症状からみた主な副作用2
精神神経系に現れる副作用
1. 精神神経障害
① 概要
医薬品の副作用によって中枢神経系が影響を受け、物事に集中できない、落ち着きがなくなる等のほか、不眠、不安、震え(振戦)、興奮、眠気、うつ等の精神神経症状を生じることがあります。
これらのうち、眠気は比較的軽視されがちですが、乗物や危険な機械類の運転操作中に眠気を生じると重大な事故につながる可能性が高いので、眠気を催すことが知られている医薬品を使用した後は、そのような作業に従事しないよう十分注意する必要があります。
② 原因と対応
精神神経症状は、医薬品の大量服用や長期連用、乳幼児への適用外の使用等の不適正な使用がなされた場合に限らず、通常の用法・用量でも発生することがあります。
これらの症状が現れた場合は、原因と考えられる医薬品の使用を中止し、症状によっては医師の診療を受けるなどの対応が必要です。
2. 無菌性髄膜炎
① 概要
髄膜炎のうち、髄液に細菌が検出されないものを無菌性髄膜炎といいます。大部分はウイルスが原因と考えられていますが、マイコプラズマ感染症やライム病、医薬品の副作用等によっても生じることがあります。
医薬品の副作用が原因の場合、全身性エリテマトーデス(膠原病の一種。発熱や全身の倦怠感、頬に赤い発疹、手指の腫れと関節炎、口内炎、光線過敏等の症状が現れる)、混合性結合組織病、関節リウマチ等の基礎疾患がある人で発症リスクが高くなります。
② 症状
多くの場合、発症は急性で、首筋のつっぱりを伴った激しい頭痛、発熱、吐きけ・嘔吐、意識混濁等の症状が現れます。
③ 対応
上記のような症状が現れた場合は、原因と考えられる医薬品の使用を直ちに中止し、医師の診療を受ける必要があります。
早期に原因医薬品の使用を中止すれば、速やかに回復し、予後は比較的良好であることがほとんどですが、重篤な中枢神経系の後遺症が残った例も報告されています。また、過去に軽度の症状を経験した人の場合、再度、同じ医薬品を使用することにより再発し、症状が急激に進行する場合があります。
3. その他(心臓や血管に作用する医薬品の影響)
心臓や血管に作用する医薬品により、頭痛やめまい、浮動感(体がふわふわと宙に浮いたような感じ)、不安定感(体がぐらぐらする感じ)等が生じることがあります。これらの症状が現れた場合は、原因と考えられる医薬品の使用を中止し、症状によっては医師の診療を受けるなどの対応が必要です。
このほか、医薬品を長期連用したり、過量服用するなどの不適正な使用によって、倦怠感や虚脱感等を生じることがあります。
医薬品の販売等に従事する専門家は、販売する医薬品の使用状況にも留意する必要があります。
4. 消化器系に現れる副作用
4-1. 消化性潰瘍
① 概要
消化性潰瘍は、胃や十二指腸の粘膜組織が傷害されて、粘膜組織の一部が粘膜筋板を超えて欠損する状態で、医薬品の副作用により生じることも多くあります。
② 症状と対応
消化性潰瘍になると、胃のもたれ、食欲低下、胸やけ、吐きけ、胃痛、空腹時にみぞおちが痛くなる、消化管出血に伴って糞便が黒くなるなどの症状を生じます。
自覚症状が乏しい場合もあり、貧血症状(動悸や息切れ等)の検査時や突然の吐血・下血によって発見されることもあります。重篤な病態への進行を防止するため、原因と考えられる医薬品の使用を中止し、医師の診療を受けるなどの対応が必要です。
4-2. イレウス様症状(腸閉塞様症状)
① 概要
イレウスとは、腸内容物の通過が阻害された状態をいいます。腸管自体は閉塞していなくても、医薬品の作用によって腸管運動が麻痺して腸内容物の通過が妨げられることがあります。
② 症状と対応
腸内容物の通過が妨げられることにより、激しい腹痛やガス排出(おなら)の停止、嘔吐、腹部膨満感を伴う著しい便秘が現れます。
