(c) 生体物質の産生
- ① 胆汁酸やホルモンなどの生合成の出発物質となるコレステロール
- ② フィブリノゲン等の血液凝固因子
- ③ アルブミン等、生命維持に必須な役割を果たす種々の生体物質(生物の体内に存在する化学物質の総称)
は、肝臓において産生されます。
また、肝臓では、必須アミノ酸以外のアミノ酸を生合成することができます。必須アミノ酸とは、体内で作られないため、食品などから摂取する必要があるアミノ酸のことです。ヒトの場合、トリプトファン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、ヒスチジンの9種が必須アミノ酸とされています。
● 胆嚢・肝臓のイメージ
大腸
1. 概要
大腸は、盲腸、虫垂、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸からなる管状の臓器で、内壁粘膜に絨毛がない点で小腸と区別されます。
2. 仕組みと働き
腸の内容物は、大腸に入ってきたときはかゆ状ですが、大腸の運動によって腸管内を通過するに従って水分とナトリウム、カリウム、リン酸等の電解質の吸収が行われ、固形状の糞便が形成されます。
大腸では消化はほとんど行われません。大腸の粘膜からは粘液が分泌されます。
粘液(大腸液)は、便塊を粘膜上皮と分離しやすく滑らかにします。
① 大腸内の腸内細菌の働き
大腸内には腸内細菌が多く存在し、腸管内の**食物繊維(難消化性多糖類)**を発酵分解します。
大腸の粘膜上皮細胞は、腸内細菌が食物繊維を分解して生じる栄養分を、その活動に利用しており、大腸が正常に働くには、腸内細菌の存在が重要です。
また、大腸の腸内細菌は、血液凝固や骨へのカルシウム定着に必要なビタミンK等の物質も産生しています。
なお、腸内細菌による発酵で、糞便の臭気の元となる物質やメタン、二酸化炭素等のガスが生成されます。
② 糞便
通常、糞便の成分の大半は水分で、そのほか、はがれ落ちた**腸壁上皮細胞の残骸(15〜20%)や腸内細菌の死骸(10〜15%)**が含まれ、**食物の残滓は約5%**に過ぎません。食事を摂らなくても排泄される糞便は、水分のほか、腸壁上皮細胞の残骸や腸内細菌の死骸が排出されたものです。
直腸は、大腸の終末の部分で、肛門へと続いています。
通常、糞便は下行結腸、S状結腸に滞留し、直腸は空になっています。
S状結腸に溜まった糞便が直腸へ送られてくると、その刺激に反応して便意が起こります。
●大腸のイメージ
肛門
1. 概要
肛門は、直腸粘膜が皮膚へと連なる体外への開口部です。
直腸粘膜と皮膚の境目になる部分には、歯状線と呼ばれるギザギザの線があります。
2. 仕組みと働き
肛門周囲は、肛門括約筋で囲まれており、排便を意識的に調節することができます。
また、肛門周囲には、静脈が細かい網目状に通っていて、肛門周囲の組織がうっ血すると痔の原因となります。
肛門括約筋には、内肛門括約筋、外肛門括約筋がありますが、排便を意識的に調整できるのは随意筋である外肛門括約筋です。
● 肛門のイメージ