薬の働く仕組み2
薬の体内での働き
1. 体内での働き
循環血液中に移行した有効成分は、血流によって全身の組織や器官へ運ばれて作用します。多くの場合、標的となる細胞に存在する受容体、酵素、トランスポーターなどのタンパク質と結合し、その機能を変化させることで薬効や副作用を現します。
2. 医薬品の血中濃度と薬効
医薬品が効果(薬効)をもたらすためには、医薬品の有効成分がその作用の対象である器官や組織の細胞外液中あるいは細胞内液(細胞質)中に、一定以上の濃度で分布する必要があります。
これらの濃度に強く関連するのが血中濃度(血液中の医薬品成分の濃度)です。器官や組織中に存在する医薬品成分の量を直接調べることは容易でないため、通常、血中濃度を目安としています。
医薬品が摂取された後、成分が吸収されるにつれて、その血中濃度は上昇し、ある**最小有効濃度(閾値)**を超えたときに生体の反応としての薬効がもたらされます。
血中濃度はある時点で**ピーク(最高血中濃度)**に達した後、代謝・排泄の速度が吸収・分布の速度を上回ると徐々に低下していきます。やがて、血中濃度が最小有効濃度を下回ると、薬効は消失します。
一度に大量の医薬品を摂取したり、十分な間隔をあけずに追加摂取したりして血中濃度を高くしても、ある濃度以上になるとより強い薬効は得られなくなり、むしろ**有害な作用(副作用や毒性)**が現れやすくなります。
全身作用を目的とする医薬品の多くは、使用後の一定期間、その有効成分の血中濃度が、最小有効濃度と毒性が現れる濃度域(危険域、中毒域ともいう。)の間の範囲(有効域、治療域ともいう。)に維持されるよう、使用量や使用間隔が定められています。また、年齢や体格等による個人差も考慮されています。
3. 剤形ごとの違い、適切な使用方法
医薬品がどのような形状で使用されるかについては、その医薬品の使用目的と有効成分の性状に合わせて決められます。そうして決められた医薬品の形状のことを剤形といいます。
① 全身循環を経て薬効をもたらす剤形
有効成分を消化管から吸収させ、全身に分布させることにより薬効をもたらす剤形としては、次のようなものがあります。
- 錠剤(内服)
- 口腔用錠剤
- 散剤
- 顆粒剤
- 経口液剤
- シロップ剤
- カプセル剤
これらの剤形の違いは、使用する人の利便性を高めたり、有効成分が溶け出す部位を限定したり、副作用を軽減したりすることに関連します。そのため、医薬品を使用する人の年齢や身体の状態等の違いに応じて、最適な剤形が選択されるよう、それぞれの剤形の特徴を理解する必要があります。
② 患部に適用する剤形
有効成分を患部局所に直接適用する剤形として、次のようなものがあります。
- 軟膏剤
- クリーム剤
- 外用液剤
- 貼付剤
- スプレー剤
これらの多くは、有効成分が同じであっても、配合されている添加剤等に違いがあり、剤形によっては症状を悪化させてしまう場合もあるため、患部の状態に応じて適切な剤形が選択されなければなりません。
4. 医薬品の剤形による一般的な特徴
① 錠剤(内服)
特徴
錠剤(内服)は、内服用医薬品の剤形として最も広く用いられています。
一定の形状に成型された固形製剤であるため、飛散させずに服用できる点や、有効成分の苦味や刺激性を口中で感じることなく服用できる点が主な特徴です。
一方、固形製剤で一定の大きさがあるため、高齢者、乳幼児等の場合、飲み込みにくいことがあります。
服用方法
錠剤(内服)を服用するときは、適切な量の水(またはぬるま湯)とともに飲み込まなければならないとされています。
水が少なかったり、水なしで服用したりすると、錠剤が喉や食道に張り付いてしまうことがあり、薬効が現れないのみならず、喉や食道の粘膜を傷めるおそれがあります。
注意事項
錠剤(内服)は、胃や腸で崩壊し、有効成分が溶出して薬効をもたらす剤形であるため、例外的な場合を除いて、口中で噛み砕いて服用してはなりません。
特に腸内での溶解を目的として錠剤表面をコーティングしているもの(腸溶錠)の場合等は噛み砕いて服用してはなりません。
