鎮咳去痰薬2

2026年7月30日

抗炎症成分、カンゾウ・甘草湯

1. 抗炎症成分

気道の炎症を和らげることを目的として、トラネキサム酸、グリチルリチン酸二カリウム等が配合されている場合があります。


2. カンゾウ

① 作用

グリチルリチン酸を含む生薬成分として、カンゾウが用いられることもあります。

生薬成分の概要

生薬名基原・作用
カンゾウマメ科の Glycyrrhiza uralensis Fischer または Glycyrrhiza glabra Linné の根およびストロンで、ときには周皮を除いたもの(皮去りカンゾウ)を基原とする生薬である。グリチルリチン酸による抗炎症作用のほか、気道粘膜からの粘液分泌を促す等の作用も期待される。

② 留意事項

(a) カンゾウを大量に摂取するとグリチルリチン酸の大量摂取につながり、偽アルドステロン症を起こすおそれがあります。

(b) むくみ、心臓病、腎臓病または高血圧のある人や高齢者では、偽アルドステロン症を生じるリスクが高いため、1日最大服用量がカンゾウ(原生薬換算)として1g以上の製品については、治療を行っている医師または処方薬の調剤を行った薬剤師に相談する等、事前にその適否を十分考慮するとともに、偽アルドステロン症の初期症状に常に留意する等、慎重に使用する必要があります。

(c) どのような人が対象であっても、1日最大服用量がカンゾウ(原生薬換算)として1g以上となる製品は、長期連用を避けることとされています。

(d) カンゾウは、かぜ薬や鎮咳去痰薬以外の医薬品にも配合されていることが少なくなく、また、甘味料として一般食品等にも広く用いられるため、医薬品の販売等に従事する専門家においては、購入者等に対して、摂取されるグリチルリチン酸の総量が継続して多くならないよう注意を促すことが重要です。


3. 甘草湯

① 適応

体力にかかわらず使用でき、激しい咳、咽喉痛、口内炎、しわがれ声に、外用では痔・脱肛の痛みに用いられます。

なお、日本薬局方収載のカンゾウも、煎薬として、甘草湯と同様の目的で用いられます。

② 留意事項

甘草湯は、構成生薬がカンゾウのみからなる漢方処方製剤です。

短期間の服用に止め、連用しないこととされており、5〜6回使用しても咳や喉の痛みが鎮まらない場合には、漫然と継続せず、いったん使用を中止し、医師の診療を受けるなどの対応が必要です。

甘草湯のエキス製剤は乳幼児にも使用されることがありますが、その場合、体格の個人差から体重あたりのグリチルリチン酸の摂取量が多くなることがありますので、特に留意される必要があります。


4. 抗ヒスタミン成分

咳や喘息、気道の炎症は、アレルギーに起因することがあり、鎮咳成分や気管支拡張成分、抗炎症成分の働きを助ける目的で、クロルフェニラミンマレイン酸塩、クレマスチンフマル酸塩、カルビノキサミンマレイン酸塩等の抗ヒスタミン成分が配合されている場合があります。

気道粘膜での粘液分泌を抑制することで痰が出にくくなることがあるため、痰の切れを良くしたい場合は併用に注意する必要があります。

【アレルギーによる気管支喘息】
アレルギーによる気管支喘息は、炎症による粘膜の腫れにより、気道の過敏性が亢進して、気管支の内径が狭くなるとともに、ヒスタミン等の物質が気管支を収縮させることで引き起こされます。


5. 殺菌消毒成分

口腔咽喉薬の効果を兼ねたトローチ剤やドロップ剤では、セチルピリジニウム塩化物等の殺菌消毒成分が配合されている場合があります。

基本的に他の配合成分は腸で吸収され、循環血液中に入って薬効をもたらすのに対し、殺菌消毒成分は口腔内および咽頭部において局所的に作用します。

したがって、口中に含み、噛まずにゆっくり溶かすようにして使用されることが重要であり、噛み砕いて飲み込んでしまうと殺菌消毒作用は期待できません。


6. 生薬成分

比較的穏やかな鎮咳去痰作用を示し、中枢性鎮咳成分、気管支拡張成分、去痰成分または抗炎症成分の働きを助けることを期待して、次のような生薬成分が配合されている場合があります。

