副作用等による健康被害の救済

2026年8月28日

1. 医薬品の副作用等による健康被害の救済

サリドマイド事件、スモン事件等を踏まえ、1979年に薬事法が改正され、医薬品の市販後の安全対策の強化を図るため、次のような法整備がなされました。

  • 再審査・再評価制度の創設
  • 副作用等報告制度の整備
  • 保健衛生上の危害の発生または拡大を防止するための緊急命令、廃棄・回収命令に関する法整備 等

それらと併せて、医薬品副作用被害救済基金法(現「独立行政法人医薬品医療機器総合機構法」)による救済制度が創設されました。


2. 医薬品副作用被害救済制度

(1) 医薬品副作用被害救済制度の意義・目的

医薬品は、最新の医学・薬学の水準においても予見し得ない副作用が発生することがあり、また、副作用が起こり得ることが分かっていても、医療上の必要性から使用せざるを得ない場合もあります。

また、副作用による健康被害については、民法ではその賠償責任を追及することが難しく、たとえ追及することができても、多大な労力と時間を費やさなければなりません。

このため、医薬品(要指導医薬品および一般用医薬品を含む。)を適正に使用したにもかかわらず副作用による一定の健康被害が生じた場合に、医療費等の給付を行い、これにより被害者の迅速な救済を図ろうというのが、医薬品副作用被害救済制度です。

医薬品副作用被害救済制度は、製薬企業の社会的責任に基づく公的制度として1980年5月より運営が開始されました。


(2) 救済給付業務の費用・仕組み

健康被害を受けた本人(または家族)の給付請求を受けて、その健康被害が医薬品の副作用によるものかどうか、医薬品が適正に使用されたかどうかなど、医学的・薬学的判断を要する事項について薬事・食品衛生審議会の諮問・答申を経て、厚生労働大臣が判定した結果に基づいて、各種給付が行われます。

救済給付業務に必要な費用については、次のとおり賄われています。

費用の種類財源
給付費独立行政法人医薬品医療機器総合機構法第19条の規定に基づき、製造販売業者から年度ごとに納付される拠出金
事務費その2分の1相当額は国庫補助により賄われる

(3) 給付の種類

給付の種類としては、医療費、医療手当、障害年金、障害児養育年金、遺族年金、遺族一時金、葬祭料があります。

給付の種類によっては請求期限が定められており、その期限を過ぎた分については請求できないので注意が必要です。

●給付の種類と請求期限

給付の種類内容請求期限
医療費医薬品の副作用による疾病の治療に要した費用を実費補償するもの(健康保険等による給付の額を差し引いた自己負担分)医療費の支給の対象となる費用の支払いが行われたときから5年以内
医療手当医薬品の副作用による疾病の治療に伴う医療費以外の費用の負担に着目して給付されるもの(定額)請求に係る医療が行われた日の属する月の翌月の初日から5年以内
障害年金医薬品の副作用により一定程度の障害の状態にある18歳以上の人の生活補償等を目的として給付されるもの(定額)請求期限なし
障害児養育年金医薬品の副作用により一定程度の障害の状態にある18歳未満の人を養育する人に対して給付されるもの(定額)請求期限なし
遺族年金生計維持者が医薬品の副作用により死亡した場合に、その遺族の生活の立て直し等を目的として給付されるもの(定額、最高10年間を限度)下記参照
遺族一時金生計維持者以外の人が医薬品の副作用により死亡した場合に、その遺族に対する見舞等を目的として給付されるもの(定額)下記参照
葬祭料医薬品の副作用により死亡した人の葬祭を行うことに伴う出費に着目して給付されるもの(定額)下記参照

遺族年金・遺族一時金・葬祭料の請求期限

  • 死亡のときから5年以内
  • 死亡前に医療費、医療手当、障害年金または障害児養育年金の支給決定があった場合には、死亡のときから2年以内
  • 遺族年金を受けることができる先順位者が死亡した場合には、その死亡のときから2年以内

(4) 救済給付の支給対象

① 救済給付の対象

医薬品副作用被害救済制度は、医薬品を適正に使用したにもかかわらず、副作用によって一定程度以上の健康被害が生じた場合に、医療費等の諸給付を行うものです。

したがって、救済給付の対象となるには、添付文書や外箱等に記載されている用法・用量、使用上の注意に従って使用されていることが基本です。医薬品の不適正な使用による健康被害については、救済給付の対象となりません

