行政庁の監視指導
1. 薬事監視員
厚生労働大臣、都道府県知事、保健所を設置する市(以下「保健所設置市」という。)の市長および特別区の区長は、その職員のうちから薬事監視員を命じ、監視指導を行わせています。
薬局および医薬品の販売業に関する監視指導に関しては、基本的に当該薬局の開設許可、販売業の許可を所管する都道府県または保健所設置市もしくは特別区の薬事監視員が行っています。
2. 立入検査等
(1) 法令の遵守状況を確認するための立入検査(法第69条第2項)
都道府県知事等は、薬局開設者または医薬品の販売業者が、関係する法の規定またはそれに基づく命令を遵守しているかどうかを確かめるために必要があると認めるときは、その薬局開設者または医薬品の販売業者に対して必要な報告をさせ、または当該職員(薬事監視員)に、その薬局開設者または医薬品の販売業者が医薬品を業務上取り扱う場所に立ち入り、その構造設備もしくは帳簿書類等を検査させ、従業員その他の関係者に質問させることができます。
補足【都道府県知事等】 都道府県知事等とは、都道府県知事(薬局または店舗販売業にあっては、その薬局または店舗の所在地が保健所設置市または特別区の区域にある場合においては、市長または区長)のことをいいます。
(2) 無承認無許可医薬品等による危害を防止するための立入検査・収去(法第69条第6項)
都道府県知事等は、必要があると認めるときは、その薬局開設者または医薬品の販売業者に対して、必要な報告をさせ、または当該職員(薬事監視員)に、その薬局開設者または医薬品の販売業者が医薬品を業務上取り扱う場所に立ち入り、その構造設備もしくは帳簿書類等を検査させ、従業員その他の関係者に質問させ、無承認無許可医薬品、不良医薬品または不正表示医薬品等の疑いのある物を、試験のため必要な最少分量に限り、収去させることができます。
(3) 罰則規定
薬局開設者や医薬品の販売業者が、命ぜられた報告を怠ったり、虚偽の報告をした場合、薬事監視員による立入検査や収去を拒んだり、妨げたり、忌避した場合、また、薬剤師や登録販売者を含む従業員が、薬事監視員の質問に対して正当な理由なく答弁しなかったり、虚偽の答弁を行った場合には、**「50万円以下の罰金に処する」**こととされています。
3. 行政庁による処分
行政庁の監視指導の結果、厚生労働大臣、都道府県知事等が必要があると認めるときには、以下の処分を命じることができます。
| # | 処分の種類(根拠条文) | 内容 |
|---|---|---|
| ① | 構造設備の改善命令等(法第72条第4項) | 薬局開設者または医薬品の販売業者(配置販売業者を除く。)に対して、構造設備が基準に適合せず、またはその構造設備によって不良医薬品を生じるおそれがある場合に、構造設備の改善を命じ、または改善がなされるまでの間、当該施設の全部もしくは一部の使用を禁止することができる。 |
| ② | 業務体制の整備命令(法第72条の2) | 薬局開設者または医薬品の販売業者に対して、一般用医薬品の販売等を行うための業務体制が基準(体制省令)に適合しなくなった場合に、その業務体制の整備を命ずることができる。 |
| ③ | 法令遵守体制の改善措置命令(法第72条の2の2) | 薬局開設者または医薬品の販売業者に対して、法令の遵守を確保するため措置が不十分であると認める場合に、その改善に必要な措置を講ずべきことを命ずることができる。 |
| ④ | 措置の実施命令(法第72条の4第1項) | 薬事に関する法令に違反する行為があった場合において、保健衛生上の危害の発生または拡大を防止するため必要があると認めるときは、業務の運営の改善に必要な措置を採るべきことを命ずることができる。 |
| ⑤ | 条件違反の改善措置命令(法第72条の4第2項) | 許可の際に付された条件に違反する行為があったときは、その条件に対する違反を是正するために必要な措置を採るべきことを命ずることができる。 |
| ⑥ | 管理者の変更命令(法第73条) | 薬局の管理者または店舗管理者もしくは区域管理者について、法令等に違反する行為があったとき、または管理者として不適当であると認めるときは、その変更を命ずることができる。 |
| ⑦ | 違反行為をした配置員の業務停止命令(法第74条) | 配置販売業の配置員が、業務に関し法令等に違反する行為があったときは、配置販売業者に対して、期間を定めてその配置員による配置販売の業務の停止を命ずることができ、また、必要があるときは配置員本人に対しても業務の停止を命ずることができる。 |
罰則規定 ①または④〜⑦に違反した者については、**「1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」**こととされています。
(4) 許可の取消等(法第75条第1項)
