解熱鎮痛2
解熱鎮痛に用いられる生薬成分等
生薬成分が解熱または鎮痛をもたらす仕組みは、化学的に合成された成分(プロスタグランジンの産生を抑える作用)と異なるものと考えられており、アスピリン等の解熱鎮痛成分の使用を避けなければならない場合にも使用できます。
生薬成分の種類と概要
| 生薬名 | 基原 | 作用 |
|---|---|---|
| ジリュウ | フトミミズ科の Pheretima aspergillum Perrier またはその近縁動物の内部を除いたものを基原とする生薬である。 | 古くから「熱さまし」として用いられている。ジリュウのエキスを製剤化した製品は、「感冒時の解熱」が効能・効果となっている。 |
| シャクヤク | ボタン科のシャクヤクの根を基原とする生薬である。 | 鎮痛鎮痙作用、鎮静作用を示し、内臓の痛みにも用いられる。同様な作用を期待して、ボタンピ(ボタン科のボタンの根皮を基原とする生薬)が配合されている場合もある。 |
| ボウイ | ツヅラフジ科のオオツヅラフジの蔓性の茎および根茎を、通例、横切したものを基原とする生薬である。 | 鎮痛、尿量増加(利尿)等の作用を期待して用いられる。日本薬局方収載のボウイは、煎薬として筋肉痛、神経痛、関節痛に用いられる。 |
その他、抗炎症作用を示す生薬としてカンゾウが、発汗を促し関節痛や肩こり痛等の改善を促す作用を期待してコンドロイチン硫酸ナトリウムが、他の解熱鎮痛成分と組み合わせて配合されている場合があります。
2. 鎮静成分
解熱鎮痛成分の鎮痛作用を助ける目的で、ブロモバレリル尿素、アリルイソプロピルアセチル尿素のような鎮静成分が配合されている場合があります。
いずれも依存性があることに留意する必要があります。
また、鎮静作用がある生薬成分として、カノコソウ等が配合されている場合もあります。
3. 制酸成分
制酸成分は、胃酸を中和する成分です。
解熱鎮痛成分(生薬成分を除く。)による胃腸障害の軽減を目的として、ケイ酸アルミニウム、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムゲル、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等の制酸成分が配合されている場合があります。
この場合、胃腸薬のように、胃腸症状に対する薬効を標榜することは認められていません。
4. 骨格筋の緊張を鎮める成分
メトカルバモールには骨格筋の緊張をもたらす脊髄反射を抑制する作用があり、いわゆる「筋肉のこり」を和らげることを目的として、骨格筋の異常緊張、痙攣・疼痛を伴う腰痛、肩こり、筋肉痛、関節痛、神経痛、打撲、捻挫等に用いられます。
鎮静作用があり、副作用として眠気、めまい、ふらつきが現れることがあるため、服用後は乗物または機械類の運転操作はしないこととされています。
また、鎮静成分が配合された他の医薬品の併用についても避ける必要があります。
このほか、消化器系の副作用として、悪心(吐きけ)・嘔吐、食欲不振、胃部不快感が現れることがあります。
5. カフェイン類
解熱鎮痛成分の鎮痛作用を増強する効果を期待して、また、中枢神経系を刺激して頭をすっきりさせたり、疲労感・倦怠感を和らげることなどを目的として、カフェイン、無水カフェイン、安息香酸ナトリウムカフェイン等が配合されている場合があります。
なお、カフェイン類が配合されていても、必ずしも鎮静成分の作用による眠気が解消されるわけではありません。
6. ビタミン成分
発熱等によって消耗されやすいビタミンの補給を目的として、以下の成分が配合されている場合があります。
| ビタミン | 主な成分名 |
|---|---|
