適正な販売広告等
1. 医薬品の広告
一般用医薬品の販売広告に関しては、その内容や表現等が適切なものである必要があり、医薬品の販売等に従事する専門家にあっては、その広告活動に関しても、法令遵守はもとより、医薬品の販売広告に係るルールを十分理解し、その適正化に留意する必要があります。
医薬品の広告に該当するか否かについては、次のいずれの要件も満たす場合には、広告に該当するものと判断されています。
● 医薬品の広告の該当性の要件
- 顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昂進させる)意図が明確であること
- 特定の医薬品の商品名(販売名)が明らかにされていること
- 一般人が認知できる状態であること
2. 不適正な販売広告の禁止
医薬品については、誇大広告等や承認前の広告が禁止されています。
補足【医薬品の広告規制】 医薬品等の販売広告に関しては、医薬品医療機器等法による保健衛生上の観点からの規制のほか、不当な表示による顧客の誘引の防止等を図るため、「不当景品類及び不当表示防止法」や「特定商取引に関する法律」の規制もなされています。
(1) 誇大広告等の禁止
誇大広告等について、次のように規定されています(法第66条)。
- 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。
- 医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の効能、効果又は性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布することは、前項に該当する。
- 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品に関して堕胎を暗示し、又はわいせつにわたる文書又は図画を用いてはならない。
これらの規定に違反して広告を行った者については、**「2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」**こととされています。
(2) 承認前広告禁止
承認前の医薬品について、次のように規定されています(法第68条)。
何人も、第14条第1項、第23条の2の5第1項若しくは第23条の2の23第1項に規定する医薬品若しくは医療機器又は再生医療等製品であって、まだ第14条第1項、第19条の2第1項、第23条の2の5第1項、第23条の2の17第1項、第23条の25第1項若しくは第23条の37第1項の承認又は第23条の2の23第1項の認証を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。
このように、未承認の医薬品の名称、製造方法、効能、効果または性能に関する広告が禁止されています。
この規定に違反して広告を行った者については、**「2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」**こととされています。
(3) 広告規制の対象者
(1)および(2)の広告禁止は、広告等の依頼主だけでなく、その広告等に関与するすべての人が対象となります。
そのため、製薬企業等の依頼によりマスメディアを通じて行われる宣伝広告に関して、業界団体の自主基準のほか、広告媒体となるテレビ、ラジオ、新聞または雑誌の関係団体においても、それぞれ自主的な広告審査等が行われています。
一般用医薬品の販売広告としては、以下のようなものが含まれます。
- 製薬企業等の依頼によりマスメディアを通じて行われるもの
- 薬局、店舗販売業または配置販売業において販売促進のために用いられるチラシやダイレクトメール(電子メールを含む)
- POP広告等
(4) 違反広告に係る措置命令等
厚生労働大臣または都道府県知事(薬局または店舗販売業にあっては、その薬局または店舗の所在地が保健所設置市または特別区の区域にある場合においては、市長または区長)は、誇大広告等の禁止(法第66条第1項)または承認前広告の禁止(法第68条)に違反して広告等を行った者に対して、その行為の中止、再発防止等の措置命令を行うことができます。
(5) 課徴金制度
課徴金制度では、医薬品、医療機器等の名称、製造方法、効能、効果または性能に関する虚偽・誇大な広告を行った者に対して、厚生労働大臣が課徴金(広告違反を行っていた期間中における対象商品の売上額×4.5%)を納付させる命令を行うことになります。
3. 医薬品等適正広告基準
医薬品等適正広告基準は、医薬品の販売広告に係る法令遵守、また、生命関連製品である医薬品の本質にかんがみて、広告の適正化を図ることを目的として示されたものです。
この基準においては、購入者等に対して、医薬品について事実に反する認識を得させるおそれがある広告のほか、過度の消費や乱用を助長するおそれがある広告についても不適正なものとされています。
(1) 事実に反する認識を得させるおそれがある広告
一般用医薬品では、一般の生活者が医薬品を選択する際に販売広告が一つの判断要素となりますので、広告の方法や内容、表現において、医薬品の効能効果や安全性等について事実に反する認識を生じさせることのないよう、また、その医薬品が適正に使用されるよう、正確な情報の伝達が重要です。
一般の生活者が事実に反する認識を得るおそれがある広告には、次の①〜⑧のものがあります。
| 内容 | |
|---|---|
| ① | 医薬品の販売元の製薬企業等が取得している承認の範囲を超える内容が表現されている場合。特にその効能効果について、承認された内容に合致しない表現がなされている場合が多いとされています。 |
| ② | 漢方処方製剤等では、使用する人の体質等を限定した上で特定の症状等に対する改善を目的として、効能効果に一定の前提条件(いわゆる「しばり表現」)が付されていることが多いですが、そうしたしばり表現を省いて広告することは原則として認められていません。なお、漢方処方製剤の効能効果は、配合されている個々の生薬成分が相互に作用しているため、それらの構成生薬の作用を個別に挙げて説明することも不適当です。 |
| ③ | 一般用医薬品と同じ有効成分を含有する医療用医薬品の効能効果をそのまま標榜することは、承認されている内容を正確に反映した広告といえません。 |
