循環器系

2026年7月29日

1. 循環器系

循環器系とは、体液(血液やリンパ液)を体内に循環させ、酸素、栄養分等を全身の組織へ送り、老廃物を排泄器官へ運ぶための器官系で、心臓、血管系、血液、脾臓、リンパ系からなる。

  • 血管系:心臓を中心とする閉じた管(閉鎖循環系)
  • リンパ系:末端がリンパ毛細管となって組織の中に開いている(開放循環系)

(循環器系の概略図のイメージ)


2. 心臓

2-1. 概要

心臓は、心筋でできた握りこぶし大の袋状の臓器で、胸骨の後方に位置する。血液は心臓がポンプの役目を果たすことによって循環している。

2-2. 仕組みと働き

  • 心臓の内部は上部左右の心房、下部左右の心室の4つの空洞に分かれている
  • 心房で血液を集めて心室に送り、心室から血液を拍出する。この心臓の動きを拍動という
  • 血液が確実に一方向に流れるよう、心室には血液を取り込む側と送り出す側にそれぞれがあり、拍動と協調して交互に開閉する
心臓の部分働き
右側部分(右心房、右心室)全身から集まってきた血液を肺へ送り出す
左側部分(左心房、左心室)肺でガス交換された血液を受け取り、全身に送り出す

(心臓のイメージ)


3. 血管系(動脈・静脈・毛細血管)

3-1. 概要

  • 血液が血管中を流れる方向は一定している
  • 心臓から拍出された血液を送る血管を動脈、心臓へ戻る血液を送る血管を静脈という
  • いずれも血管壁が収縮すると血管は細くなり、弛緩すると拡張する
  • 心拍数と同様に自律神経系によって制御される

3-2. 仕組みと働き

① 動脈

  • 弾力性があり、圧力がかかっても耐えられる
  • 血漿中の過剰なコレステロールが血管の内壁に蓄積すると、血液が流れにくくなるとともに、動脈の弾力性が損なわれてもろくなる
  • 動脈の多くは体の深部を通っているが、頸部、手首、肘の内側等では皮膚表面近くを通るため、心拍に合わせて脈がふれる

血圧について

  • 血管壁にかかる圧力(血圧)は、通常、上腕部の動脈で測定される
  • 最大血圧:心臓が収縮したときの血圧
  • 最小血圧:心臓が弛緩したときの血圧(心臓には圧がかからなくても、血管には血管壁の持つ弾力のためある程度の圧がある)

② 静脈

  • 皮膚表面近くを通っている部分が多く、皮膚の上から透けて見える
  • 静脈にかかる圧力は比較的低いため、血管壁は動脈よりも薄い
  • 四肢を通る静脈では血流が重力の影響を受けやすいため、一定の間隔で内腔に向かう薄い帆状のひだ(静脈弁)が発達しており、血液の逆流を防いでいる

③ 毛細血管

  • 動脈と静脈の間をつなぐように体中の組織に細かく張り巡らされている細い血管
  • 薄い血管壁を通して、酸素と栄養分が血液中から組織へ運び込まれ、それと交換に二酸化炭素や老廃物が組織から血液中へ取り込まれる
  • 消化管壁を通っている毛細血管の大部分は、**門脈(門静脈)**と呼ばれる血管に集まって肝臓に入る
  • 消化管ではアルコール、毒素等のように生体に悪影響を及ぼす物質が取り込まれることがあるため、消化管で吸収された物質は一度肝臓を通って代謝や解毒を受けた後、血流に乗って全身を循環する仕組みになっている

(血管系のイメージ)


4. 血液

4-1. 概要

血液は、血漿血球からなる。

4-2. 仕組みと働き

  • 酸素や栄養分を全身の組織に供給し、二酸化炭素や老廃物を肺や腎臓へ運ぶ
  • ホルモンの運搬によって体内各所の器官・組織相互の連絡を図る役割もある
  • 血液の循環によって、体内で発生した温熱が体表、肺、四肢の末端等に分配され、全身の温度をある程度均等に保つのに役立つ

4-3. 血漿

血漿は、主に水分からなり、アルブミン、グロブリン等のタンパク質のほか、微量の脂質、糖質、電解質を含む。

血漿の主な構成成分と働き

成分働き
水分血漿の90%以上を占める
アルブミン血液の浸透圧を保持する(血漿成分が血管から組織中に漏れ出るのを防ぐ)。ホルモンや医薬品の成分等と複合体を形成して、それらが血液によって運ばれるときに代謝や排泄を受けにくくする
グロブリンその多くが、免疫反応において体内に侵入した細菌やウイルス等の異物を特異的に認識する抗体としての役割を担うため、免疫グロブリンとも呼ばれる
脂質(中性脂肪、コレステロール等)血漿中のタンパク質と結合してリポタンパク質を形成し、血漿中に分散している
粘稠性(ねんちゅうせい)血液の粘稠性は、主として血漿の水分量や赤血球の量で決まり、血中脂質量はほとんど影響を与えない。脂質異常症や動脈硬化症に伴う血行障害は血管の病変によるものであり、血液自体の粘稠性とは直接関係しない

4-4. 血球(赤血球)

① 概要

  • 赤血球は、中央部がくぼんだ円盤状の細胞で、血液全体の約40%を占め、赤い血色素(ヘモグロビン)を含む

環境の変化に伴う赤血球への影響 標高の高い土地での生活や重度の喫煙など、酸素が少ない環境で長期間過ごすと、血液中の赤血球の割合が増加する。

② 仕組みと働き

(a) ヘモグロビンの性質

  • ヘモグロビンは鉄分と結合したタンパク質で、酸素量の多いところ(肺胞の毛細血管)で酸素分子と結合し、酸素が少なく二酸化炭素が多いところ(末梢組織の毛細血管)で酸素分子を放出する性質がある
  • この性質によって、肺で取り込まれた酸素が全身の組織へ供給される
  • 二酸化炭素はヘモグロビンとほとんど結合せず、血漿中に溶け込んで末梢組織から肺へ運ばれる