| ビタミンB1 | チアミン塩化物塩酸塩、チアミン硝化物、ジベンゾイルチアミン、チアミンジスルフィド、ビスベンチアミン、フルスチアミン塩酸塩等 |
| ビタミンB2 | リボフラビン、リボフラビンリン酸エステルナトリウム等 |
| ビタミンC | アスコルビン酸、アスコルビン酸カルシウム等 |
7. 漢方処方製剤
鎮痛の目的で用いられる漢方処方製剤としては、芍薬甘草湯、桂枝加朮附湯、桂枝加苓朮附湯、薏苡仁湯、麻杏薏甘湯、疎経活血湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯、呉茱萸湯、釣藤散等があります。
これらの漢方処方製剤のうち呉茱萸湯以外は、いずれも構成生薬としてカンゾウを含みます。
また、芍薬甘草湯以外は、比較的長期間(1ヶ月位)服用されることがあります。
漢方処方製剤の種類と概要
芍薬甘草湯
- 体力にかかわらず使用でき、筋肉の急激な痙攣を伴う痛みのあるもののこむらがえり、筋肉の痙攣、腹痛、腰痛に適すとされる。
- 症状があるときのみの服用にとどめ、連用は避ける。
- まれに重篤な副作用として、肝機能障害のほか、間質性肺炎、うっ血性心不全や心室頻拍を生じることが知られており、心臓病の診断を受けた人では使用を避ける。
- 構成生薬としてカンゾウを含む。
桂枝加朮附湯
- 体力虚弱で、汗が出、手足が冷えてこわばり、ときに尿量が少ないものの関節痛、神経痛に適すとされる。
- 動悸、のぼせ、ほてり等の副作用が現れやすい等の理由で、のぼせが強く赤ら顔で体力が充実している人には不向きとされる。
- 構成生薬としてカンゾウを含む。
桂枝加苓朮附湯
- 体力虚弱で、手足が冷えてこわばり、尿量が少なく、ときに動悸、めまい、筋肉のぴくつきがあるものの関節痛、神経痛に適すとされる。
- 動悸、のぼせ、ほてり等の副作用が現れやすい等の理由で、のぼせが強く赤ら顔で体力が充実している人には不向きとされる。
- 構成生薬としてカンゾウを含む。
薏苡仁湯
- 体力中等度で、関節や筋肉の腫れや痛みがあるものの関節痛、筋肉痛、神経痛に適すとされる。
- 悪心・嘔吐、胃部不快感等の副作用が現れやすい等の理由で、体の虚弱な人(体力の衰えている人、体の弱い人)、胃腸の弱い人、発汗傾向の著しい人には不向きとされる。
- 構成生薬としてカンゾウ、マオウを含む。
麻杏薏甘湯
- 体力中等度なものの関節痛、神経痛、筋肉痛、いぼ、手足のあれ(手足の湿疹・皮膚炎)に適すとされる。
- 悪心・嘔吐、胃部不快感等の副作用が現れやすい等の理由で、体の虚弱な人(体力の衰えている人、体の弱い人)、胃腸の弱い人、発汗傾向の著しい人には不向きとされる。
- 構成生薬としてカンゾウ、マオウを含む。
疎経活血湯
- 体力中等度で、痛みがあり、ときにしびれがあるものの関節痛、神経痛、腰痛、筋肉痛に適すとされる。
- 消化器系の副作用(食欲不振、胃部不快感等)が現れやすい等の理由で、胃腸が弱く下痢しやすい人には不向きとされる。
- 構成生薬としてカンゾウを含む。
当帰四逆加呉茱萸生姜湯
- 体力中等度以下で、手足の冷えを感じ、下肢の冷えが強く、下肢または下腹部が痛くなりやすいものの冷え症、しもやけ、頭痛、下腹部痛、腰痛、下痢、月経痛に適すとされる。
- 胃腸の弱い人には不向きとされる。
- 構成生薬としてカンゾウを含む。
釣藤散
- 体力中等度で、慢性に経過する頭痛、めまい、肩こりなどがあるものの慢性頭痛、神経症、高血圧の傾向のあるものに適すとされる。
- 消化器系の副作用(食欲不振、胃部不快感等)が現れやすい等の理由で、胃腸虚弱で冷え症の人には、不向きとされる。
- 構成生薬としてカンゾウを含む。
呉茱萸湯
- 体力中等度以下で、手足が冷えて肩がこり、ときにみぞおちが膨満するものの頭痛、頭痛に伴う吐きけ・嘔吐、しゃっくりに適すとされる。
