滋養強壮保険薬

2026年7月30日

滋養強壮保健薬

1. 滋養強壮保健薬とは

滋養強壮保健薬は、体調不良を生じやすい状態や体質の改善、特定の栄養素の不足による症状の改善または予防等を目的として、ビタミン成分、カルシウム、アミノ酸、生薬成分等が配合された医薬品です。

ビタミン等の補給を目的とするものとして医薬部外品の保健薬がありますが、その効能・効果の範囲は、滋養強壮、虚弱体質の改善、病中病後の栄養補給等に限定されています。

区分認められる範囲
特定部位の症状に対する効能・効果を持つもの医薬品のみ認められている
人体に対する作用が緩和なもの医薬部外品でも認められている
カシュウ、ゴオウ、ゴミシ、ジオウ、ロクジョウが配合されているもの医薬品のみ認められている
ビタミン成分の1日最大量が既定値を超えるもの医薬品のみ認められている

2. ビタミン主薬製剤

滋養強壮保健薬のうち、1種類以上のビタミンを主薬とし、そのビタミンの有効性が期待される症状およびその補給に用いられることを目的とする内服薬を、ビタミン主薬製剤(いわゆるビタミン剤)といいます。

【ビタミンとビタミン様物質、過剰症】 ビタミンは、「微量で体内の代謝に重要な働きを担うにもかかわらず、生体が自ら産生することができない、または産生されても不十分であるため外部から摂取する必要がある化合物」と定義されます。

これに対し、不足した場合に欠乏症を生じるかどうか明らかにされていませんが、微量でビタミンと同様に働くまたはビタミンの働きを助ける化合物については「ビタミン様物質」と呼ばれます。

ビタミン成分等は、多く摂取したからといって適用となっている症状の改善が早まるものでなく、むしろ脂溶性ビタミンでは、過剰摂取により過剰症を生じるおそれがあります。


3. ビタミン成分

① ビタミンA

作用

ビタミンAは、夜間視力を維持したり、皮膚や粘膜の機能を正常に保つために重要な栄養素です。

ビタミンA主薬製剤は、レチノール酢酸エステル、レチノールパルミチン酸エステル、ビタミンA油、肝油等が主薬として配合された製剤です。

目の乾燥感、夜盲症(とり目、暗所での見えにくさ)の症状の緩和、また、妊娠・授乳期、病中病後の体力低下時、発育期等のビタミンAの補給に用いられます。

留意事項

一般用医薬品におけるビタミンAの1日分量は4,000国際単位(脂溶性ビタミンなどの効力を国際的に統一して示すときの単位)が上限となっていますが、妊娠3ヶ月前から妊娠3ヶ月までの間に、ビタミンAを1日10,000国際単位以上摂取した妊婦から生まれた新生児において先天異常の割合が上昇したとの報告があります。

そのため、妊娠3ヶ月以内の妊婦、妊娠していると思われる女性および妊娠を希望する女性では、医薬品以外からのビタミンAの摂取を含め、過剰摂取に留意する必要があります。

【医薬品以外からのビタミンAの摂取】 人参などの野菜類に含まれるβ-カロテンは、体内に入ると、必要な分だけがビタミンAに転換されるため、ビタミンAの過剰摂取につながる心配はないとされています。

② ビタミンD

作用

ビタミンDは、腸管でのカルシウム吸収および尿細管でのカルシウム再吸収を促して、骨の形成を助ける栄養素です。

ビタミンD主薬製剤は、エルゴカルシフェロールまたはコレカルシフェロールが主薬として配合された製剤です。

骨歯の発育不良、くる病(ビタミンDの代謝障害によって、カルシウムやリンの吸収が進まなくなるために起こる乳幼児の骨格異常)の予防、また、妊娠・授乳期、発育期、老年期のビタミンDの補給に用いられます。

留意事項

ビタミンDの過剰症としては、高カルシウム血症、異常石灰化が知られています。

高カルシウム血症は、血液中のカルシウム濃度が非常に高くなった状態で、自覚症状がないこともありますが、初期症状としては、便秘、吐きけ、嘔吐、腹痛、食欲減退、多尿等が現れます。