② 救済給付の対象とされる健康被害の程度

救済給付の対象となる健康被害の程度としては、

  • 副作用による疾病のため、入院を必要とする程度の医療を受ける場合(必ずしも入院治療が行われた場合に限らず、入院治療が必要と認められる場合であって、やむをえず自宅療養を行った場合も含む)
  • 副作用による重い後遺障害(日常生活に著しい制限を受ける程度以上の障害)が残った場合

であり、医薬品を適正に使用して生じた健康被害であっても、特に医療機関での治療を要さずに寛解したような軽度のものについては給付対象に含まれません

③ 救済制度の対象とならない医薬品

救済制度の対象とならない医薬品が定められています。

要指導医薬品または一般用医薬品では、次のものが該当します。

  • 殺虫剤・殺鼠剤
  • 殺菌消毒剤(人体に直接使用するものを除く)
  • 一般用検査薬
  • 一部の日局収載医薬品(精製水、ワセリン等)

このほか、以下も救済制度の対象から除外されています。

  • 製品不良など、製薬企業に損害賠償責任がある場合
  • 無承認無許可医薬品(いわゆる健康食品として販売されたもの、個人輸入により入手された医薬品を含む)の使用による健康被害

(5) 救済給付の請求に当たって必要な書類

要指導医薬品または一般用医薬品の使用による副作用被害への救済給付の請求に当たっては、次のような書類が必要となります。

  • 医師の診断書
  • 要した医療費を証明する書類(受診証明書)
  • その医薬品を販売等した薬局開設者、医薬品の販売業者が作成した販売証明書

医薬品の販売等に従事する専門家においては、販売証明書の発行につき円滑な対応を図る必要があります。

なお、医薬品の副作用であるかどうか判断がつきかねる場合でも、給付請求を行うことは可能です。


(6) 生物由来製品感染等被害救済制度の創設

医薬品副作用被害救済制度に加え、2002年の薬事法改正に際して、2004年4月1日以降に生物由来製品を適正に使用したにもかかわらず、それを介して生じた感染等による疾病、障害または死亡について、医療費、障害年金、遺族年金等の給付を行うことなどにより、生物由来製品を介した感染等による健康被害の迅速な救済を図ることを目的とした「生物由来製品感染等被害救済制度」が創設されています。


(7) 独立行政法人医薬品医療機器総合機構のその他の業務

独立行政法人医薬品医療機器総合機構においては、

  • 関係製薬企業または国からの委託を受けて、裁判上の和解が成立したスモン患者に対して健康管理手当や介護費用の支払業務
  • (公財)友愛福祉財団からの委託を受けて、血液製剤によるHIV感染者・発症者に対する健康管理費用の支給等

を行っています。


3. 医薬品副作用被害救済制度等への案内

医薬品副作用被害救済制度による被害者の救済には、医薬関係者の理解と協力が不可欠です。

要指導医薬品または一般用医薬品の使用により副作用を生じた場合であって、その副作用による健康被害が救済給付の対象となると思われたときには、医薬品の販売等に従事する専門家においては、健康被害を受けた購入者等に対して救済制度があることや、救済事業を運営する総合機構の相談窓口等を紹介し、相談を促すなどの対応が期待され、そのためには、救済給付の範囲や給付の種類等に関する一定の知識が必要となります。


4. 医薬品PLセンター

(1) 医薬品PLセンター概要

医薬品副作用被害救済制度の対象とならないケースのうち、製品不良など、製薬企業に損害賠償責任がある場合には、「医薬品PLセンター」への相談が推奨されます。

沿革

  • 平成6年、PL法が国会において成立するに当たり、「裁判によらない迅速、公平な被害救済システムの有効性に鑑み、裁判外の紛争処理体制を充実強化すること」が衆参両院で附帯決議され、各業界に対して裁判によらない紛争処理機関の設立が求められた。
  • これを受けて、日本製薬団体連合会において、平成7年7月のPL法の施行と同時に医薬品PLセンターが開設された。

(2) 医薬品PLセンターの目的

消費者が、医薬品または医薬部外品に関する苦情(健康被害以外の損害も含む)について製造販売元の企業と交渉するに当たって、公平・中立な立場で申立ての相談を受け付け、交渉の仲介や調整・あっせんを行い、裁判によらずに迅速な解決に導くことを目的としています。

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