都道府県知事等は、薬局開設者または医薬品の販売業者について、薬事に関する法令またはこれに基づく処分に違反する行為があったとき、薬局開設者または医薬品の販売業者が禁錮以上の刑に処せられるなど、その許可の基準として求めている事項に反する状態に該当するに至ったときは、その許可を取り消し、または期間を定めてその業務の全部もしくは一部の停止を命ずることができます。
この規定に基づく業務停止命令に違反した者については、**「2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」**こととされています。
(5) 緊急命令(法第69条の3)
厚生労働大臣は、医薬品による保健衛生上の危害の発生または拡大を防止するため必要があると認めるときは、薬局開設者または医薬品の販売業者に対して、医薬品の販売または授与を一時停止することその他保健衛生上の危害の発生または拡大を防止するための応急措置を採るべきことを命ずることができます。
この規定に基づく命令に違反した者については、**「3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」**こととされています。
(6) 廃棄・回収命令等
① 廃棄回収命令(法第70条第1項) 厚生労働大臣または都道府県知事等は、医薬品を業務上取り扱う者(薬局開設者、医薬品の販売業者を含む。)に対し、不正表示医薬品、不良医薬品、無承認無許可医薬品等について、廃棄、回収その他公衆衛生上の危険の発生を防止するに足りる措置を採るべきことを命ずることができます。
② 薬事監視員による廃棄・回収の執行(法第70条第2項) 厚生労働大臣、都道府県知事、保健所設置市の市長または特別区の区長は、①の命令を受けた者がその命令に従わないとき、または緊急の必要があるときは、その職員(薬事監視員)に、その不正表示医薬品等を廃棄させ、もしくは回収させ、またはその他の必要な処分をさせることができます。
③罰則規定 ①の命令に違反し、または②の廃棄その他の処分を拒み、妨げ、もしくは忌避した者については、**「3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」**こととされています。
4. 自主的な廃棄・回収
(1) 製造販売業者による自主的な廃棄・回収(法第68条の9第1項)
行政庁による命令がなくても、医薬品等の製造販売業者等が、その医薬品等の使用によって保健衛生上の危害が発生し、または拡大するおそれがあることを知ったときは、これを防止するために廃棄、回収、販売の停止、情報の提供その他必要な措置を講じなければなりません。
(2) 薬局開設者・医薬品の販売業者等による協力(法第68条の9第2項)
薬局開設者または医薬品の販売業者、薬剤師その他の医薬関係者は、医薬品等の製造販売業者等が行う必要な措置の実施に協力するよう努めなければなりません(努力義務)。
5. 苦情相談窓口
- 一般用医薬品の販売等について、薬局開設者や医薬品の販売業者が適切な業務運営を行っていない場合に、実際に不利益を被るのは、その購入者となる一般の生活者です。
- 薬事監視員を任命している行政庁の薬務主管課、保健所、薬事監視事務所等には、薬局や医薬品の販売業の販売広告、販売方法等の一般用医薬品の販売等に関して、生活者からの苦情や相談が寄せられています。
- その苦情等の内容から、薬事に関する法令への違反、不遵守につながる情報が見出された場合には、立入検査等によって事実関係を確認のうえ、問題とされた薬局開設者または医薬品の販売業者等に対して、必要な指導、処分等を行っています。また、そのような生活者からの苦情等は、(独)国民生活センター、各地区の消費生活センターまたは消費者団体等の民間団体にも寄せられています。それらの機関、団体等では、生活者へのアドバイスのほか、必要に応じて行政庁への通報や問題提起を行っています。
- 医薬品の販売関係の業界団体・職能団体においては、一般用医薬品の販売等に関する苦情を含めた様々な相談を購入者等から受けつける窓口を設置し、業界内における自主的なチェックと自浄的是正を図る取組みもなされています。
罰則のまとめ
| 違反行為 | 罰則 |
|---|---|
| 報告懈怠・虚偽報告、立入検査/収去の拒否・妨害・忌避、質問への不答弁・虚偽答弁 | 50万円以下の罰金 |
| 改善命令等(構造設備・業務体制・法令遵守体制・措置の実施・条件違反是正・管理者変更・配置員業務停止命令)違反 | 1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金、又は併科 |
| 業務停止命令(許可の取消等)違反 | 2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金、又は併科 |
| 緊急命令違反 | 3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、又は併科 |
| 廃棄回収命令違反、廃棄・回収処分の拒否・妨害・忌避 | 3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、又は併科 |