| ④ | 一般用医薬品は、医療機関を受診するほどではない体調不良や疾病の初期段階において使用されるものが多く、医師による診断・治療によらなければ一般に治癒が期待できない疾患(例えば、がん、糖尿病、心臓病等)について自己治療が可能であるかのような広告表現は認められません。 |
| ⑤ | 医薬品の有効性または安全性について、それが確実であることを保証するような表現がなされた広告は、明示的・暗示的を問わず、虚偽または誇大な広告とみなされます。 |
| ⑥ | 使用前・使用後にかかわらず図画・写真等を掲げる際には、こうした効能効果等の保証表現となるものは認められません。 |
| ⑦ | 医薬品の効能効果または安全性について、最大級の表現またはこれに類する表現等を行うことは不適当とされています。 |
| ⑧ | チラシやパンフレット等の同一紙面に、医薬品と、食品、化粧品、雑貨類等の医薬品ではない製品を併せて掲載すること自体は問題ありませんが、医薬品でない製品について医薬品的な効能効果があるように見せかけ、一般の生活者に誤認を与えるおそれがある場合には、必要な承認等を受けていない医薬品の広告とみなされることがあり、その場合には法第68条の違反となります。 |
(2) 過度の消費や乱用を助長するおそれのある広告
医薬品は、何らかの保健衛生上のリスクを有し、人の生命や健康に影響を与える生命関連製品であるため、過度の消費や乱用が助長されることのないよう、また、生命関連製品としての信用や品位が損なわれることのないよう、その広告については節度ある適切な内容や表現が求められます。
一般の生活者に過度の消費や乱用を助長するおそれのある広告には、次の①〜④のものがあります。
| # | 内容 |
|---|---|
| ① | 販売広告に価格の表示や特定商品の名称と価格が特記表示されていることをもって直ちに不適当とみなされることはありませんが、例えば、商品名を連呼する音声広告や、生活者の不安を煽って購入を促す広告等、医薬品が不必要な人にまで使用を促したり、安易な使用を促すおそれがあるものについては、保健衛生上の観点から必要な監視指導が行われています。 |
| ② | 「天然成分を使用しているので副作用がない」「いくら飲んでも副作用がない」といった事実に反する広告表現は、過度の消費や乱用を助長するおそれがあるだけでなく、虚偽誇大な広告にも該当します。 |
| ③ | 医薬関係者、医療機関、公的機関、団体等が、公認、推薦、選用等している旨の広告については、一般の生活者の当該医薬品に対する認識に与える影響が大きいことにかんがみて、仮に事実であったとしても、原則として不適当とされています。ただし、市町村が行う衛生害虫類駆除事業に際して、特定の殺虫剤・殺そ剤の使用を住民に推薦することは問題ありません。 |
| ④ | チラシやパンフレット等において、医薬品について食品的または化粧品的な用法が強調されているような場合には、生活者に安易または過度な医薬品の使用を促すおそれがある不適正な広告とみなされることがあるため注意が必要です。 |
4. 適正な販売方法
薬局または医薬品の販売業において、一般用医薬品の販売等が法令を遵守して適正に行われるためには、販売広告のほか、その許可の種類に応じた許可行為の範囲、一般用医薬品のリスク区分およびリスク区分に応じた情報提供並びに法定表示事項等へ留意した販売方法について、注意することが重要です。
5. 不適正な販売方法
生活者に医薬品の過度の消費や乱用を助長するおそれがある販売方法については、販売広告と同様に、保健衛生上の観点から必要な監視指導が行われています。
(1) 景品類を提供して医薬品を販売すること
キャラクターグッズ等の景品類を提供して販売することに関しては、「不当景品類及び不当表示防止法」の限度内であれば認められています。
(2) 医薬品を懸賞や景品とすること
医薬品を懸賞や景品として授与することは、原則として認められていません。
(3) 医薬品の組み合わせ販売
購入者の利便性のため、異なる複数の医薬品または医薬品と他の物品を組み合わせて販売または授与する場合には、組み合わせた医薬品について、購入者等に対して情報提供を十分に行える程度の範囲内であって、かつ、組み合わせることに合理性が認められるものでなければなりません。
したがって、効能効果が重複する組合せや、相互作用等により保健衛生上の危害を生じるおそれのある組合せは不適当です。
なお、組み合わせた個々の医薬品等の外箱等に記載された法に基づく記載事項は、組み合わせ販売のため使用される容器の外から明瞭に見えるようになっている必要があります。
補足【医薬品の組み合わせ販売】
- ①医薬品と他の医薬品の組み合わせ:購入者の利便性を考慮して行われるものであり、販売側の都合による抱き合わせ、在庫処分等の目的で組み合わせを行うことは、厳に認められません。
- ②医薬品と他の物品の組み合わせ:体温計、救急絆創膏、ガーゼ、包帯、脱脂綿などのように、組み合わせる医薬品の用途に対して補助的な目的を果たす範囲においてのみ認められます。
(4) 医薬品の拠点販売
薬局および店舗販売業において、許可を受けた薬局または店舗以外の場所に医薬品を貯蔵または陳列し、そこを拠点として販売等に供するような場合は店舗による販売等に当たりません。
薬局開設者、店舗販売業者がこのようにした場合には、店舗による販売または授与以外の方法により医薬品を販売等したとして取締りの対象となります(法第37条第1項違反)。
(5) 医薬品の現金売り
配置販売業において、医薬品を先用後利によらず現金売りを行うことは配置による販売行為に当たりません。
配置販売業者がこのようにした場合には、配置以外の方法により医薬品を販売等したとして取締りの対象となります。
(6) 医薬品の無許可販売への便宜
購入者がその購入した医薬品を業として他者に提供することが推定される場合において、購入者の求めるままに医薬品を販売すると、医薬品の無許可販売に便宜を与えることにつながるおそれがあります。
医薬品の販売等に従事する専門家においては、例えば、「医薬品を多量に購入する者」等に対して積極的に事情を尋ねるなど慎重に対処し、状況によっては販売を差し控えるべきです。