乗り物酔い防止薬

2026年8月3日

鎮暈薬

めまい(眩暈)は、体の平衡を感知して、保持する機能(平衡機能)に異常が生じて起こる症状で、内耳にある平衡器官の障害や、中枢神経系の障害など、様々な要因により引き起こされます。

鎮暈薬(乗物酔い防止薬)は、乗物酔い(動揺病)によるめまい、吐きけ、頭痛を防止し、緩和することを目的とする医薬品です。


1. 配合成分

鎮暈薬(乗物酔い防止薬)に配合される抗めまい成分、抗ヒスタミン成分、抗コリン成分および鎮静成分には、いずれも眠気を促す作用があります。

抗コリン成分では、眠気を促すほかに、散瞳による目のかすみや異常なまぶしさを引き起こすことがあるため、乗物の運転操作をするときは、乗物酔い防止薬の使用を控える必要があります。

なお、乗物酔い防止薬には、主として吐きけを抑えることを目的とした成分も配合されますが、つわりに伴う吐きけへの対処として使用することは適当ではありません

※散瞳とは、瞳孔(黒目の部分)が大きくなった状態のことです。


2. 抗めまい成分(ジフェニドール塩酸塩)

① 作用

ジフェニドール塩酸塩は、内耳にある前庭と脳を結ぶ神経(前庭神経)の調節作用のほか、内耳への血流を改善する作用を示します。

抗ヒスタミン成分と共通する類似の薬理作用を示し、海外では制吐薬やめまいの治療薬として使われてきました。日本では、専ら抗めまい成分として用いられています。

② 留意事項

副作用として、抗ヒスタミン成分や抗コリン成分と同様、頭痛、排尿困難、眠気、散瞳による異常なまぶしさ、口渇のほか、浮動感や不安定感が現れることがあります。

排尿困難の症状がある人緑内障の診断を受けた人では、その症状を悪化させるおそれがあり、使用する前にその適否につき、治療を行っている医師または処方薬の調剤を行った薬剤師に相談がなされることが望ましいとされています。


3. 抗ヒスタミン成分

① 作用

抗ヒスタミン成分は、延髄にある嘔吐中枢への刺激内耳の前庭における自律神経反射を抑える作用を示します。

また、抗ヒスタミン成分は抗コリン作用を示すものが多いですが、抗コリン作用も乗物酔いによるめまい、吐きけ等の防止・緩和に寄与すると考えられています。

ジメンヒドリナートは、ジフェンヒドラミンテオクル酸塩の一般名で、専ら乗物酔い防止薬に配合される抗ヒスタミン成分です。

メクリジン塩酸塩は、他の抗ヒスタミン成分と比べて作用が現れるのが遅く、持続時間が長く、これも専ら乗物酔い防止薬に配合されています。

このほか、乗物酔い防止薬に配合される抗ヒスタミン成分として、クロルフェニラミンマレイン酸塩、ジフェンヒドラミンサリチル酸塩等があります。

② 留意事項

プロメタジン塩酸塩等のプロメタジンを含む成分については、外国において、乳児突然死症候群乳児睡眠時無呼吸発作のような致命的な呼吸抑制を生じたとの報告があるため、15歳未満の小児では使用を避ける必要があります。


4. 抗コリン成分

抗コリン作用を有する成分は、中枢に作用して自律神経系の混乱を軽減させるとともに、末梢では消化管の緊張を低下させる作用を示します。

スコポラミン臭化水素酸塩水和物は、乗物酔い防止に古くから用いられている抗コリン成分で、消化管からよく吸収され、他の抗コリン成分と比べて脳内に移行しやすいとされます。しかし、肝臓で速やかに代謝されてしまうため、抗ヒスタミン成分等と比べて作用の持続時間は短くなります。

なお、スコポラミンを含む成分としてロートエキス(ロートコンの抽出物)が配合されている場合もあります。

生薬成分の概要

生薬名基原
ロートコンナス科のハシリドコロ、Scopolia carniolica Jacquin または Scopolia parviflora Nakai の根茎および根を基原とする生薬である。

5. 鎮静成分

乗物酔いの発現には不安や緊張などの心理的な要因による影響も大きく、それらを和らげることを目的として、ブロモバレリル尿素、アリルイソプロピルアセチル尿素のような鎮静成分が配合されている場合があります。


6. その他の配合成分

① キサンチン系成分

キサンチン系成分は、中枢神経系を興奮させる成分です。

作用

脳に軽い興奮を起こさせて平衡感覚の混乱によるめまいを軽減させることを目的として、カフェイン(無水カフェイン、クエン酸カフェイン等)やジプロフィリンなどのキサンチン系成分が配合されている場合があります。

カフェインには、乗物酔いに伴う頭痛を和らげる作用も期待されます。

留意事項

カフェインが配合されているからといって、抗めまい成分、抗ヒスタミン成分、抗コリン成分または鎮静成分の作用による眠気が解消されるわけではありません

② 局所麻酔成分

胃粘膜への麻酔作用によって嘔吐刺激を和らげ、乗物酔いに伴う吐きけを抑えることを目的として、アミノ安息香酸エチルのような局所麻酔成分が配合されている場合があります。

アミノ安息香酸エチルが配合されている場合には、6歳未満への使用は避ける必要があります。

③ ビタミン成分

吐きけの防止に働くことを期待して、ピリドキシン塩酸塩、ニコチン酸アミド、リボフラビン等のビタミン成分が補助的に配合されている場合があります。


7. 相互作用、受診勧奨等

① 相互作用

抗ヒスタミン成分、抗コリン成分、鎮静成分、カフェイン類等の配合成分が重複して、鎮静作用や副作用が強く現れるおそれがあるので、**かぜ薬、解熱鎮痛薬、催眠鎮静薬、鎮咳去痰薬、胃腸鎮痛鎮痙薬、アレルギー用薬(鼻炎用内服薬を含む。)**等との併用は避ける必要があります。

② 受診勧奨等

3歳未満では、乗物酔いが起こることはほとんどないとされています。

乗物酔い防止薬に3歳未満の乳幼児向けの製品はなく、また乳幼児が乗物で移動中に機嫌が悪くなるような場合には、気圧変化による耳の痛みなどの他の要因が考慮されるべきであり、乗物酔い防止薬を安易に使用することのないよう注意する必要があります。

乗物酔いに伴う一時的な症状としてではなく、日常においてめまいが度々生じる場合には、基本的に医療機関を受診するなどの対応が必要です。

その場合、動悸や立ちくらみ、低血圧などによるふらつきは、平衡機能の障害によるめまいとは区別される必要があります。高齢者では、平衡機能の衰えによってめまいを起こしやすく、**聴覚障害(難聴、耳鳴り等)**に伴って現れることも多くあります。

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