症状からみた主な副作用1
医薬品の副作用に関する知識
1. 副作用の症状に関する知識
医薬品は、十分注意して適正に使用された場合でも副作用を生じることがあります。一般に、重篤な副作用は発生頻度が低く、多くの患者はもちろん、医薬品の販売等に従事する専門家にとっても遭遇する機会は極めてまれです。副作用の早期発見・早期対応が行われるためには、医薬品の販売等に従事する専門家が副作用の症状に関する十分な知識を身に付けることが重要です。
2. 重篤副作用疾患別対応マニュアル
厚生労働省では、「重篤副作用総合対策事業」の一環として、関係学会の専門家等の協力を得て、「重篤副作用疾患別対応マニュアル」を作成し、公表しています。
本マニュアルが対象とする重篤副作用疾患の中には、一般用医薬品によって発生する副作用も含まれており、医薬品の販売等に従事する専門家は、購入者等への積極的な情報提供や相談対応に、本マニュアルを積極的に活用することが望ましいとされています。
3. 医薬品の販売等に従事する専門家の対応
医薬品の販売等に従事する専門家が、購入者等に対して、一般用医薬品による副作用と疑われる症状について医療機関の受診を勧奨する際は、その添付文書等を見せて説明するなどの対応がなされることが望ましいとされています。
一般用医薬品の副作用は、長期連用のほか、不適切な医薬品の併用、医薬品服用時のアルコール飲用等が原因で起こる場合があります。
4. 全身的に現れる副作用
全身的に現れる副作用として、次のようなものがあります。
- ショック(アナフィラキシー)
- 中毒性表皮壊死融解症
- 皮膚粘膜眼症候群
- 肝機能障害
- 偽アルドステロン症
- 抵抗力の低下
- 出血傾向
5. ショック(アナフィラキシー)
① 概要
ショック(アナフィラキシー)は、生体異物に対する即時型のアレルギー反応の一種です。
原因物質によって発生頻度は異なりますが、医薬品の場合、以前にその医薬品によって蕁麻疹等のアレルギーを起こしたことがある人で起きる可能性が高いとされています。
② 症状
一般に、顔や上半身の紅潮・熱感、皮膚の痒み、蕁麻疹、口唇や舌・手足のしびれ感、むくみ(浮腫)、吐きけ、顔面蒼白、手足の冷感、冷や汗、息苦しさ、胸苦しさなど、複数の症状が現れ、いったん発症すると病態は急速に悪化することが多く、適切な対応が遅れるとチアノーゼ(血中酸素の不足が原因で、皮膚が青紫色になる状態)や呼吸困難等を生じ、死に至ることがあります。
発症後の進行が非常に速やかな(通常、2時間以内に急変する。)ことが特徴で、直ちに救急救命処置が可能な医療機関を受診する必要があります。何より医薬品の使用者本人およびその家族等の冷静な対応が重要です。
6. 重篤な皮膚粘膜障害
① 皮膚粘膜眼症候群(スティーブンス・ジョンソン症候群)
皮膚粘膜眼症候群は、38℃以上の高熱を伴って、発疹・発赤、火傷様の水疱等の激しい症状が比較的短時間のうちに全身の皮膚、口、眼等の粘膜に現れる病態で、最初に報告をした二人の医師の名前にちなんで**スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)**とも呼ばれます。
発生頻度は、人口100万人当たり年間1〜6人と報告されています。発症機序の詳細は不明で、発症の可能性がある医薬品の種類も多いため、発症の予測は極めて困難です。
② 中毒性表皮壊死融解症(TEN)
中毒性表皮壊死融解症(TEN)は、38℃以上の高熱を伴って広範囲の皮膚に発赤が生じ、全身の10%以上に火傷様の水疱、皮膚の剥離、びらん等が認められ、かつ、口唇の発赤びらん、眼の充血等の症状を伴う病態で、最初に報告をした医師の名前にちなんでライエル症候群とも呼ばれます。
皮膚粘膜眼症候群と関連のある病態と考えられており、中毒性表皮壊死融解症の症例の多くが皮膚粘膜眼症候群の進展型とみられます。発生頻度は、人口100万人当たり年間0.4〜1.2人と報告されています。
皮膚粘膜眼症候群と同様、発症機序の詳細は不明で、発症の予測は困難です。
③ 皮膚粘膜眼症候群・中毒性表皮壊死融解症に共通する特徴
皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死融解症のいずれも、発生は非常にまれであるとはいえ、いったん発症すると多臓器障害の合併症等により致命的な転帰をたどることがあり、また、皮膚症状が軽快した後も眼や呼吸器等に障害が残ったりする重篤な疾患です。
