解熱鎮痛薬1

2026年8月3日

痛みや発熱が起こる仕組み

1. 痛みや発熱の原因

痛みは病気や外傷などに対する警告信号として、また、発熱は細菌やウイルス等の感染等に対する生体防御機能の一つとして引き起こされる症状です。

ただし、**月経痛(生理痛)**などのように、必ずしも病気が原因とはいえない痛みもあります。

2. プロスタグランジンの働き

プロスタグランジンは、ホルモンに似た働きをする物質です。病気や外傷があるときに活発に産生されるようになり、体の各部位で発生した痛みが脳へ伝わる際に、そのシグナルを増幅することで痛みの感覚を強めています。

また、脳の下部にある体温を調節する部位(温熱中枢)に作用して、体温を通常よりも高く維持するように調節します。このほか、炎症の発生にも関与するほか、頭痛や関節痛もプロスタグランジンによって増強されます。


3. 解熱鎮痛薬の作用

解熱鎮痛薬は、発熱や痛みの原因となっている病気や外傷を根本的に治すものではなく、病気や外傷が原因で生じている発熱や痛みを緩和するために使用される医薬品(内服薬)の総称です。

解熱鎮痛薬の目的

  • 痛みのシグナルの増幅を防いで痛みを鎮める(鎮痛)
  • 異常となった体温調節メカニズムを正常状態に戻して熱を下げる(解熱)
  • 炎症が発生している部位に作用して腫れなどの症状を軽減する(抗炎症)

これらを目的として、多くの解熱鎮痛薬には、体内におけるプロスタグランジンの産生を抑える成分が配合されています。

月経そのものが起こる過程にプロスタグランジンが関わっていることから、解熱鎮痛薬の効能・効果に**月経痛(生理痛)**が含まれています。

一方、腹痛を含む痙攣性の内臓痛については発生の仕組みが異なるため、一部の漢方処方製剤を除き、解熱鎮痛薬の効果は期待できません。

解熱鎮痛成分によって、解熱、鎮痛、抗炎症のいずれの作用が中心的となるかなどの性質が異なります。


4. 解熱鎮痛成分(化学的に合成された成分)

解熱鎮痛成分は、化学的に合成された成分生薬成分とに大別されます。

① 発熱、痛み、炎症への効果

悪寒発熱時の解熱のほか、頭痛、歯痛、抜歯後の疼痛、咽喉痛(喉の痛み)、耳痛、関節痛、神経痛、腰痛、筋肉痛、肩こり痛、打撲痛、骨折痛、捻挫痛、月経痛(生理痛)、外傷痛の鎮痛に用いられます。

解熱に関しては、中枢神経系におけるプロスタグランジンの産生を抑えるほか、腎臓における水分の再吸収を促して循環血流量を増し、発汗を促進する作用にも寄与しています。

体の各部(末梢)での痛みや炎症反応に対しては、局所のプロスタグランジン産生を抑える作用により、それらを鎮める効果を発揮します(アセトアミノフェンを除く)。

② 心臓、腎臓、肝臓への影響

循環血流量の増加は心臓の負担を増大させるため、心臓に障害がある場合は、その症状を悪化させるおそれがあります。

また、末梢におけるプロスタグランジンの産生抑制は、腎血流量を減少させるため、腎機能に障害があると、その症状を悪化させる可能性があります。

肝臓においては、解熱鎮痛成分が代謝されて生じる物質がアレルゲンとなってアレルギー性の肝機能障害を誘発することがあります。

また、肝臓ではプロスタグランジンの産生抑制が逆に炎症を起こしやすくする可能性もあり、肝機能障害がある場合は、その症状を悪化させるおそれがあります。

さらに成分によっては、まれに重篤な副作用として肝機能障害や腎障害を生じることがあります。

③ 胃への悪影響

プロスタグランジンには、胃酸分泌調節作用胃腸粘膜保護作用もあります。

これらの作用が解熱鎮痛成分によって妨げられると、胃酸分泌が増加するとともに胃の血流量が低下して、胃粘膜障害を起こしやすくなります。そうした胃への悪影響を軽減するため、多くの場合、なるべく空腹時を避けて服用することとなっています。胃・十二指腸潰瘍があると、その症状を悪化させるおそれがあります。

