医薬品の本質

2026年8月27日

1. 医薬品

(1) 人体に対して使用される医薬品

医薬品は、多くの場合、人体に取り込まれて作用し、効果を発現させるものです。 しかし、本来、医薬品も人体にとっては異物(外来物)であるため、また、医薬品が人体に及ぼす作用は複雑かつ多岐に渡り、そのすべては解明されていないため、必ずしも期待される有益な効果(薬効)のみをもたらすとは限らず、好ましくない反応(副作用)を生じる場合もあります。

(2) 人体に対して使用されない医薬品

人体に対して使用されない医薬品(例:殺虫剤、検査薬)であっても、人の健康に影響を与えるものといえます。

  • 殺虫剤の中には誤って人体がそれに曝されれば、健康を害するおそれがあるものもあります。
  • また、検査薬は、検査結果について正しい解釈や判断がなされなければ、医療機関を受診して適切な治療を受ける機会を失うおそれがあります。

2. 医薬品の適正使用

医薬品は、人の疾病の診断、治療もしくは予防に使用されること、または人の身体の構造や機能に影響を及ぼすことを目的とする生命関連製品であり、その有用性が認められたものですが、使用には、このような保健衛生上のリスクを伴うものであることに注意が必要です。

このことは、医療用医薬品と比較すればリスクは相対的に低いと考えられる一般用医薬品であっても同様であり、科学的な根拠に基づく適切な理解や判断によって適正な使用が図られる必要があります。

【医療用医薬品と一般用医薬品】

① 医療用医薬品 医師もしくは歯科医師によって使用され、またはこれらの者の処方箋もしくは指示によって使用されることを目的として供給される医薬品のことです。つまり、医師または歯科医師の判断の下に使用される医薬品といえます。

② 一般用医薬品 その効能および効果において人体に対する作用が著しくないものであって、薬剤師その他の医薬関係者から提供された情報に基づく需要者の選択により使用されることが目的とされている医薬品(要指導医薬品を除く。)のことです。つまり、薬剤師や登録販売者からの情報支援を受けつつ、一般の生活者の判断の下に使用される医薬品といえます。


3. 医薬品の果たす役割──安全第一

医薬品は、効能効果、用法用量、副作用等の必要な情報が適切に伝達されることを通じて、購入者等が適切に使用することにより、初めてその役割を十分に発揮するものであり、そうした情報を伴わなければ、単なる薬物(有効成分を含有する化学物質)に過ぎません。

このため、一般用医薬品には、製品に添付されている文書(添付文書)や製品表示に必要な情報が記載されています。

【添付文書と製品表示】

① 添付文書 一般用医薬品等の外箱等の中に添付されている紙媒体の文書のことです。用法、用量その他使用および取扱い上の必要な注意等が記載されています。

② 製品表示 医薬品の外箱等に記載されている事項のことです。毒薬または劇薬に関する表示、要指導医薬品に関する表示、一般用医薬品のリスク区分の識別表示、保管に関する事項等が記載されています。


4. 一般用医薬品の情報提供

一般用医薬品は、一般の生活者が自ら選択し、使用するものです。 一般の生活者においては、添付文書や製品表示に記載された内容を見ただけでは、効能効果や副作用等について誤解や認識不足を生じることもあります。

購入者等が、一般用医薬品を適切に選択し、適正に使用するためには、その販売に専門家(薬剤師、登録販売者)が関与し、専門用語を分かりやすい表現で伝えるなどの適切な情報提供を行い、また、購入者等が知りたい情報を十分に得ることができるように、相談に対応することが不可欠です。


5. 市販後の安全対策

医薬品は、市販後にも、医学・薬学等の新たな知見、使用成績等に基づき、その有効性、安全性等の確認が行われる仕組みになっています。

それらの結果を踏まえて、リスク区分の見直し、承認基準の見直し等がなされた場合や、販売時の取扱い、製品の成分分量、効能効果、用法用量、使用上の注意等が変更となった場合には、それが添付文書や製品表示の記載に反映されることになります。