腹痛などの症状のために水分や食物の摂取が抑制され、嘔吐がない場合でも脱水状態となることがあります。悪化すると、腸内容物の逆流による嘔吐が原因で、脱水状態となったり、腸内細菌の異常増殖によって全身状態の衰弱が急激に進む可能性があります。
小児や高齢者のほか、普段から便秘傾向のある人は、発症のリスクが高く、また、下痢治癒後の便秘を放置して、症状を悪化させてしまうことがあります。
初期症状に気付いたら、原因と考えられる医薬品の使用を中止して、早期に医師の診療を受けることが必要です。
4-3. その他(消化器に対する医薬品の副作用)
① 症状と対応
消化器に対する医薬品の副作用によって、吐きけ・嘔吐、食欲不振、胃部不快感、腹部膨満感、腹痛、口内炎、口腔内の荒れや刺激感などを生じることがあります。
これらの症状が現れたときには、原因と考えられる医薬品の使用を中止し、症状によっては医師の診療を受けるなどの対応が必要です。
4-4. 医薬品による一過性の副作用等
医薬品によっては、一過性の軽い副作用として、口渇、便秘、軟便、下痢等が現れることがあります。
また、浣腸剤や坐剤の使用により、一過性の症状として、肛門部の熱感等の刺激、異物の注入による不快感、排便直後の立ちくらみなどが現れることがあります。
添付文書等にはそれらの症状が継続したり、増強がみられた場合には、その医薬品の使用を中止して、専門家に相談するよう記載されています。
5. 呼吸器系に現れる副作用
5-1. 間質性肺炎
① 概要
通常の肺炎は、気管支または肺胞が細菌に感染して炎症を生じたものであるのに対し、間質(肺の中で肺胞と毛細血管を取り囲んで支持している組織)が炎症を起こした肺炎を間質性肺炎といいます。
② 症状
間質性肺炎では、肺胞と毛細血管の間でのガス交換効率が低下して血液に酸素を十分取り込むことができず、体内は低酸素状態となります。そのため、息切れ、息苦しさ等の呼吸困難、空咳(痰の出ない咳)、発熱等の症状を呈します。
一般的に医薬品の使用開始から1〜2週間程度で起きることが多いです。息切れは、初期には登坂等の運動時に感じられますが、進行すると平地歩行や家事等の軽労作時にも意識されるようになります。発熱は必ずしも伴いません。
③ 対応
上記のような症状は、かぜや気管支炎の症状と区別が難しいこともあり、細心の注意を払ってそれらとの鑑別が行われています。
症状が一過性に現れ、自然と回復することもありますが、悪化すると肺線維症(肺が線維化を起こして硬くなる状態)に移行する場合があります。
重篤な病態への進行を防止するため、直ちに原因と思われる医薬品の使用を中止して、速やかに医師の診療を受ける必要があります。
5-2. 喘息
① 概要と症状
原因となる医薬品(アスピリンなどの非ステロイド性抗炎症成分を含む解熱鎮痛薬など)の使用後、**短時間(1時間以内)**のうちに鼻水・鼻づまりが起こり、続いて咳、喘鳴(息をするとき喉がゼーゼーまたはヒューヒュー鳴る状態)、呼吸困難を生じます。それらの症状は時間とともに悪化し、顔面の紅潮や目の充血、吐きけ、腹痛、下痢等を伴うこともあります。
内服薬だけでなく、坐薬や外用薬でも誘発されることがあります。
合併症を起こさない限り、原因となった医薬品の有効成分が体内から消失すれば症状は寛解し、軽症例は半日程度で回復します。重症例は24時間以上持続し、窒息による意識消失から死に至る危険性もあります。
② 対応
上記のような場合には、直ちに救命救急処置が可能な医療機関を受診しなければなりません。
通年性(非アレルギー性)の鼻炎や慢性副鼻腔炎(蓄膿症)、鼻茸(鼻ポリープ)、嗅覚異常等、鼻の疾患が合併している場合や、成人になってから喘息を発症した人、季節に関係なく喘息発作が起こる人等で発症しやすいとされています。
特に、これまでに医薬品(内服薬に限らない)で喘息発作を起こしたことがある人では重症化しやすいため、同種の医薬品の使用を避ける必要があります。