8. 相互作用
① 概要
一般用医薬品の解熱鎮痛薬は、複数の有効成分が配合されている製品が多く、他の解熱鎮痛薬やかぜ薬、鎮静薬、外用消炎鎮痛薬(一般用医薬品に限らない。)等が併用されると、同じ成分または同種の作用を持つ成分が重複して、効き目が強く現れすぎたり、副作用が起こりやすくなったりするおそれがあります。
一般の生活者においては、「痛み止めと熱さましは影響し合わない」と誤って認識している場合もあり、医薬品の販売等に従事する専門家は、適宜注意を促すことが重要です。
② アルコールとの相互作用
解熱鎮痛成分と酒類(アルコール)との相互作用については、アルコールの作用による胃粘膜の荒れがアスピリン、アセトアミノフェン、イブプロフェン、イソプロピルアンチピリン等による胃腸障害を増強するという事実が報告されています。
また、アルコールにより、アセトアミノフェンによる肝機能障害も起こりやすくなります。
9. 受診勧奨等
解熱鎮痛薬の使用は、発熱や痛みを一時的に抑える対症療法であって、疾病の原因を根本的に解消するものではありません。
以下のような場合は、一般用医薬品によって自己治療を図るのでなく、医療機関を受診するなどの対応が必要です。医薬品の販売等に従事する専門家においては、家族や周囲の人の理解や協力も含め、医薬品の適正使用、安全使用の観点から配慮することが重要です。
① 発熱
発熱している患者で、激しい腹痛や下痢などの消化器症状、息苦しいなどの呼吸器症状、排尿時の不快感等の泌尿器症状、または発疹や痒みなどの皮膚症状等を伴っている場合や、発熱が1週間以上続いているような場合には、単なるかぜが原因ではなく、かぜ以外の感染症やその他の重大な病気が原因となっている可能性があります。自己判断で安易に熱を下げることは、かえって発熱の原因である病気の診断を困難にさせ、また病態を悪化させるおそれがあります。
なお、通常、体温が38℃以下であればひきつけや著しい体力消耗等のおそれはなく、平熱になるまで解熱鎮痛薬を用いる必要はありません。ただ、発汗に伴って体から水分や電解質が失われるので、吸収の良いスポーツドリンク等でそれらを補給することが重要です。
② 関節痛
関節痛については、歩くときや歩いた後に膝関節が痛む場合、関節が腫れて強い熱感があるという場合、または、起床したときに関節のこわばりがあるような場合は、関節リウマチ、痛風、変形性関節炎等の可能性が考えられます。
③ 月経痛(生理痛)
月経痛(生理痛)については、年月の経過に伴って次第に増悪していくような場合には、子宮内膜症(子宮内膜やそれに類似した組織が、子宮内膜層以外の骨盤内の組織・臓器で増殖する病気)等の可能性が考えられます。
④ 頭痛
頭痛については、頭痛が頻繁に出現して、24時間以上続く場合や、一般用医薬品を使用しても痛みを抑えられない場合は、自己治療で対処できる範囲を超えていると判断されます。
特に、頭痛の頻度と程度が次第に増してきて耐え難くなった場合や、これまで経験したことがないような突然の激しい頭痛、手足のしびれや意識障害などの精神神経系の異常を伴う頭痛が現れたときには、くも膜下出血等の生命に関わる重大な病気である可能性が疑われます。
なお、頭痛の発症とその程度には、頭痛が起こるのではないかという不安感も含め、心理的な影響も大きいとされています。
解熱鎮痛薬は、頭痛の症状が軽いうちに服用すると効果的です。
しかし、症状が現れないうちに予防的に使用することは適切でなく、解熱鎮痛薬の連用により頭痛が常態化することがあるので注意を要します。また、解熱鎮痛薬を使用したときは症状が治まるものの、しばらくすると頭痛が再発し、解熱鎮痛薬が常時手放せないような場合には、薬物依存が形成されている可能性もあります。