④ 留意事項

②および③から、心臓病、腎臓病、肝臓病または胃・十二指腸潰瘍のある人では解熱鎮痛薬を使用する前にその適否につき、治療を行っている医師または処方薬の調剤を行った薬剤師に相談することが望ましいとされています。

これらの基礎疾患がない場合であっても、長期間にわたって解熱鎮痛薬を使用すると、自覚症状がないまま徐々に臓器の障害が進行するおそれがあるため、長期連用は避けるべきです。

また、アルコールが解熱鎮痛成分の吸収や代謝に影響を与え、肝機能障害等の副作用を起こしやすくするおそれがあるため、解熱鎮痛薬の服用期間中は、飲酒は避けることとされています。

⑤ 解熱鎮痛成分の副作用

化学的に合成された解熱鎮痛成分に共通して、まれに重篤な副作用としてショック(アナフィラキシー)、皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死融解症、喘息を生じることがあります。

喘息については「アスピリン喘息」としてよく知られていますが、アスピリン特有の副作用ではなく、他の解熱鎮痛成分でも生じる可能性があります。

このほか、胎児への影響を考慮して、妊婦または妊娠していると思われる女性に関して、使用上の注意の「相談すること」の項で注意喚起がなされています。

【胎児への影響】
① アスピリン、サザピリン、サリチルアミド、イブプロフェン、イソプロピルアンチピリン等を、妊娠末期のラットに投与した実験において、胎児に弱い動脈管の収縮がみられたとの報告があります。
② アスピリンについては、動物実験(ラット)で催奇形性が現れたとの報告があります。
③ イソプロピルアンチピリンについては、化学構造が類似した他のピリン系解熱鎮痛成分において、動物実験(マウス)で催奇形性が報告されています。


5. 解熱鎮痛成分の種類

① サリチル酸系解熱鎮痛成分

概要

アスピリン(別名アセチルサリチル酸)、サザピリン、サリチル酸ナトリウム、エテンザミド、サリチルアミド等を総称してサリチル酸系解熱鎮痛成分といいます。

アスピリンは、他の解熱鎮痛成分に比較して胃腸障害を起こしやすく、アスピリンアルミニウム等として胃粘膜への悪影響の軽減を図っている製品もあります。

ライ症候群

サリチル酸系解熱鎮痛成分において特に留意されるべき点は、ライ症候群の発生が示唆されていることです。

そのため、アスピリン(アスピリンアルミニウムを含む。)、サザピリンおよびサリチル酸ナトリウムは、15歳未満の小児に対しては、いかなる場合も一般用医薬品として使用してはなりません。

また、エテンザミドおよびサリチルアミドについては、水痘(水疱瘡)またはインフルエンザにかかっている15歳未満の小児に対しては使用を避ける必要があります。

なお、ライ症候群は、主として小児が水痘(水疱瘡)やインフルエンザ等のウイルス性疾患に罹っているときに、激しい嘔吐や意識障害、痙攣等の急性脳症の症状を呈する症候群です。その発生はまれですが死亡率が高く、生存の場合も脳に重い障害を残す等、予後は不良となります。

血液の凝固抑制

アスピリン(アスピリンアルミニウムを含む。)には血液を凝固しにくくさせる作用があるため、胎児や出産時の母体への影響(妊娠期間の延長、子宮収縮の抑制、分娩時出血の増加)を考慮して、出産予定日12週以内の使用を避けます

なお、医療用医薬品のアスピリンは、血栓ができやすい人に対する血栓予防薬の成分としても用いられています。既にアスピリン製剤が処方されている場合は、一般用医薬品の解熱鎮痛薬を自己判断で使用することは避け、処方した医師または調剤を行った薬剤師に相談するなどの対応が必要です。

肝機能障害

アスピリン(アスピリンアルミニウムを含む。)は、まれに重篤な副作用として肝機能障害を生じることがあります。

ACE処方

エテンザミドは、痛みの発生を抑える働きが作用の中心となっている他の解熱鎮痛成分に比べ、痛みが神経を伝わっていくのを抑える働きが強いため、作用の仕組みの違いによる相乗効果を期待して、他の解熱鎮痛成分と組み合わせて配合されていることが多くあります。

