医薬品の効き目や安全性に影響を与える要因4
妊婦または妊娠していると思われる女性
1. 妊婦の特徴
妊婦は、体の変調や不調を起こしやすいため、一般用医薬品を使用することにより、症状の緩和等を図ろうとする場合もあります。
その際には妊婦の状態を通じて胎児に影響を及ぼすことがないよう配慮する必要があり、そもそも一般用医薬品による対処が適当かどうかを含めて慎重に考慮されるべきです。
したがって、妊婦または妊娠していると思われる女性が医薬品を使用する場合においては、保健衛生上のリスク等に関して、成人と別に考える必要があります。
2. 妊婦が注意すべき医薬品
① 胎児への移行性が未解明なもの
胎児は、誕生するまでの間は、母体との間に存在する胎盤を通じて栄養分を受け取っています。
胎盤には、胎児の血液と母体の血液とが混ざらない仕組み(血液-胎盤関門)があります。母体が医薬品を使用した場合に、血液-胎盤関門によって、どの程度医薬品の成分の胎児への移行が防御されるかは、未解明のことも多いです。
一般用医薬品においても、多くの場合、妊婦が使用した場合における安全性に関する評価が困難であるため、妊婦の使用については「相談すること」としているものが多くあります。
② 先天異常や流産・早産の原因となるもの
ビタミンA含有製剤のように、妊娠前後の一定期間に通常の用量を超えて摂取すると胎児に先天異常を起こす危険性が高まるとされているものや、便秘薬のように、配合成分やその用量によっては流産や早産を誘発するおそれがあるものがあります。
3. 医薬品の販売等に従事する専門家の対応
前記2に該当する医薬品については、十分注意して適正に使用するか、または使用そのものを避ける必要があり、その販売等に際しては、購入者等から状況を聞いて、想定される使用者の把握に努めるなど、積極的な情報収集と、それに基づく情報提供がなされることが重要です。
なお、妊娠の有無やその可能性については、購入者等にとって他人に知られたくない場合もあることから、一般用医薬品の販売等において専門家が情報提供や相談対応を行う際には、十分に配慮することが必要となります。
母乳を与える女性(授乳婦)
1. 授乳婦の特徴
医薬品の種類によっては、授乳婦が使用した医薬品の成分の一部が乳汁中に移行することが知られており、母乳を介して乳児が医薬品の成分を摂取することになる場合があります。
したがって、授乳婦が医薬品を使用する場合においては、保健衛生上のリスク等に関して、成人と別に考える必要があります。
2. 医薬品の販売に従事する専門家の対応
乳幼児に好ましくない影響が及ぶことが知られている医薬品については、授乳期間中の使用を避けるか、使用後しばらくの間は授乳を避けることができるよう、医薬品の販売等に従事する専門家から購入者等に対して、積極的な情報提供がなされる必要があります。
吸収された医薬品の一部が乳汁中に移行することが知られていても、通常の使用の範囲では具体的な悪影響は判明していないものもあり、購入者等から相談があったときには、乳汁に移行する成分やその作用等について適切な説明がなされる必要があります。
医療機関で治療を受けている人等
1. 医療機関で治療を受けている人等の特徴
近年、生活習慣病等の慢性疾患を持ちながら日常生活を送る生活者が多くなっています。
疾患の種類や程度によっては、一般用医薬品を使用することでその症状が悪化したり、治療が妨げられることもあります。
したがって、医療機関で治療を受けている人等が医薬品を使用する場合においては、保健衛生上のリスク等に関して特段の注意が必要になります。
2. 医療機関で治療を受けている人
購入しようとする医薬品を使用することが想定される人が医療機関で治療を受けている場合には、疾患の程度やその医薬品の種類等に応じて、問題を生じるおそれがあれば使用を避けることができるよう情報提供がなされることが重要で、必要に応じ、いわゆるお薬手帳を活用する必要があります。
医療機関・薬局で交付された薬剤を使用している人については、登録販売者において一般用医薬品との併用の可否を判断することは困難なことが多く、その薬剤を処方した医師もしくは歯科医師または調剤を行った薬剤師に相談するよう説明する必要があります。
3. 過去に医療機関で治療を受けていた人
過去に医療機関で治療を受けていた(今は治療を受けていない)という場合には、**どのような疾患について、いつ頃かかっていたのか(いつ頃治癒したのか)**を踏まえ、購入者等が使用の可否を適切に判断することができるよう情報提供がなされることが重要です。
また、医療機関で治療を受ける際には、使用している一般用医薬品の情報を医療機関の医師や薬局の薬剤師等に伝えるよう購入者等に説明することも重要になります。
4. 特定の症状がある人
医療機関での治療は特に受けていない場合であっても、医薬品の種類や配合成分等によっては、特定の症状がある人が使用するとその症状を悪化させるおそれがある等、注意が必要なものがあります。
プラセボ効果
1. プラセボ効果の意味
医薬品を使用したとき、結果的または偶発的に薬理作用によらない作用を生じることを**プラセボ効果(偽薬効果)**といいます。
プラセボ効果は、医薬品を使用したこと自体による楽観的な結果への期待(暗示効果)や、条件付けによる生体反応、時間経過による自然発生的な変化(自然緩解など)等が関与して生じると考えられています。
2. プラセボ効果によってもたらされる反応・変化
医薬品を使用したときにもたらされる反応や変化には、薬理作用によるもののほか、プラセボ効果によるものも含まれています。プラセボ効果によってもたらされる反応や変化にも、**望ましいもの(効果)と不都合なもの(副作用)**とがあります。
プラセボ効果は、主観的な変化だけでなく、客観的に測定可能な変化として現れることもありますが、不確実であり、それを目的として医薬品が使用されるべきではありません。
購入者等が、適切な医薬品の選択、医療機関の受診機会を失うことのないよう、正確な情報が適切に伝えられることが重要です。
医薬品の品質
医薬品は、高い水準で均一な品質が保証されていなければなりませんが、配合されている成分(有効成分および添加物成分)には、**高温や多湿、光(紫外線)**等によって品質の劣化(変質・変敗)を起こしやすいものが多く、適切な保管・陳列がなされなければ、医薬品の効き目が低下したり、人体に好ましくない作用をもたらす物質を生じることがあります。
なお、添加物成分とは、有効成分の製剤化に際して、その安定性、安全性または均質性を保持する目的、また、その製剤の特徴に応じて有効成分の溶解促進、放出制御等の目的で添加される物質をいいます。
医薬品の保管・陳列場所
医薬品が保管・陳列される場所については、清潔性が保たれるとともに、その品質が十分保持される環境となるよう(高温、多湿、直射日光等の下に置かれることのないよう)留意される必要があります。
医薬品の使用期限
医薬品は、適切な保管・陳列がなされたとしても、経時変化による品質の劣化は避けられません。
一般用医薬品では、薬局または店舗販売業において購入された後、すぐに使用されるとは限らず、家庭における常備薬として購入されることも多いことから、外箱等に記載されている使用期限から十分な余裕をもって販売等がなされることも重要です。
なお、表示されている「使用期限」は、未開封状態で保管された場合に品質が保持される期限であり、液剤などでは、いったん開封されると記載されている期日まで品質が保証されない場合があります。
【液剤】
液剤とは、液状の剤形のことで、内服用のものを「経口液剤」(内服液剤、内用液剤)といいます。