③ ビタミンE

作用

ビタミンEは、体内の脂質を酸化から守り、細胞の活動を助ける栄養素であり、血流を改善させる作用もあります。

ビタミンE主薬製剤は、トコフェロール、トコフェロールコハク酸エステル、トコフェロール酢酸エステル等が主薬として配合された製剤です。

末梢血管障害による肩・首すじのこり、手足のしびれ・冷え、しもやけの症状の緩和、更年期における肩・首すじのこり、冷え、手足のしびれ、のぼせ・ほてり、月経不順、また、老年期におけるビタミンEの補給に用いられます。

留意事項

ビタミンEは、下垂体や副腎系に作用してホルモン分泌の調節に関与するとされており、ときに生理が早く来たり、経血量が多くなったりすることがあります。この現象は内分泌のバランス調整による一時的なものですが、出血が長く続く場合には他の原因による不正出血も考えられるため、医療機関を受診して専門医の診療を受けるなどの対応が必要です。

④ ビタミンB1

ビタミンB1は、炭水化物からのエネルギー産生に不可欠な栄養素で、神経の正常な働きを維持する作用があります。また、腸管運動を促進する働きもあります。

ビタミンB1主薬製剤は、チアミン塩化物塩酸塩、チアミン硝化物、ビスチアミン硝酸塩、チアミンジスルフィド、フルスルチアミン塩酸塩、ビスイブチアミン等が主薬として配合された製剤です。

神経痛、筋肉痛・関節痛(肩・腰・肘・膝痛、肩こり、五十肩など)、手足のしびれ、便秘、眼精疲労(慢性的な目の疲れおよびそれに伴う目のかすみ、目の奥の痛み)の症状の緩和、脚気、また、肉体疲労時、妊娠・授乳期、病中病後の体力低下時におけるビタミンB1の補給に用いられます。

⑤ ビタミンB2

作用

ビタミンB2は、脂質の代謝に関与し、皮膚や粘膜の機能を正常に保つために重要な栄養素です。

ビタミンB2主薬製剤は、リボフラビン酪酸エステル、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、リボフラビンリン酸エステルナトリウム等が主薬として配合された製剤です。

口角炎(唇の両端の腫れ・ひび割れ)、口唇炎(唇の腫れ・ひび割れ)、口内炎、舌の炎症、湿疹、皮膚炎、かぶれ、ただれ、にきび、吹き出物、肌あれ、赤ら顔に伴う顔のほてり、目の充血、目のかすみの症状の緩和、また、肉体疲労時、妊娠・授乳期、病中病後の体力低下時におけるビタミンB2の補給に用いられます。

留意事項

ビタミンB2の摂取により、尿が黄色くなることがあります。

⑥ ビタミンB6

ビタミンB6は、タンパク質の代謝に関与し、皮膚や粘膜の健康維持、神経機能の維持に重要な栄養素です。

ビタミンB6主薬製剤は、ピリドキシン塩酸塩またはピリドキサールリン酸エステルが主薬として配合された製剤です。

口角炎、口唇炎、口内炎、舌の炎症、湿疹、皮膚炎、かぶれ、ただれ、にきび・吹き出物、肌あれ、手足のしびれの症状の緩和、また、妊娠・授乳期、病中病後の体力低下時におけるビタミンB6の補給に用いられます。

⑦ ビタミンB12

ビタミンB12は、赤血球の形成を助け、また、神経機能を正常に保つために重要な栄養素です。

シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン塩酸塩等として、ビタミン主薬製剤、貧血用薬等に配合されています。

⑧ ビタミンC

ビタミンCは、体内の脂質を酸化から守る作用(抗酸化作用)を示し、皮膚や粘膜の機能を正常に保つために重要な栄養素です。メラニンの産生を抑える働きもあるとされます。

ビタミンC主薬製剤は、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウムまたはアスコルビン酸カルシウムが主薬として配合された製剤です。

しみ、そばかす、日焼け・かぶれによる色素沈着の症状の緩和、歯ぐきからの出血、鼻血の予防、また、肉体疲労時、病中病後の体力低下時、老年期におけるビタミンCの補給に用いられます。

⑨ その他

皮膚や粘膜などの機能を維持することを助ける栄養素として、ナイアシン(ニコチン酸アミド、ニコチン酸)、パントテン酸カルシウム、ビオチン等が配合されている場合があります。


4. カルシウム成分

① 作用

カルシウムは、骨や歯の形成に必要な栄養素であり、筋肉の収縮、血液凝固、神経機能にも関与します。

カルシウム主薬製剤は、クエン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム等が主薬として配合された製剤です。

