医薬品の効き目や安全性に影響を与える要因1
副作用
世界保健機関(WHO)の定義によれば、医薬品の副作用とは、「疾病の予防、診断、治療のため、または身体の機能を正常化するために、人に通常用いられる量で発現する医薬品の有害かつ意図しない反応」とされています。
医薬品の副作用は、発生原因の観点から、「薬理作用による副作用」と「アレルギー」に大別することができます。
1. 薬理作用による副作用
医薬品の有効成分である薬物が生体の生理機能に影響を与えることを薬理作用といいます。
通常、薬物は複数の薬理作用を併せ持つため、医薬品を使用した場合には、期待される有益な反応(主作用)以外の反応が現れることがあります。
主作用以外の反応であっても、特段の不都合を生じないものであれば、通常、副作用として扱われることはありませんが、好ましくないものについては一般に副作用とされます。
複数の疾病を有する人の場合、ある疾病のために使用された医薬品の作用が、その疾病に対して薬効をもたらす一方、別の疾病に対しては症状を悪化させたり、治療を妨げたりすることもあります。
2. アレルギー(過敏反応)
① 概要
免疫は、本来、細菌やウイルスなどが人体に取り込まれたとき、人体を防御するために生じる反応ですが、免疫機構が過敏に反応して、好ましくない症状が引き起こされることがあります。
② アレルギー症状
通常の免疫反応の場合、炎症やそれに伴って発生する痛み、発熱等は、人体にとって有害なものを体内から排除するための必要な過程ですが、アレルギーにおいては過剰に組織に刺激を与える場合も多く、引き起こされた炎症自体が過度に苦痛を与えることになります。
このように、アレルギーにより体の各部位に生じる炎症等の反応をアレルギー症状といい、流涙や眼の痒み等の結膜炎症状、鼻汁やくしゃみ等の鼻炎症状、蕁麻疹や湿疹、かぶれ等の皮膚症状、血管性浮腫のようなやや広い範囲にわたる腫れ等が生じることが多いとされています。
③ アレルギーを引き起こす原因
アレルギーは、一般的にあらゆる物質によって起こり得るものであるため、医薬品の薬理作用等とは関係なく起こり得るものであり、また、内服薬だけでなく外用薬等でも引き起こされることがあります。
さらに、医薬品の有効成分だけでなく、基本的に薬理作用がない添加物も、アレルギーを引き起こす原因物質(アレルゲン)となり得ます。アレルゲンとなり得る添加物としては、黄色4号(タートラジン)、カゼイン、亜硫酸塩(亜硫酸ナトリウム、ピロ硫酸カリウム等)等が知られています。
普段は医薬品にアレルギーを起こしたことがない人でも、病気等に対する抵抗力が低下している状態などの場合には、医薬品がアレルゲンになることがあり、思わぬアレルギーを生じることがあります。
④ 体質的・遺伝的要素
アレルギーには体質的・遺伝的な要素もあり、アレルギーを起こしやすい体質の人や、近い親族にアレルギー体質の人がいる場合には、注意が必要です。
⑤ アレルギーへの対処
医薬品を使用してアレルギーを起こしたことがある人は、その原因となった医薬品の使用を避ける必要があります。
また、医薬品の中には、鶏卵や牛乳等を原材料として作られているものがあるため、それらに対するアレルギーがある人では使用を避けなければならない場合もあります。
3. 副作用の初期段階での認識の必要性
副作用は、眠気や口渇等の比較的よくみられるものから、日常生活に支障を来す程度の健康被害を生じる重大なものまで様々ですが、どのような副作用であれ、起きないことが望ましいはずです。
そのため、副作用が起きる仕組みや起こしやすい要因の認識、また、それらに影響を与える体質や体調等をあらかじめ把握し、適切な医薬品の選択、適正な使用が図られることが重要です。
しかし、医薬品が人体に及ぼす作用は、すべてが解明されているわけではないため、十分注意して適正に使用された場合であっても副作用が生じることがあります。
そのため、医薬品を使用する人が副作用をその初期段階で認識することにより、副作用の種類に応じて速やかに適切に処置し、または対応し、重篤化の回避が図られることが重要です。
4. 一般用医薬品における副作用への対応
一般用医薬品は、軽度な疾病に伴う症状の改善等を図るためのものであり、一般の生活者が自らの判断で使用するものです。通常は、その使用を中断することによる不利益よりも、重大な副作用を回避することが優先されます。副作用の兆候が現れたときには基本的に使用を中止することとされており、必要に応じて医師、薬剤師などに相談がなされるべきです。
なお、医療機関・薬局で交付された薬剤(医療用医薬品)の場合は、一般の生活者が自己判断で使用を中止すると、副作用による不都合よりも重大な治療上の問題を生じることがあるため、診療を行った医師(または歯科医師)、調剤した薬剤師に確認する必要があります。
5. 医薬品の販売等に従事する専門家の対応
一般用医薬品の販売等に従事する専門家においては、購入者等から副作用の発生の経過を十分に聴いて、その後の適切な医薬品の選択に資する情報提供を行うほか、副作用の状況次第では、購入者等に対して、速やかに適切な医療機関を受診するよう勧奨する必要があります。