医薬品は、このような知見の積み重ねや使用成績の結果等によって有効性、安全性等に関する情報が集積されており、随時新たな情報が付加されるものです。一般用医薬品の販売等に従事する専門家においては、これらに円滑に対応できるよう常に新しい情報の把握に努める必要があります。


6. 医薬品の回収等

医薬品は、人の生命や健康に密接に関連するものであるため、高い水準で均一な品質が保証されていなければなりません。

医薬品医療機器等法では、健康被害の発生の可能性の有無にかかわらず、異物等の混入、変質等がある医薬品を販売等してはならない旨を定めており、医薬品の販売等を行う者においても、そのようなことがないよう注意する必要があります。

製造販売業者による製品回収等の措置がなされることもありますので、製造販売業者等からの情報に日頃から留意しておくことが重要です。

【医薬品医療機器等法】

医薬品医療機器等法は、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」の略称。その他、「医薬品医療機器法」「薬機法」等とも略されます。


7. 一般用医薬品とPL法

製造物責任法(PL法)は、製造物の欠陥により、人の生命、身体、財産に係る被害が生じた場合における製造業者等の損害賠償の責任について定めた法律です。

販売した一般用医薬品に明らかな欠陥があった場合などは、PL法の対象となり得ることを理解しておく必要があります。


8. 医薬品の有効性・安全性

(1) 医薬品のリスク評価の基礎知識

医薬品の使用方法を誤ると健康被害が生じることがあり、こうした健康被害が起こる可能性を評価することを、医薬品のリスク評価といいます。

① 用量反応関係 医薬品の効果とリスクは、用量と作用強度の関係(用量反応関係)に基づいて評価されます。 薬物の投与量と効果または毒性の関係は、薬物用量の増加に伴い、次のように変化します。

無作用量(効果の発現が検出されない用量)→ 最小有効量 → 治療量 → 治療量上限 → 中毒量(効果よりも有害反応が強く発現する用量)→ 最小致死量 → 致死量

【ED50】 目的とする有効な作用が投与対象の50%に現れる薬物の用量をいう。

② 50%致死量 動物実験により求められる50%致死量(LD50)は、薬物の毒性の指標として用いられます。

(2) 市販前の医薬品のリスク評価

治療量を超えた量を単回投与した後に毒性が発現するおそれが高いことは当然ですが、少量の投与でも長期投与されれば慢性的な毒性が発現する場合もあります。また、少量の投与であっても、発がん作用、胎児毒性や組織・臓器の機能不全を生じる場合もあります。

このような考えから、新規に開発される医薬品のリスク評価は、医薬品開発の国際的な標準化(ハーモナイゼーション)制定の流れのなかで、非臨床試験と臨床試験が実施されています。

① 非臨床試験(動物実験) 個々の医薬品の用量反応関係に基づいて、医薬品の安全性に関する非臨床試験の基準であるGood Laboratory Practice(GLP)のほか、医薬品毒性試験法ガイドラインに沿って、以下のような毒性試験が厳格に実施されています。

  • 単回投与毒性試験
  • 反復投与毒性試験
  • 生殖発生毒性試験
  • 遺伝毒性試験
  • がん原性試験
  • 依存性試験
  • 抗原性試験
  • 局所刺激性試験
  • 皮膚感作性試験

② 臨床試験(治験) 動物実験で医薬品の安全性が確認されると、ヒトを対象とした臨床試験が行われます。臨床試験の実施の基準として、国際的にGood Clinical Practice(GCP)が制定されており、これに準拠した手順で安全な治療量が設定されます。

(3) 市販後の医薬品のリスク評価

  • 医薬品の製造販売後の調査および試験の実施の基準として Good Post-marketing Study Practice(GPSP)
  • 医薬品の製造販売後安全管理の基準として Good Vigilance Practice(GVP)

が制定されています。

(4) 医薬品の安全性基準

(2)および(3)のように、医薬品については、食品などよりもはるかに厳しい安全性基準が要求されています。


9. 健康食品

「薬(医)食同源」という言葉があるように、古くから特定の食品摂取と健康増進の関連は関心を持たれてきました。特に近年では、食品やその成分についての健康増進効果の情報がメディア等を通して大量に発信され、消費者の関心も高まっています。