虚弱体質、腺病質(貧血等になりやすい虚弱無力体質)における骨歯の発育促進、妊娠・授乳期の骨歯の脆弱予防に用いられます。

② 留意事項

カルシウムの過剰症としては、高カルシウム血症が知られています。カルシウムを含む成分は、胃腸薬等、カルシウムの補給を目的としない医薬品においても配合されており、併用によりカルシウムの過剰摂取を生じることのないよう留意される必要があります。


5. アミノ酸成分その他

① システイン

髪や爪、肌などに存在するアミノ酸の一種で、皮膚におけるメラニンの生成を抑えるとともに、皮膚の新陳代謝を活発にしてメラニンの排出を促す働きや肝臓においてアルコールを分解する酵素の働きを助け、アセトアルデヒドの代謝を促す働きがあるとされます。

システインまたはシステイン塩酸塩が主薬として配合された製剤は、しみ・そばかす、日焼けなどの色素沈着症、全身倦怠、二日酔い、にきび、湿疹、蕁麻疹、かぶれ等の症状の緩和に用いられます。

② アミノエチルスルホン酸(タウリン)

筋肉や脳、心臓、目、神経等、体のあらゆる部分に存在し、細胞の機能が正常に働くために重要な物質です。

肝臓機能を改善する働きがあるとされ、滋養強壮保健薬等に配合されている場合があります。

③ アスパラギン酸ナトリウム

アスパラギン酸が生体におけるエネルギーの産生効率を高めるとされ、骨格筋に溜まった乳酸の分解を促す等の働きを期待して用いられます。

④ その他の成分

成分名概要
ヘスペリジンビタミン様物質の一つ。ビタミンCの吸収を助ける等の作用があるとされる。滋養強壮保健薬のほか、かぜ薬等にも配合されている場合がある。
コンドロイチン硫酸軟骨組織の主成分である。軟骨成分を形成および修復する働きがあるとされる。コンドロイチン硫酸ナトリウムとして関節痛、筋肉痛等の改善を促す作用を期待してビタミンB1等と組み合わせて配合されている場合がある。
グルクロノラクトン肝臓の働きを助け、肝血流を促進する働きがある。全身倦怠感や疲労時の栄養補給を目的として配合されている場合がある。
ガンマオリザノール米油および米胚芽油から見出された抗酸化作用を示す成分である。ビタミンE等と組み合わせて配合されている場合がある。
カルニチン塩化物(滋養強壮成分として配合される)

6. 生薬成分

ニンジン、ジオウ、トウキ、センキュウが既定値以上配合されている生薬主薬保健薬については、虚弱体質、肉体疲労、病中病後(または病後の体力低下)のほか、胃腸虚弱、食欲不振、血色不良、冷え症における滋養強壮の効能が認められています。

【薬用酒】 数種類の生薬をアルコールで抽出した薬用酒も、滋養強壮を目的として用いられます。薬用酒には、血行を促進させる作用があることから、手術や出産の直後等で出血しやすい人では使用を避ける必要があります。また、アルコールを含有するため、服用後は乗り物または機械類の運転操作等を避ける必要があります。

生薬成分の種類と概要

生薬名基原作用
ニンジン(別名:高麗人参、朝鮮人参)ウコギ科のオタネニンジンの細根を除いた根またはこれを軽く湯通ししたものを基原とする生薬である。オタネニンジンの根を蒸したものを基原とする生薬をコウジンということもある。神経系の興奮や副腎皮質の機能亢進等の作用により、外界からのストレス刺激に対する抵抗力や新陳代謝を高めるとされる。
インヨウカクメギ科のキバナイカリソウ、イカリソウ、Epimedium brevicornum Maximowicz、Epimedium wushanense T.S. Ying、ホザキイカリソウまたはトキワイカリソウの地上部を基原とする生薬である。強壮、血行促進、強精(性機能の亢進)等の作用を期待して用いられる。
ハンピニホンマムシ等の皮および内臓を取り除いたものを基原とする生薬である。強壮、血行促進、強精等の作用を期待して用いられる。
ヨクイニンイネ科のハトムギの種皮を除いた種子を基原とする生薬である。肌あれやいぼに用いられる。ビタミンB2主薬製剤やビタミンB6主薬製剤、瀉下薬等の補助成分として配合されている場合もある。
タイソウクロウメモドキ科のナツメの果実を基原とする。主に強壮作用を期待して用いられる。
ゴミシマツブサ科のチョウセンゴミシの果実を基原とする。同上
サンシュユミズキ科のサンシュユの偽果の果肉を基原とする。同上
サンヤクヤマノイモ科のヤマノイモまたはナガイモの周皮を除いた根茎(担根体)を基原とする。同上
オウギマメ科のキバナオウギまたは Astragalus mongholicus Bunge の根を基原とする。同上
カシュウ(滋養強壮に用いられる生薬)同上