例えば、アセトアミノフェン、カフェイン、エテンザミドの組合せは、それぞれの頭文字から「ACE処方」と呼ばれます。

② アセトアミノフェン

概要

アセトアミノフェンは、主として中枢作用によって解熱・鎮痛をもたらすため、末梢における抗炎症作用は期待できません。その分、他の解熱鎮痛成分のような胃腸障害は少なく、空腹時に服用できる製品もありますが、食後の服用が推奨されています。

留意事項

まれに重篤な副作用として皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死融解症、急性汎発性発疹性膿疱症、間質性肺炎、腎障害、肝機能障害を生じることがあり、特に定められた用量を超えて使用した場合や、日頃から酒類(アルコール)をよく摂取する人で起こりやすいとされています。

解熱薬の坐薬

内服薬のほか、専ら小児の解熱に用いる製品としてアセトアミノフェンが配合された坐薬もあります。一般の生活者の中には、「坐薬と内服薬とでは影響し合わない」との誤った認識を持っている人がいるので、解熱鎮痛薬やかぜ薬を併用することがないよう注意を喚起する必要があります。

また、誤って坐薬を服用することがないよう注意する必要もあります。

③ イブプロフェン

概要

イブプロフェンは、アスピリン等に比べて胃腸への悪影響が少なく、抗炎症作用も示すことから、頭痛、咽頭痛、月経痛(生理痛)、腰痛等に使用されることが多いとされています。

留意事項

一般用医薬品においては、15歳未満の小児に対しては、いかなる場合も使用してはなりません。

また、出産予定日12週以内の妊婦については、服用しないこととされています。

まれに重篤な副作用として、肝機能障害、腎障害、無菌性髄膜炎を生じることがあります。

胃・十二指腸潰瘍、潰瘍性大腸炎、クローン病の既往歴

イブプロフェンはプロスタグランジンの産生を抑制することで、消化管粘膜の防御機能を低下させるため、消化管に広範に炎症を生じる疾患である胃・十二指腸潰瘍、潰瘍性大腸炎(免疫抗体の異常などが原因とされる、大腸に潰瘍や糜爛を生じる病気)またはクローン病(口腔から肛門までの消化管全域にわたって不連続に炎症や潰瘍を生じる疾患。クローン氏病ともいう)の既往歴がある人では、それら疾患の再発を招くおそれがあります。

全身性エリテマトーデス、混合性結合組織病のある人

イブプロフェンは、全身性エリテマトーデスまたは混合性結合組織病のある人において無菌性髄膜炎を生じやすいため、使用する前にその適否につき、治療を行っている医師または処方薬の調剤を行った薬剤師に相談するなどの対応が必要です。

④ イソプロピルアンチピリン

概要

解熱および鎮痛の作用は比較的強いですが、抗炎症作用は弱いため、他の解熱鎮痛成分と組み合わせて配合されます。

ピリン系解熱鎮痛成分

イソプロピルアンチピリンは、ピリン系と呼ばれる解熱鎮痛成分です。

1960年代半ばまでは、イソプロピルアンチピリン以外のピリン系解熱鎮痛成分も、一般用医薬品のかぜ薬や解熱鎮痛薬に配合されていましたが、ショック等の重篤な副作用が頻発したため用いられなくなり、現在では、イソプロピルアンチピリンが一般用医薬品で唯一のピリン系解熱鎮痛成分となっています。

なお、医療用医薬品においては、現在でもイソプロピルアンチピリン以外のピリン系解熱鎮痛成分を有効成分とするものがあります。

ピリン系解熱鎮痛成分によって**薬疹(ピリン疹と呼ばれる。)**等のアレルギー症状を起こしたことがある人は使用しないこととされています。

【非ピリン系と薬疹】
① 非ピリン系の解熱鎮痛成分
ピリン系に対して他の解熱鎮痛成分を「非ピリン系」と呼ぶことがあります。アスピリンやサザピリンは、成分名が「〜ピリン」であっても非ピリン系の解熱鎮痛成分ですが、一般の生活者では誤ってピリン系として認識していることも多いとされています。

② 非ピリン系による薬疹
イソプロピルアンチピリン以外の解熱鎮痛成分でも薬疹等のアレルギー症状が生じることはあります。一般の生活者では、「非ピリン系解熱鎮痛成分では薬疹のおそれがない」等と誤って認識している場合があります。

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