(b) 赤血球の産生と貧血症状

  • 赤血球は骨髄で産生される
  • 赤血球の数が少なすぎたり、赤血球中のヘモグロビン量が欠乏すると、血液は酸素を十分に供給できず、疲労や血色不良などの貧血症状が現れる
貧血の種類原因
ビタミン欠乏性貧血食事の偏りや胃腸障害等のため赤血球の産生に必要なビタミンが不足することによる
鉄欠乏性貧血月経過多や消化管出血等による血液損失等のため、ヘモグロビンの生合成に必要な鉄分が不足することによる

⚠️ 心臓機能や自律神経系の障害による立ちくらみ(起立性低血圧)やめまいなどの症状は、貧血ではないが、俗に「貧血」と呼ばれることもあり、誤って混同されやすいため注意が必要。

4-5. 血球(白血球)

① 概要

白血球は、体内に侵入した細菌やウイルス等の異物に対する防御を受け持つ細胞。形態や機能等の違いにより数種類に分類される。

② 仕組みと働き

(a) 好中球

  • 最も数が多く、白血球の約60%を占める
  • 血管壁を通り抜けて組織の中に入り込むことができる
  • 感染が起きた組織に遊走して集まり、細菌やウイルス等を食作用(異物を細胞内に取り込み、分解すること)によって取り込んで分解する

(b) リンパ球

  • 白血球の約1/3を占め、血液のほかリンパ液にも分布して循環している
  • リンパ節、脾臓等のリンパ組織で増殖し、細菌、ウイルス等の異物を認識したり(T細胞リンパ球)、それらに対する抗体(免疫グロブリン)を産生する(B細胞リンパ球)

(c) 単球

  • 白血球の約5%と少ないが、最も大きく、強い食作用を持つ
  • 血管壁を通り抜けて組織の中に入り込むことができ、組織の中では**マクロファージ(貪食細胞)**と呼ばれる

(d) その他

  • 好中球、リンパ球、単球のほか、アレルギーに関与する白血球もある
  • これら種々の白血球が協働して、生体の免疫機能が発揮される
  • 感染や炎症などが起きると全体の数が増加するとともに、種類ごとの割合も変化する

4-6. 血球(血小板)

① 概要

  • 血管が破れたり切れたりすると、血液が血管外に漏れ出す
  • 血管だけでなく皮膚まで傷ついて血液が体の外に流れ出すことを外出血、血液が組織の隙間や器官の内部に流れ込むことを内出血という

② 仕組みと働き

  • 生体には損傷した血管からの血液の流出を抑える仕組みが備わっており、血小板がその仕組みにおいて重要な役割を担う
  • 損傷した血管は、血管壁が収縮することで血流を減少させ、大量の血液が流出するのを防ぐ
  • 同時に、損傷部位に血小板が粘着・凝集して傷口を覆う
  • このとき血小板から放出される酵素によって血液を凝固させる一連の反応が起こり、血漿タンパク質の一種であるフィブリノゲンが傷口で重合して線維状のフィブリンとなる
  • フィブリン線維に赤血球や血小板などが絡まり合い、血の凝固物(血餅)となって傷口をふさぎ、止血がなされる

採血した血液が凝固して血餅が沈殿したときの上澄みを血清という。血清は、血漿からフィブリノゲンが除かれたもの。


5. 脾臓

5-1. 概要

脾臓は、握りこぶし大のスポンジ状臓器で、胃の後方の左上腹部に位置する。

5-2. 仕組みと働き

  • 脾臓の主な働きは、脾臓内を流れる血液から古くなった赤血球を濾し取って処理すること
  • 健康な赤血球には柔軟性があるので脾臓内の網目構造をすり抜けられるが、古くなって柔軟性が失われた赤血球は引っかかり、脾臓の組織に存在するマクロファージ(貪食細胞)によって壊される
  • 脾臓にはリンパ球が増殖、密集する組織(リンパ組織)があり、血流中の細菌やウイルス等の異物に対する免疫応答に関与している

(脾臓の位置(背面)のイメージ)


6. リンパ系(リンパ液・リンパ管・リンパ節)

6-1. 概要

  • リンパ液が循環するリンパ系は、血管系とは半ば独立した循環系として存在する
  • リンパ系には心臓のようにポンプの働きをする器官がなく、リンパ液の流れは主に骨格筋の収縮によるものであり、流速は血流に比べて緩やか

6-2. 仕組みと働き

  • リンパ液は、血漿の一部が毛細血管から組織の中へ滲み出て組織液(組織中の細胞と細胞の間に存在する体液)となったもの
  • 血漿とほとんど同じ成分からなるが、タンパク質が少なく、リンパ球を含む
  • 組織液は、組織中の細胞に酸素や栄養分を供給して二酸化炭素や老廃物を回収したのち、そのほとんどは毛細血管で吸収されて血液に還元されるが、一部はリンパ管に入ってリンパ液となる
  • その際、組織中に侵入した細菌、ウイルス等の異物もリンパ管に取り込まれる
  • リンパ管には逆流防止のための弁があって、リンパ液は一定の方向に流れている
  • リンパ管は互いに合流して次第に太くなり、最終的に鎖骨の下にある静脈につながるが、途中にリンパ節と呼ばれる結節がある
  • リンパ節は、首筋、脇の下、もものつけ根に多く集まっており、その内部にはリンパ球やマクロファージ(貪食細胞)が密集していて、リンパ液で運ばれてきた細菌やウイルス等は、ここで免疫反応によって排除される

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