② 口腔用錠剤
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| 口腔内崩壊錠 | 口の中で唾液で速やかに溶ける工夫がなされているため、水なしで服用することができ、固形物を飲み込むことが困難な高齢者や乳幼児、水分摂取が制限されている場合でも、口の中で溶かした後に、唾液と一緒に容易に飲み込むことができる。 |
| チュアブル錠 | 口の中で舐めたり噛み砕いたりして服用する剤形。水なしでも服用できる。 |
| トローチ、ドロップ | 薬効を期待する部位が口の中や喉であるものが多く、飲み込まずに口の中で舐めて、徐々に溶かして使用する。 |
③ 散剤、顆粒剤
特徴
錠剤のように固形状に固めずに、粉末状にしたものを散剤、小さな粒状にしたものを顆粒剤といいます。
錠剤を飲み込むことが困難な人にとっては錠剤よりも服用しやすいですが、口の中に広がって歯(入れ歯を含む。)の間に挟まったり、また、苦味や渋味を強く感じる場合があります。
服用方法・注意事項
散剤等を服用するときは、飛散を防ぐため、あらかじめ少量の水(またはぬるま湯)を口に含んだ上で服用したり、何回かに分けて少しずつ服用するなどの工夫をするとよいとされています。口中に散剤等が残ったときには、さらに水などを口に含み、口腔内をすすぐようにして飲み込みます。
顆粒剤は、粒の表面がコーティングされているものもあるため、噛み砕かずに水などで飲み込みます。
④ 経口液剤、シロップ剤
特徴
経口液剤は、液状の剤形のうち内服用のものです。
固形製剤よりも飲み込みやすく、また、既に有効成分が液中に溶けたり、分散したりしているため、服用した後、比較的速やかに消化管から吸収される点が特徴です。
服用方法・注意事項など
有効成分の血中濃度が上昇しやすいため、習慣性や依存性がある成分が配合されているものの場合、不適正な使用がなされることがあります。
経口液剤では、苦味やにおいが強く感じられることがあるため、小児に用いられる医薬品の場合、白糖等の糖類を混ぜたシロップ剤とする場合が多くあります。
⑤ カプセル剤
特徴・服用方法
カプセル剤は、カプセル内に散剤や顆粒剤、液剤などを充填した剤形で、内服用の医薬品として広く用いられています。固形の製剤ですので、その特徴・服用方法は錠剤とほぼ同様です。
注意事項
カプセルの原材料として広く用いられているゼラチンは、ブタなどのタンパク質を主成分としているため、ゼラチンに対してアレルギーを持つ人では使用を避けるなどの注意が必要です。
また、水なしで服用するとゼラチンが喉や食道に貼り付くことがあるため、必ず適切な量の水(またはぬるま湯)とともに服用します。
⑥ 外用局所に適用する剤形
軟膏剤、クリーム剤、外用液剤、貼付剤、スプレー剤等があり、それぞれの剤形の特性が薬効や副作用に影響します。
(a) 軟膏剤・クリーム剤
基剤の違いにより、軟膏剤とクリーム剤に大別されます。有効成分が適用部位に留まりやすいことが特徴です。
一般的には、適用する部位の状態に応じて、次のように使い分けがなされます。
| 剤形 | 特徴 |
|---|---|
| 軟膏剤(油性の基剤) | 適用部位を水から遮断したい場合等に用いられる。患部が乾燥していてもじゅくじゅくと浸潤していても使用できる。皮膚への刺激が弱い。 |
| クリーム剤 | 油性基剤に水分を加えたもの。患部を水で洗い流したい場合等に用いられる。皮膚への刺激が強いため、傷等への使用は避ける。 |
(b) 外用液剤
外用の液状製剤です。軟膏剤やクリーム剤に比べて、患部が乾きやすいという特徴がある一方、適用した部位に直接的な刺激感等を与える場合があります。
(c) 貼付剤
皮膚に貼り付けて用いる剤形であり、テープ剤およびパップ剤があります。
適用した部位に有効成分が一定時間留まるため、薬効の持続が期待できる反面、適用部位にかぶれなどを起こす場合もあります。
(d) スプレー剤
有効成分(薬液)を霧状にする等して局所に吹き付ける剤形です。
手指等では塗りにくい部位や広範囲に適用する場合に適しています。