また、副作用は、容易に異変を自覚できるものばかりでなく、血液や内臓機能への影響等のように、明確な自覚症状として現れないこともあるので、継続して使用する場合には、特段の異常が感じられなくても医療機関を受診するよう、医薬品の販売等に従事する専門家から促していくことも重要です。
不適正な使用と副作用
医薬品は、保健衛生上のリスクを伴うものであり、疾病の種類や症状等に応じて適切な医薬品が選択され、適正な使用がなされなければ、症状の悪化、副作用や事故等の好ましくない結果を招く危険性が高くなります。
一般用医薬品の場合、その使用を判断する主体が一般の生活者であることから、その適正な使用を図っていく上で、販売時における専門家の関与が特に重要です。
医薬品の不適正な使用は、概ね以下の2つに大別することができます。
- 使用する人の誤解や認識不足に起因する不適正な使用
- 医薬品を本来の目的以外の意図で使用する不適正な使用
1. 使用する人の誤解や認識不足に起因する不適正な使用
① 概要
一般用医薬品は、購入者等の誤解や認識不足のために適正に使用されないことがあります。
例えば、選択された医薬品が適切ではなく、症状が改善しないまま使用し続けている場合や、症状の原因となっている疾病の根本的な治療や生活習慣の改善等がなされないまま、手軽に入手できる一般用医薬品を使用して症状を一時的に緩和するだけの対処を漫然と続けているような場合には、いたずらに副作用を招く危険性が増すばかりでなく、適切な治療の機会を失うことにもつながりやすくなります。
② 具体例1
「薬はよく効けばよい」「多く飲めば早く効く」等と短絡的に考えて定められた用量を超える量を服用したり、小児への使用を避けるべき医薬品を「子どもだから大人用のものを半分にして飲ませればよい」として服用させるなど、安易に医薬品を使用するような場合には、特に副作用につながる危険性が高くなります。
③ 具体例2
人体に直接使用されない医薬品であっても、使用する人の誤解や認識不足によって使い方や判断を誤り、副作用につながることがあります。
また、使用量は指示どおりであっても、便秘や不眠、頭痛など不快な症状が続くために、**長期にわたり一般用医薬品をほぼ毎日連用(常習)**する事例もみられます。
便秘薬や総合感冒薬、解熱鎮痛薬などはその時の不快な症状を抑えるための医薬品であり、長期連用すれば、その症状を抑えていることで重篤な疾患の発見が遅れたり、医薬品を代謝する器官(例:肝臓、腎臓)を傷めたりすることもあります。このほか、長期連用により精神的な依存が起こり、使用量が増え、購入するための経済的な負担も大きくなる例もみられます。
④ 医薬品の販売等に従事する専門家の対応
このような誤解や認識不足による不適正な使用や、それに起因する副作用の発生の防止を図るには、医薬品の販売等に従事する専門家が、購入者等に対して、正しい情報を適切に伝えていくことが重要となります。
購入者等が医薬品を使用する前に添付文書や製品表示を必ず読むなどの適切な行動がとられ、その適正な使用が図られるよう、購入者等の理解力や医薬品を使用する状況等に即して説明がなされるべきです。
2. 医薬品を本来の目的以外の意図で使用する不適正な使用
① 概要
医薬品は、その目的とする効果に対して副作用が生じる危険性が最小限となるよう、使用する量や使い方が定められています。
医薬品を本来の目的以外の意図で、定められた用量を意図的に超えて服用したり、みだりに他の医薬品や酒類等と一緒に摂取するといった乱用がなされると、過量摂取による急性中毒等を生じる危険性が高くなり、また、乱用の繰り返しによって慢性的な臓器障害等を生じるおそれもあります。
② 薬物依存
依存性とは、物質が有する依存を形成する性質のことで、依存形成性ともいいます。依存性が「強い・弱い」というのは、依存をより生じやすいかどうかを表したものです。
習慣性とは、明確な依存を形成するほどではないものの、習慣的に使用することにつながりやすい性質をいいます。
一般用医薬品にも習慣性・依存性がある成分を含んでいるものがあり、そうした医薬品がしばしば乱用されることが知られています。特に、青少年は、薬物乱用の危険性に関する認識や理解が必ずしも十分でなく、好奇心から身近に入手できる薬物を興味本位で乱用することがあるので、注意が必要です。
適正な使用がなされる限りは安全かつ有効な医薬品であっても、乱用された場合には薬物依存を生じることがあり、一度、薬物依存が形成されると、そこから離脱することは容易ではありません。
【薬物依存】
ある薬物の精神的な作用を体験するために、その薬物を連続的、あるいは周期的に摂取することへの強迫(欲求)を常に伴っている行動等によって特徴づけられる精神的・身体的な状態をいいます。
③ 医薬品の販売等に従事する専門家の対応
医薬品の販売等に従事する専門家においては、必要以上の大量購入や頻回購入などを試みる不審な者には慎重に対処する必要があり、積極的に事情を尋ねる、状況によっては販売を差し控えるなどの対応が図られることが望まれます。