(1) 健康食品と保健機能食品

いわゆる健康食品は、健康増進や維持の助けになることが期待されますが、あくまで食品であり、医薬品とは法律上区別されます。しかしながら、健康食品の中でも国が示す要件を満たす保健機能食品は、一定の基準のもと健康増進の効果等を表示することが許されています。

分類内容
特定保健用食品身体の生理機能などに影響を与える保健機能成分を含む食品で、個別に(一部は規格基準に従って)特定の保健機能を示す有効性や安全性などに関する国の審査を受け、許可されたもの
栄養機能食品身体の健全な成長や発達、健康維持に必要な栄養成分(ビタミン、ミネラルなど)の補給を目的とした食品で、国が定めた規格基準に適合したものであれば、その栄養成分の健康機能を表示することができる
機能性表示食品事業者の責任で科学的根拠をもとに疾病に罹患(病気にかかること)していない者の健康維持および増進に役立つ機能を商品のパッケージに表示する食品として、国に届出されたもの。特定保健用食品とは異なり、国の個別の許可を受けたものではない

(2) 健康食品と医薬品

いわゆる健康食品は、その多くが摂取しやすいように医薬品に類似した形状(例:錠剤、カプセル)で販売されていますが、その誤った使用方法や個々の体質により健康被害を生じた例も報告されています。また、医薬品との相互作用で薬物治療の妨げになることもあります。

健康食品は、食品であるため、摂取しても安全で害がないかのようなイメージを強調したものもみられますが、法的にも、また安全性や効果を担保する科学的データの面でも医薬品とは異なるものです。

一般用医薬品の販売時にも健康食品の摂取の有無を確認することは重要で、購入者等の健康に関する意識を尊重しつつも、必要があればそれらの摂取についての指導も行うべきといえます。


10. セルフメディケーションへの積極的な貢献

セルフメディケーションとは、世界保健機関(WHO:World Health Organization)によれば、自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすることとされています。

急速に少子高齢化が進む中、持続可能な医療制度の構築に向け、医療費の増加やその国民負担の増大を解決し、健康寿命を伸ばすことが日本の大きな課題となっています。セルフメディケーションは、こうした課題を解決する重要な活動のひとつであり、地域住民の健康相談を受け、一般用医薬品を販売する業務や必要な時に医療機関の受診を勧める業務は、その推進に欠かせません。

(1) 登録販売者の役割

セルフメディケーションを的確に推進するためにも、一般用医薬品の販売等を行う登録販売者は、一般用医薬品等に関する正確で最新の知識を常に修得するよう心がけるとともに、地域医療を支える医療スタッフ(例:薬剤師、医師、看護師)あるいは行政などとも連携をとって、地域住民の健康維持・増進、生活の質(QOL)の改善・向上などに携わることが望まれます。

少子高齢化の進む社会では、地域包括ケアシステムなどに代表されるように、自分、家族、近隣住民、専門家、行政などすべての人たちで協力して個々の住民の健康を維持・増進していくことが求められます。

また、医薬品の販売等に従事する専門家は、地域包括ケアシステムの中でも重要な情報提供者であり、薬物療法の指導者となることを常に意識して活動することが求められています。

(2) セルフメディケーション税制

一般用医薬品は、カウンター越しに(OTC:Over The Counter)販売等されることからOTC医薬品とも呼ばれます。スイッチOTC医薬品とは、OTC医薬品のうち、医師等の診断、処方箋に基づき使用されていた医療用医薬品を、薬局や店舗販売業などで購入できるように転用(スイッチ)したものをいいます。

平成29年1月より、適切な健康管理の下で医療用医薬品からの代替を進める観点から、条件を満たした場合にスイッチOTC医薬品の購入対価のうち、一定の金額をその年分の総所得金額等から控除するセルフメディケーション税制が導入されています。

その後の令和4年1月の見直しにより、スイッチOTC医薬品以外にも、腰痛や肩こり、かぜやアレルギーの諸症状に対応する一般用医薬品がセルフメディケーション税制の対象になっています。

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