生薬成分の種類と概要

生薬名基原作用
キョウニンバラ科のホンアンズ、アンズ等の種子を基原とする生薬である。体内で分解されて生じた代謝物の一部が延髄の呼吸中枢、咳嗽中枢を鎮静させる作用を示すとされる。
ナンテンジツメギ科のシロミナンテン(シロナンテン)またはナンテンの果実を基原とする生薬である。知覚神経・末梢運動神経に作用して咳止めに効果があるとされる。
ゴミシマツブサ科のチョウセンゴミシの果実を基原とする生薬である。鎮咳作用を期待して用いられる。
シャゼンソウオオバコ科のオオバコの花期の全草を基原とする生薬である。種子のみを用いたものはシャゼンシと呼ばれる。去痰作用を期待して用いられる。日本薬局方収載のシャゼンソウは、煎薬として咳に対して用いられる。
オウヒバラ科のヤマザクラまたはカスミザクラの樹皮を基原とする生薬である。去痰作用を期待して用いられる。
キキョウキキョウ科のキキョウの根を基原とする生薬である。痰または痰を伴う咳に用いられる。
セネガヒメハギ科のセネガまたはヒロハセネガの根を基原とする生薬である。去痰作用を期待して用いられる。糖尿病の検査値に影響を生じることがあり、糖尿病が改善したと誤認されるおそれがあるため、1日最大配合量がセネガ原生薬として1.2g以上を含有する製品では、使用上の注意において成分および分量に関連する注意として記載されている。
オンジヒメハギ科のイトヒメハギの根および根皮を基原とする生薬である。去痰作用を期待して用いられる。糖尿病の検査値に影響を生じることがあり、糖尿病が改善したと誤認されるおそれがあるため、1日最大配合量がオンジとして1g以上を含有する製品では、使用上の注意において成分および分量に関連する注意として記載されている。
セキサンヒガンバナ科のヒガンバナの鱗茎を基原とする生薬である。去痰作用を期待して用いられる。セキサンのエキスは、別名を白色濃厚セキサノールとも呼ばれる。
バクモンドウユリ科のジャノヒゲの根の膨大部を基原とする生薬である。鎮咳、去痰、滋養強壮等の作用を期待して用いられる。

7. 漢方処方製剤

甘草湯のほか、咳止めや痰を出しやすくする目的で用いられる漢方処方製剤としては、半夏厚朴湯、柴朴湯、麦門冬湯、五虎湯、麻杏甘石湯、神秘湯等があります。このうち半夏厚朴湯を除くいずれも、構成生薬としてカンゾウを含みます。