※ジオウ、トウキ、センキュウ、ゴオウ、ロクジョウについては他項も参照。


7. 漢方処方製剤

滋養強壮に用いられる主な漢方処方製剤として、十全大補湯、補中益気湯があります。

いずれも症状の原因となる体質の改善を主眼としているため、比較的長期間(1ヶ月位)服用されることがあります。

漢方処方製剤の種類と概要

十全大補湯

  • 体力虚弱なものの病後・術後の体力低下、疲労倦怠、食欲不振、ねあせ、手足の冷え、貧血に適すとされる。
  • 胃腸の弱い人では、胃部不快感の副作用が現れやすい等、不向きとされる。
  • まれに重篤な副作用として、肝機能障害を生じることが知られている。
  • 構成生薬としてカンゾウを含む。

補中益気湯

  • 体力虚弱で、元気がなく、胃腸の働きが衰えて、疲れやすいものの虚弱体質、疲労倦怠、病後・術後の衰弱、食欲不振、ねあせ、感冒に適すとされる。
  • まれに重篤な副作用として、間質性肺炎、肝機能障害を生じることが知られている。
  • 構成生薬としてカンゾウを含む。

8. 相互作用

滋養強壮保健薬は、多く摂取したからといって適用となっている症状の改善が早まるものでなく、また、滋養強壮の効果が高まるものでもないとされています。


9. 受診勧奨

① 症状の改善がみられない場合

滋養強壮保健薬は、ある程度継続して使用されることによって効果が得られる性質の医薬品ですが、1ヶ月位服用しても症状の改善がみられない場合には、栄養素の不足以外の要因が考えられるため、漫然と使用を継続することなく、症状によっては医療機関を受診する等、適切な対処が図られることが重要です。

② 症状が慢性化している場合

肩・首筋のこり、関節痛、筋肉痛、神経痛、手足のしびれについては、ナトリウムやカリウム等の電解質バランスの乱れによっても生じます。また、痛み等を感じる部位が、問題のある部位と必ずしも一致しない場合があります。

症状が慢性化しているような場合には、医師の診療を受けるなどの対応が必要です。

【痛みを感じる部位が、問題のある部分と必ずしも一致しない場合】 体のいくつかの場所からの信号が同じ神経経路を通って脊髄から脳へと伝わるため、痛み等が離れた部位に感じられることがあります。例えば、腎臓、膀胱、子宮、前立腺等の痛みが、腰痛として感じられることがあります。

③ 眼精疲労等の場合

目の乾燥感、眼精疲労、目の充血については、涙腺の異常、あるいはシェーグレン症候群のような涙腺に障害を及ぼす全身疾患によるものである場合があり、医療機関を受診して専門医の診療を受けるなどの対応が必要です。

【シェーグレン症候群】 唾液腺や涙腺等の体液の分泌腺に白血球が浸潤して腺組織に障害を引き起こす病気。

④ 症状が重症化した場合

口内炎、口角炎、口唇炎、舌炎については、水痘・帯状疱疹ウイルスの感染が再燃・鎮静を繰り返している場合があり、重症化した場合には、医師の診療を受ける必要があります。また、肌あれ、にきび、湿疹、皮膚炎、かぶれについては、それぞれの原因に対する防御策が図られることが重要です。

⑤ 皮膚の黒点の形が変化した場合

しみ、そばかす、日焼け・かぶれによる色素沈着については、皮膚にある色素の点(特に、黒または濃い色のもの)が次第に大きくなったり、形や色が変化してきたような場合には、悪性黒色腫(皮膚がんの一種で、メラノサイト由来の悪性腫瘍)のような重大な病気の可能性も考えられますので、早期に医療機関を受診して専門医の診療を受けるなどの対応が必要です。

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