したがって、次のような症状が持続したり、または急激に悪化したりする場合には、原因と考えられる医薬品の使用を中止して直ちに皮膚科の専門医の診療を受ける必要があります。
- 38℃以上の高熱
- 目の充血、目やに(眼分泌物)、まぶたの腫れ、目が開けづらい
- 口唇の違和感、口唇や陰部のただれ
- 排尿・排便時の痛み
- 喉の痛み
- 広範囲の皮膚の発赤
特に、両眼に現れる急性結膜炎(結膜が炎症を起こし、充血、目やに、流涙、痒み、腫れ等を生じる病態)は、皮膚や粘膜の変化とほぼ同時期または半日〜1日程度先行して生じることが知られており、そのような症状が現れたときは、皮膚粘膜眼症候群または中毒性表皮壊死融解症の前兆である可能性を疑うことが重要です。
皮膚粘膜眼症候群と中毒性表皮壊死融解症は、いずれも原因と考えられる医薬品の使用開始後2週間以内に発症することが多いですが、1ヶ月以上経ってから起こることもあります。
7. 肝機能障害
① 概要
医薬品により生じる肝機能障害は、有効成分またはその代謝物の直接的肝毒性が原因で起きる中毒性のものと、有効成分に対する抗原抗体反応が原因で起きるアレルギー性のものとに大別されます。
いわゆる健康食品、ダイエット食品として購入された無承認無許可医薬品の使用による重篤な肝機能障害も知られています。
軽度の肝機能障害の場合、自覚症状がみられず、健康診断等の血液検査(肝機能検査値の悪化)で初めて判明することが多くあります。
② 症状
主な症状としては、全身の倦怠感、黄疸のほか、発熱、発疹、皮膚の掻痒感、吐きけ等を生じます。
黄疸とは、ビリルビン(黄色色素)が胆汁中へ排出されず血液中に滞留することにより生じるもので、皮膚や白眼が黄色くなる病態です。また、過剰となった血液中のビリルビンが尿中に排出されることにより、尿の色が濃くなることもあります。
③ 対応
肝機能障害が疑われた時点で、原因と考えられる医薬品の使用を中止し、医師の診療を受けることが重要です。漫然と原因と考えられる医薬品を使用し続けた場合には、**不可逆的な病変(肝不全)**を生じ、死に至ることもあります。
8. 偽アルドステロン症
① 概要
体内に塩分(ナトリウム)と水が貯留し、体からカリウムが失われることによって生じる病態です。
副腎皮質からのアルドステロン分泌が増加していないにもかかわらずこのような状態になることから、偽アルドステロン症と呼ばれています。偽アルドステロン症では、低カリウム血症を伴う高血圧症を示すことから、低カリウム血性ミオパチーによると思われる四肢の脱力と、血圧上昇に伴う頭重感などが主な症状となります。
② 症状
主な症状として、手足の脱力、血圧上昇、筋肉痛、こむら返り、倦怠感、手足のしびれ、頭痛、むくみ(浮腫)、喉の渇き、吐きけ・嘔吐等がみられ、さらに進行すると、筋力低下、起立不能、歩行困難、痙攣等を生じます。
③ 特徴
低身長、低体重など体表面積が小さい者や高齢者で生じやすいとされ、原因医薬品の長期服用後に、初めて発症する場合もあります。また、複数の医薬品や、医薬品と食品との間の相互作用によって起きる場合があります。
初期症状に不審を感じつつも重症化させてしまう例が多く、偽アルドステロン症が疑われる症状に気付いたら、直ちに原因と考えられる医薬品の使用を中止し、速やかに医師の診療を受けることが重要です。
9. 病気等に対する抵抗力の低下
医薬品の使用が原因で、血液中の**白血球(好中球)**が減少し、細菌やウイルスの感染に対する抵抗力が弱くなり、突然の高熱、悪寒、喉の痛み、口内炎、倦怠感等の症状を呈することがあります。
進行すると重症の細菌感染を繰り返し、致命的となることもあります。ステロイド性抗炎症薬や抗がん薬などは、そのような易感染性をもたらす医薬品として知られています。
初期においては、かぜ等の症状と見分けることが難しいため、原因医薬品の使用を漫然と継続して悪化させる場合があります。
医薬品を一定回数または一定期間使用した後に症状が出現したのであれば、医薬品の副作用の可能性を考慮して、その医薬品の使用を中止して、血液検査ができる医師の診断を受ける必要があります。
10. 出血傾向
医薬品の使用が原因で血液中の血小板が減少し、**鼻血、歯ぐきからの出血、手足の青あざ(紫斑)や口腔粘膜の血腫等の内出血、経血が止まりにくい(月経過多)**等の症状が現れることがあります。
脳内出血等の重篤な病態への進行を予防するため、何らかの症状に気付いたときは、原因と考えられる医薬品の使用を直ちに中止して、早期に医師の診療を受ける必要があります。