また、甘草湯を除くいずれも、比較的長期間(1ヶ月位)服用されることがあります。

漢方処方製剤の種類と概要

半夏厚朴湯
  • 体力中等度を目安として、気分がふさいで、咽喉・食道部に異物感があり、ときに動悸、めまい、嘔気などを伴う不安神経症、神経性胃炎、つわり、咳、しわがれ声、喉のつかえ感に適すとされる。
柴朴湯(別名:小柴胡合半夏厚朴湯)
  • 体力中等度で、気分がふさいで、咽喉・食道部に異物感があり、かぜをひきやすく、ときに動悸、めまい、嘔気などを伴うものの小児喘息、気管支喘息、気管支炎、咳、不安神経症、虚弱体質に適すとされる。
  • むくみの症状のある人等には不向きとされる。
  • まれに重篤な副作用として間質性肺炎、肝機能障害を生じることが知られている。
  • その他の副作用として、頻尿、排尿痛、血尿、残尿感等の膀胱炎様症状が現れることがある。
  • 構成生薬としてカンゾウを含む。
麦門冬湯
  • 体力中等度以下で、痰が切れにくく、ときに強く咳込み、または咽頭の乾燥感があるものの空咳、気管支炎、気管支喘息、咽頭炎、しわがれ声に適すとされる。
  • 水様痰の多い人には不向きとされる。
  • まれに重篤な副作用として間質性肺炎、肝機能障害を生じることが知られている。
  • 構成生薬としてカンゾウを含む。
五虎湯
  • 体力中等度以上で、咳が強く出るものの咳、気管支喘息、気管支炎、小児喘息、感冒、痔の痛みに用いられる。
  • 胃腸の弱い人、発汗傾向の著しい人等には不向きとされる。
  • 構成生薬としてカンゾウ、マオウを含む。
麻杏甘石湯
  • 体力中等度以上で、咳が出て、ときに喉が渇くものの咳、小児喘息、気管支喘息、気管支炎、感冒、痔の痛みに用いられる。
  • 胃腸の弱い人、発汗傾向の著しい人等には不向きとされる。
  • 構成生薬としてカンゾウ、マオウを含む。
神秘湯
  • 体力中等度で、咳、喘鳴、息苦しさがあり、痰が少ないものの小児喘息、気管支喘息、気管支炎に用いられる。
  • 胃腸の弱い人、発汗傾向の著しい人等には不向きとされる。
  • 構成生薬としてカンゾウ、マオウを含む。

8. 相互作用

一般用医薬品の鎮咳去痰薬は、複数の有効成分が配合されている場合が多く、他の鎮咳去痰薬、かぜ薬、抗ヒスタミン成分やアドレナリン作動成分を含有する医薬品(鼻炎用薬、睡眠改善薬、乗物酔い防止薬、アレルギー用薬等)などが併用された場合、同じ成分または同種の作用を有する成分が重複摂取となり、効き目が強すぎたり、副作用が起こりやすくなるおそれがあります。

一般の生活者においては、「咳止めと鼻炎の薬等は影響し合わない」との誤った認識がなされていることが考えられるので、医薬品の販売等に従事する専門家において適宜注意を促していくことが重要です。


9. 受診勧奨等

① 発熱を伴う場合

鎮咳去痰薬に解熱成分は配合されておらず、発熱を鎮める効果は期待できません

発熱を伴うときは、呼吸器に細菌やウイルス等の感染を生じている可能性があります。

② 変な痰が出る場合

咳がひどく痰に線状の血が混じることがある、または黄色や緑色の膿性の痰を伴うような場合には、一般用医薬品によって対処を図るのでなく、早めに医療機関を受診することが望ましいとされています。

③ 乾いた咳が出る場合

痰を伴わない乾いた咳が続く場合には、間質性肺炎等の初期症状である可能性があり、また、その原因が医薬品の副作用によるものであることもあります。

④ 症状が長期にわたる場合

咳や痰、息切れ等の症状が長期間にわたっている場合には、慢性気管支炎や肺気腫(何らかの原因によって次第に肺胞が壊れて、呼吸機能が低下する病気)などの**慢性閉塞性肺疾患(COPD)**の可能性があり、医師の診療を受けるなどの対応が必要です。

喫煙は、咳や痰などの呼吸器症状を遷延化・慢性化させ、COPDのリスク要因の一つとして指摘されており、喫煙に伴う症状のため鎮咳去痰薬を漫然と長期間にわたって使用することは適当ではありません。

※当人の喫煙だけでなく、生活環境に喫煙者がいる場合の受動喫煙を含みます。

⑤ 喘息の場合

喘息については、気管支粘膜の炎症が慢性化していると、一般用医薬品の鎮咳去痰薬で一時的に症状を抑えることができたとしても、しばらくすると発作が繰り返し現れます。

喘息発作が重積すると生命に関わる呼吸困難につながることもあり、一般用医薬品によって対処を図るのでなく、早期に医療機関での診療を受けるなどの対応が必要です。

⑥ 薬物依存の場合

ジヒドロコデインリン酸塩、メチルエフェドリン塩酸塩等の反復摂取によって依存を生じている場合は、自己努力のみで依存からの離脱を図ることは困難です。

薬物依存は医療機関での診療が必要な病気です。

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